M.M 天使になった彼らのお話




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 9 - 78 〜1 2021/11/6
作品ページ
(サークルページと同じ)
サークルページ



<背景やBGMなど全ての要素で天使の世界を表現した、とても温かい気持ちになれる作品です。>

 この「天使になった彼らのお話」は同人サークルである「ほしぞらのよるに」で制作されたビジュアルノベルです。ほしぞらのよるにさんの作品をプレイするのは今作が初めてです。切っ掛けですが、私とお知り合いの倉下さんの共同で主催している「第一回crAsM.Mビジュアルノベルオンリー」にほしぞらのよるにさんが参加頂いた事でした。天使という象徴的な存在、透明感のある登場人物のサンプル画像、どこか神聖な雰囲気を感じました。プレイ時間も短めという事で、気楽な気持ちでプレイ始めてみました。

 主人公であるユウリは、とある理由で命を落としてしまいます。通常、命を落とした人間は再び人間として輪廻転生します。ですが、極まれに天使として新しい人生を歩み始める者も存在します。ユウリはそんな天使として再び目を覚ましました。目の前には安らぎの天使と呼ばれる導き手が一人。彼の前で、ユウリは生前とてもお世話になった一人の人物を思い返します。彼女を心配させないために、そして自分が自分らしくある為に、天使としての新たな一歩を踏み出すのです。ユウリと同じタイミングで天使になったリュカやオスカーと共に、天使としての新たな一歩を見つめてみましょう。

 私もそうですが、人間誰もが経験していない事に死があります。死は誰にでも平等に訪れるものであり、誰もが1度しか経験できないのです。そして、死んだ後の事は誰にも分かりません。だからこそ、人は後悔の無いように人生を生きるのだと思います。ですが、もし死んだ後にもう一度過去の生を顧みるチャンスがあったら何を思うのでしょう。きっと、二度と同じ後悔をしまいと心に誓うのでしょうね。この作品では、そんな命と人生の大切さを垣間見ることが出来ると思います。一度死に、天使として新たな人生を得ることが出来たユウリの過去とは何か。ユウリが後悔している事は何か、是非そんな事を感じながらプレイしてみて下さい。

 その他の特徴として、背景はどこか西洋ファンタジーをイメージさせる雰囲気を感じます。基本的に明るい色合いで、天使の世界が楽しい雰囲気に包まれている印象を与えます。登場人物の描き方も明るい色合いで可愛らしく、きっと愛着を覚えると思います。そして、BGMはそれ以上に西洋をイメージさせてくれました。何しろ、全ての楽曲がクラシック楽器を使用しているのですから。フルートやクラリネットといった木管楽器の音色が和やかな雰囲気を演出し、優雅な雰囲気を演出してくれます。全ての要素が天使の世界を演出しており、統一された雰囲気を作り出そうという気概を感じました。自分もこの世界に行ってみたいと思いましたね。

 プレイ時間は私で45分でした。選択肢は無く、一本道でエンディングにたどり着く事が出来ます。短い中でしっかりと一つのエピソードを語っており、とても読後感の良いシナリオでした。テーマがしっかりしている作品ほど、無駄を削いで焦点を定めて仕上げる事が出来るのかも知れません。短い時間で出来ますので、是非ちょっとした暇な時間で遊んで頂ければと思います。ふりーむに加えて、ノベコレやプリシーからもプレイする事が出来ます。また、ブラウザ版であればスマホでもプレイ出来ます。とても触りやすい設定ですので是非多くの方に触れてみて欲しいです。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<後悔しても取り戻す事は出来ません。出来る事は、歯を食いしばって人のために生きることです。>

 最後までプレイして、とても温かい気持ちになる事が出来ました。そして、自分も人生を頑張ろうと思いました。彼らの天使生活はまだまだ始まったばかりです。自分達の得意分野を活かして、素敵な天使生活を送って欲しいと思いました。

 全体を通して、ユウリの成長を感じる事が出来たシナリオでした。生前の優李は、上手く人付き合いが出来ませんでした。その事自体は良いも悪いも無く、誰にでもある事だと思っております。ですが、そんな優李を誰よりも大切にしている存在がいました。それがおばさんです。優李とおばさんは、血の繋がりはありません。ですがおばさんは実の母親の様に優李を心配し愛しておりました。そして優李の良くなかった事は、そんなおばさんの愛情を理解しながら受け止められなかった事です。ましてや、自殺するなどおばさんに対して最もしてはいけない事でした。そんな過ちに気付いたのは死んだ後でした。後悔しても、もうおばさんの元に戻ることは出来ないのです。

 ですけど、ユウリは気付く事が出来ました。自分がおばさんから愛されていたという事、そんなおばさんの愛に真っ直ぐに応えられなかった事、そしてその事を後悔しているという事です。そして、ユウリはそんな過去の自分を受け止め新しい一歩を踏み出す勇気を持っておりました。もし、ここか人間界でしたら折角踏み出した一歩が蔑ろにされたかも知れませんね。ですけど、ここは天国界です。ユウリの隣には、しっかりとユウリの言葉を受け止めてくれるリュカやオスカーという存在がいました。彼らもまた、もしかしたら死を経験した事で他人に対しての向き合い方が変わったのかも知れませんね。何れにしても、ユウリはこの天国界で自分の反省を活かし新たなステップに進もうとしておりました。そしてその姿はしっかりと周りの人が見ておりました。

 天使の見習いの終了日、ユウリは神様から配属箇所を言い渡されました。それは守り課、人の気持ちを理解し導ける天使が配属される課です。神様はしっかりとユウリの事を見ていたんですね。一歩踏み出してもまだ自信を持っている訳ではなく、少し頼りなさを感じるかも知れません。それでも、ユウリの変化を知っていればとても大きな一歩であり十分過ぎる変化です。ですけど、そういう人の本気の気持ちって伝わるんですよね。拙い言葉でも、それが一生懸命なのかどうかは案外分かるものです。最も、気付く為にはちゃんと相手の事を見ている必要はあります。それを、天使界の誰もがやってくれました。これ程、ユウリにとって嬉しい事はありませんね。自分の周りの人も、そんな優しい人ばかりだったらいいのに。

 行ってしまった過ちは消し去ることは出来ません。そしてそれを後悔し続けても何も変わりません。唯一出来る事は、償いをする事です。ですが、その償い方法は色々あります。共通しているのは、人の役に立つ事です。作中でも「人のために、尽くしなさい。人のために、生きなさい。」「遅すぎることなんてない」と言っておりました。本当、辛いですけどこれしかないんですよね。そんな人生の真理と、それを達成するために必要な事がまとめられていた気がします。ユウリはきっと、これから天使界で一生を掛けて誰かの為に生きていけるのでしょうね。そして、そんな立派になったユウリとお母さんが再会できる日を夢見てレビューの締めとしたいと思います。ありがとうございました。


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