M.M 探偵のすすめ〜紅の烈風編




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 6 6 78 3〜4 2014/7/19
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<本格的な事件でありながらユーモアさに溢れているミステリーはそうあるものではないと思いました>

 この「探偵のすすめ〜紅の烈風編」という作品は同人サークルである「たんすかい」で制作されたビジュアルノベルです。元々この「探偵のすすめ」はシリーズものでありまして、過去に私も第8弾の作品である「花嫁の火種編」をプレイしたことがあります。コミカルなタッチで書かれたミステリーもので、気楽に文章を読み進める事が出来るのが「探偵のすすめ」シリーズの魅力ですが、今回プレイした「紅の烈風編」も同様の雰囲気を持っておりました。

 前にプレイした「花嫁の火種編」は私で約40分で読み終える事が出来たボリュームでしたが、今作である「紅の烈風編」は約3時間のボリュームでした。それだけ文章量が多くなっており、登場人物的にもミステリー的にも読み応えがありました。公式HPをご覧になれば分かりますが、今回はとにかく登場人物が多いです。主人公である藤原美貴は天真爛漫なムードメーカーでして、いつも友人である桐沢結菜や平峰麻衣と楽しく高校生活を送っております。そんな3人に絡むように顔を出すミステリー研究会会長の富家瑛梨菜、桐沢結菜の彼氏である生徒会の勝本翼、他にも生徒会会長や副会長とその彼女、そして藤原美貴が憧れている佐藤健太や噂の女子高生探偵である朝島美奈子を筆頭とした探偵チームと本当に多いです。どの人物も大変魅力的でして、誰1人欠けてもこの作品を雰囲気を作る事は出来ません。全員がそれぞれの個性を発揮する事で事件の解決に向かっていきます。

 最大の魅力は登場人物達のセリフ回しだと思いました。舞台は高校という事勿論登場人物達は高校生が多いのですが、会話の1つ1つが本当に高校生らしいのです。話がすぐに脱線したり人の話を聞かなかったり感情に走ってしまったりと真っ直ぐに事件解決へは進みません。ですがそれこそが彼ら彼女らの魅力であり、この作品のジャンル名にもなっているユーモアミステリーの根幹を成していると思っております。何よりも主人公である藤原美貴については一人称という事で自分の心情もテキストになっているのですが、基本アホの子らしい素直な性格で彼女が登場するだけでどうしようもなく和んでしまいます。キャラクターのタッチも漫画のようで親しみやすく、作品全体でユーモアさを演出していると思いました。

 ミステリーについても割と難しいと思いました。様々な状況証拠や登場人物達のセリフを吟味しないと恐らく正解へはたどり着けないと思います。私も重要だと思う状況や会話はメモを取りながらプレイしました。そして事件の内容的には結構重いもので、コミカルな雰囲気とは裏腹に本格的でした。ちなみに仮に正解が分からなくても問題ありません。自動で解決してくれるモードもありますので安心してEDまでたどり着くことができます。本格的な事件でありながらユーモアさに溢れているミステリーはそうあるものではないと思います。ボリュームもそこそこですので「探偵のすすめ」シリーズを初めてプレイされるのであれば今作がオススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<後味のいい事件なんてない。それでも立ち止まるわけにはいかない。>

 悲しい事件でした。過去の事件が連鎖となって今回の悲劇を生み出してしまいました。後半は割と知らなかった設定一気にが登場したりと若干気後れする場面もありましたが、何ともまあ後味の悪い事件でした。それでもいつまでも悲しんでいる訳には行きません。苦しくても前に向かって進まなければいけませんね。

 正直なところメモを取りながらプレイしなければ犯人にはたどり着けませんでした。平峰麻衣しか知らなかった「赤いドレス」のセリフが私の中では全ての決め手でした。その後の密室トリックについては実際分からなかったので勘で選びました。初めは分かりませんでしたが解答を聞いて成程と思いましたね。爆破事件と殺人事件は別物としながらもその2つが組み合わさった時、全ての謎が解ける瞬間でした。「花嫁の火種編」でも思いましたが「探偵のすすめ」シリーズのトリックはテキストを読むだけではダメで状況を視覚的に捉えることが大切ですね。一辺倒では解くことが出来ないトリックは歯ごたえがあって思わず唸ってしまいました。

 それにしても、EDを迎えてから改めてCGモードを見た時に、藤原美貴・桐沢結菜・平峰麻衣の3人が仲良さそうに笑っているCGは結構堪えますね。ああ、あの仲の良い姿は二度と見ることは出来ないんだなと思うと何ともやり切れない気持ちになります。平峰麻衣も復讐の為だけに高校を選んだと言ってましたが、生活の中で藤原美貴、桐沢結菜と出会ってそんな復讐の気持ちも薄れて普通の高校生らしくなっていきました。それでも過去の悲劇を忘れることは出来ず、復讐に手を染めてしまいました。どうすればこの悲劇を回避することが出来たのでしょうか。思うにこの3人であればどんな悩みでも聞いてくれたのではないかと思います。過去に起きた悲劇を忘れる事は出来ませんが乗り越える事は出来たのかも知れません。

 それでもいつまでもこの事件を引きずる訳には行きませんね。過去に様々な事件を経験している探偵チームのメンバーは慣れているからまた別かも知れませんが、少なくとも藤原美貴にとっては決して忘れる事が出来ないトラウマの事件になったのは間違いありません。でも彼女も強いですね、本当は泣き出したい気持ちを表に出さず笑顔でデートに向かう姿に安心している自分がいました。失ったものは帰ってきませんが未来は自分で選ぶ事が出来ます。きっと持ち前の天真爛漫さでこれからも沢山の人を笑顔にしてくれるのだと信じております。まとまらなくなりそうですので今回はこの辺りで失礼します。


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