M.M それは舞い散る桜のように




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 9 8 88 25〜35 2006/5/17
作品ページ(なし) ブランドページ(なし)



<確かに面白かった、けど…>

 いろいろと波紋の多いこの「それは舞い散る桜のように」というゲーム、私も非常に気になっていましたのでプレイしてみました。結果としては、本当に面白いゲームでした。

 まず評価出来る点としては、笑いのネタの面白さです。この「それは舞い散る桜のように」というゲーム、プレイする前から「とにかく笑える」という評判を多く耳にしてきました。実際プレイしてみて、本当に笑わせていただきました。学校生活から休日から何から何まで、これでもかというくらいに笑いのネタが詰まっています。そして、それらの一つ一つが本当に面白いのです。そして、この笑いの面白さをより引き立てているのが、演出の良さです。BGMの使い方や効果音の使い方、そして背景の使い方に至る様々な要素が上手い具合に調和していて、本当に笑いの面白さが引き立っています。この演出の調和、まさに「最強」の一言で済ませる事が出来ます。

 そして、その笑いの面白さと同等に評価出来るのが、キャラクターの良さです。この「それは舞い散る桜のように」には、メインヒロインを含めて数多くのキャラクターが登場しますが、その誰もが非常に良い味を出しています。その理由としては、ひとえに声優の力量に尽きると思います。この声優さんですが、キャラクターやシナリオについての理解度というものが半端でありません。ここまでキャラクターやシナリオの魅力を引き出しているゲームを私は他に知りません。まさに「完璧」と言えると思います。

 さらに良いと思う所について、ボーカル曲の良さがあります。この「それは舞い散る桜のように」の中には全部で三つのボーカル曲がありますが、どれもこれもが非常にテンポの良い曲に仕上がっています。そして、このテンポの良さがシナリオの面白さとリンクして、このゲームの雰囲気をより良いものにしています。普通に聞いてもいい曲ですし、是非サウンドトラックの購入をオススメします。

 そしてシナリオですが、そんな「最強」の笑いの中、分かりやすく展開されていきます。選択肢も非常に分かりやすいですし、やや長いですが、そんな長さを忘れさせてくれるシナリオです。しかし、一つだけ致命的な欠陥がありました。それは、五人いるメインヒロインの後半部分のシナリオの展開が殆ど一緒であるという事です。まあ、このゲームのテーマ性から考えますと、これは仕方のない事なのかもしれませんが、さすがに三人目四人目となってくるとシナリオが読めてしまいました。そういう意味ではやや飽き飽きしてしまうかもしれません。

 そして、これは多くのプレイヤーが一番に嘆いている事ですが、本当の意味でシナリオが完結していません。話によると、この「それは舞い散る桜のように」というゲームは次に出る続編と対になって初めて完結する物語だそうです。しかし、その続編という物を出す前に、ブランドは倒産してしまいました。これではシナリオが完結していないのは当たり前ですが、まさに残念と言うしかありません。是非その続編という物を作ってもらいたかったです。

 とはいえ、内容は激しく面白かったので是非やってもらいたい作品です。時間とお金に余裕のある方は今すぐにでも手に入れてやってみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<結局自分の力で成長出来なかった主人公>

 このゲームのテーマとして一番言える事は、主人公の成長であると思います。表面的に見ればヒロインたちとのラブコメにしか見えませんが、主人公である桜井舞人はシナリオ後半にやってくる試練を乗り越えなくてはなりません。ここで言う試練というのは、桜の精である自分の運命に対して立ち向かう決断をする事です。

 ここで補足ですが、シナリオを注意深く読めば桜井舞人が唯の人間ではなく、桜の精であることが分かります。そして桜の精としての宿命は、人間と愛を育めない事、もっと言えば人との絆を結べない事です。その証拠に、桜井舞人がヒロインと愛を育もうとすると、必ず両者とも愛に関する記憶を失ってしまいます。つまり、シナリオを進める過程で桜井舞人は自分の運命を知りますが、これを受けて何か行動をしなければいけません。それが、今までだらしない生活を送ってきた事に対するけじめにも繋がるのです。

 しかし、エンディングを向かえる時に桜井舞人が行ったことは、あくまで自分の運命を受け入れて忘れる事でした。最終的に桜井舞人が成長(具体的に言うと自分が愛したヒロインのことを忘れなかったこと、だらしない生活をやめてバイトなどに勤しみ出した事)できたのは、桜香や山彦の協力があってのことです。つまり、桜井舞人自身の力では成長できなかったのです。

 まあ、成長する事自体とても難しい事ですし、誰かの助けがあって成長する事も大切であると思います。しかし、ヒロインがあまりにもご都合主義であったことから考えて、是非桜井舞人にも「ご都合主義的」に自分の力で成長してもらいたかったです。まあ、このことは特別私の中での「それは舞い散る桜のように」の評価を下げる物ではありませんので。

 とにかく前半部分の笑いで正直大満足です。やはりこのゲームを「笑い」だけで評価するという事は邪道でしょうか?


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