M.M 天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 7 9 85 20〜25 2020/3/14
作品ページ(R-18注意) ブランドページ(R-18注意)



<ギャルゲーの教科書の様な王道学園ラブコメに、懐かしさと共に安心感を覚えました。>

 この「天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-」という作品は、美少女ゲームブランドである「ゆずソフト」で制作されたビジュアルノベルです。もはや美少女ゲームブランドとして知らない人はいない地位を確立したゆずソフト、安定的に作品を発表しているのは勿論、何よりも延期などの措置がなく約束通りリリースするというある意味当たり前に思える事をしっかりと行っている姿勢が多くのファンを作っていると思っております。実は私、そんな時代の中心を突き進んでいるゆずソフトの作品を1つもプレイした事がありませんでした。ゆずソフトスタッフ作品の前身であるスタジオメビウスのSNOWはプレイしたのですが、ゆずソフトの作品はSNOWと比較してテイストが大きく変わっておりいわゆるギャルゲーでしたので何となく敬遠しておりました。それでも今の美少女ゲームをプレイしている世代の人はほぼ間違いなくゆずソフトに触れております。そうであるのなら私も何か一つはプレイしなければと思っておりました。

 そんな時に、お知り合いのエロゲーマーの方々と飲む機会が何度かありました。やはりゆずソフトは欠く事が出来ず、それぞれ思い出の作品がある様子でした。という訳で、ここは先人の意見を訊き何か一つゆずソフトの作品を選ぼうと思いました。実際のところ幾つかの作品が上がりこれという一本は決まらなかったのですが、その中で今回レビューしている「天神乱漫 -LUCKY or UNLUCKY!?-」を選びました。選んだ理由は、ゆずソフトの第4作品目という事で処女作から何作かリリースし安定期に入った時の作品である事です。ぶらばん! -The bonds of melody-、E×E、夏空カナタと制作してきたゆずソフトの再びの王道学園ラブコメという事で、エロゲの教科書を読む感覚でプレイし始めました。

 主人公である千歳春樹(ちとせはるき)は、水薙学園に通う2年生です。両親は仕事の都合で海外に住んでおり、家には妹である千歳佐奈(ちとせさな)と祖父の3人で生活しております。春樹には特別な体質がありました。それは不幸体質であるという事です。食事をすれば皿を割り、道路を歩けば車に水を掛けられ、街に出れば不良に絡まれ、何故か理由のない不幸な出来事に遭遇してしまうのです。元々そういう境遇でしたので特に気にしてはいなかったのですが、それが卯花之佐久夜姫(うのはなのさくやひめ)という神様がやってきた事で先祖代々の呪いである事が分かりました。姫が春樹の元に来たのは、神になる検定試験を受ける為です。そして検定試験に合格すれば、春樹の不幸体質も無くなるとの事。そんな神様の襲来からドタバタ学園生活が幕を開けるのです。

 プレイして直ぐに思ったのは、ギャルゲーってこういうのだったなという事です。主人公は基本的に鈍感であり、世の中のある程度の出来事を何なりと受け入れてしまいます。それなのに周りには女の子が沢山いて、何故か全員主人公を慕っているんですね。そして両親は海外に赴任と、確かにこんな感じだったなと懐かしく思いました。妹が居て、幼馴染が居て、悪友が居て、まさにギャルゲーの教科書的な作品だと思いました。その上て不幸体質と神との同居という程よい非日常要素も加わり、楽しい学園生活に色を添えてくれるシナリオも上手だと思いました。なる程、これは確かに安定感がありますね。最後まで安定してプレイする事が出来ました。

 当然ですが、システム周りは非常に整ってますね。同人ビジュアルノベルの様に既読スキップが無いとかバックログが無いとかそんな事は絶対にありません。その当たり前の事が整ってこそ企業だと思っております。少し驚いたのが、動きの演出が沢山あった事です。OPムービーがヌルヌル動く事だけではなく、道中でも要所要所で動きの演出を入れる事で場面を盛り上げてくれました。これが頻繁では無くて本当限られた場面にしかなかったのが良かったと思います。限られた場面にしかないからこそ、強く印象に残り加えてテキストを読む事を阻害しないと思いました。BGMもボーカルも程よく耳に残りますに、良く計算されているなと思いました。ちなみに個人的にエンディング曲のMUGEN∞MIRAIが大好きです。レビュー書き終わったらサントラ買います。

 プレイ時間は私で23時間30分でした。20時間なんて、商業のビジュアルノベルでは普通なのでしょうけど私にとっては久しぶりにたっぷりやったな〜という印象でした。メインヒロインが4人でサブヒロインを入れて、必然的にこれだけのボリュームになってしまいますね。長くても一日一人と決めて地道に進めて来ました。分岐はマップ選択がメインとなり、その他途中の選択肢によって比較的簡単に分岐させる事が出来ます。一度ルートに入ってしまえば、後はそのままエンディングまで真っ直ぐ読み進めていって下さい。メインシナリオはどれも不幸体質と神の力に関係しており、それなりに結論を考えさせてくれますので楽しかったです。その後サブヒロインを攻略して、マッタリと全てのCGを埋める事が出来ました。アラフォーになってもギャルゲーを十分に楽しめるなと、そんな事も思いました。なる程これがゆずソフトなんだなと、良く分かりました。素直に楽しかったです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<もしかしたら、ギャルゲーにとってシナリオ展開など大して意味は無いのかも知れませんね。>

 実際のところ、そこまでネタバレで話す事は無いかも知れませんね。佐奈が実は幽霊だったという事や、葵が恋愛感情を封じ込めていた事も、全て共通ルートで明かされておりました。割とそういった個人に突っ込んだ設定は個別ルートで明らかになるのかなと思っていたのですけど、それを共通ルートで明らかにしてそれでもなお十分なテキスト量は流石だと思いました。最も、その殆どは主人公春樹の行動が原因ですけどね。

 葵ルートをプレイしていて、ふと疑問に思いました。あれ?エロゲの主人公ってここまで鈍感だったっけ?って。誰がどう見ても相思相愛で、周りの環境も十分に整っているのにいつまでも前に行かない、そんな牛歩の様な春樹に違和感を覚えてしまいました。ですが、その中での学園のイベントは消化され時間は確実に過ぎていきました。日付の進み方も2人の距離感が変わらないのに随分と速く進むなと思ってしまいました。そして改めて認識しました。これがギャルゲーであり。ギャルゲーの主人公という物なんだなと。如何に日常の風景を描き続けるか、どれだけヒロインの可愛さを演出できるのか、そしてどれだけテキストを増す事が出来るのか、これが出来るのがプロであり商業作品でありギャルゲーなのかなと思いました。

 実際のところ、シリアスな展開はありましたがエンディングはハッピーエンドでした。そしてそれはある意味予測する事が出来ました。このパッケージでゆずソフトで、辛辣なエンディングはあり得ないと思っておりました。何故なら、これはギャルゲーだからです。ギャルゲーの魅力、それは第一にヒロインのパーソナリティにあると思っております。属性と置き換えても良いかも知れませんね。妹・幼馴染・神・先輩・先生といった表面的な部分と、恋愛が出来ない・過去にトラウマを抱えている・人に共感できないといった内面的な部分、それをシナリオを通して解明しそこに魅力を見出すのがギャルゲーです。そうであるのなら、主人公とヒロインの会話部分を水増しする事に十分意味はあるなと思いました。シナリオが展開する事は、もしかしたらギャルゲーでは必須では無いのかも知れません。

 それは最後の展開で良く表れておりました。春樹はヒロインと結ばれるために、自分の不幸体質を恨む事も無く体を張って誠心誠意行動しました。それでも、春樹の不幸体質は積年の呪いであり春樹が少しの時間の努力で何とかなる物ではありませんでした。では何故春樹の不幸体質は無くなりヒロインと結ばれたのか、それは神が気まぐれで解呪したからです。確かに春樹の行動にはそれなりの説得力はありましたが、神が解呪するのはもはや予定調和だと思いました。先が読めたんですね。ああ、Hシーンも3回こなしたしそろそろ畳みかけるなと、そう思ってしまいました。それで良いのかも知れません。むりりん・こぶいちの可愛いヒロインを堪能する事を、一番の目的にするべきなんだなと思いました。

 ちなみに個人的に一番好きなシナリオはまひろルートでした。サブヒロインではありますが、単純にまひろの価値観が自分と合っていたという事と一番おっぱいが大きかったからです。長さも自分的には調度良く、ギャルゲーだったらこの位のボリュームで充分だなと思ってしまいました。またメインヒロインで一番のお気に入りはルリルートでした。キャラクターとしてはルリが一番好きかも知れません。春樹に「暇だぞ、遊べ」と要件を端的に言う様子、「ルリははるきの嫁だぞ。」としっかり宣言する様子が良かったです。このくらい女の子が自分の気持ちを言葉にしてくれたら、現実世界で誰も苦労しないんでしょうねぇ。

 何れにしても、ギャルゲーの面白さを十二分に堪能する事が出来ました。ヒロインは全員可愛かったですし、シナリオはスッキリしてましたし、BGMもボーカルも好きですし、これで満足できない人はいないんじゃないかと思いました。深く突き刺さる事なないかも知れませんけど間違いなく大衆に慕われる、そんな内容だったと思っております。なる程、これが美少女ゲームブランドゆずソフトの魅力なんだなと思いましたね。確かに、これは今のビジュアルノベルと言いますかエロゲを嗜んでいると宣言するには必須科目かも知れませんね。ほのぼのと楽しい時間を、ありがとうございました。


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