M.M スノーフレークのため息




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 6 - 73 2〜3 2018/8/23
作品ページ サークルページ



<登場人物のキャラクターを表現する為の仕掛けが満載で、まさに超王道学園恋愛アドベンチャーでした。>

 この「スノーフレークのため息」という作品は、同人サークルである「でじたるきゃっと」で制作されたビジュアルノベルです。でじたるきゃっとさんの作品では過去に「リトルウィッチ×コンチェルト」をプレイさせて頂きました。可愛らしいヒロインの魅力を全面に押し出した優しいシナリオがとても印象的で、読んでいてほっこりとした気持ちになる事が出来る作品でした。今回レビューしている「スノーフレークのため息」は超王道学園恋愛アドベンチャーだそうです。でじたるきゃっとさんが送る恋愛アドベンチャーという事で、登場人物の魅力に注目しながら読み進めていきました。

 主人公である豊城 鈴夏(とよき すずか)は桐ヶ原学園に通う一年生です。学業の成績が良く、毎日予習復習を欠かさない非常に真面目な生徒です。一方コミュニケーションが苦手で、自分でもコミュ障だと認めております。ですが、そのコミュ障な部分についてどこか諦めている嫌いがあり、「他人は他人、俺は俺」と言い聞かせている素直になれない部分も持ち合わせております。言ってしまえば普通の男子学生です。そんな鈴夏ですが、とある切っ掛けで学園の高根の花である宇都宮 真幸(うつのみや まゆき)と共同生活を送る事になってしまいます。突然変わった日常に戸惑いながらも、人を信じ自分を信じる物語が幕を開けるのです。

 この作品の魅力は一重に登場人物のキャラクターにあります。メインヒロインである真幸は文武両道の学園一の才女として知られております。それでいてコミュニケーションも得意で、いつも彼女の周りには人が集まっているのです。ですが、男性が苦手で厳しい態度になってしまったりと完璧超人という事ではありません。年齢相応の気持ちの揺らぎや素直になれない部分も沢山あり、そこが彼女の魅力だと思っております。他にもクラスメイトであり男より身長が高く人気のある三島 玲桜(みしま れお)、鈴夏が住んでいるアパート「青山ハウス」の管理人であるおっとりとしたお姉さんの青山 明菜(あおやま あきな)といった魅力的なキャラクターに囲まれております。是非ヒロイン達との会話一字一句を楽しんで読んで頂ければと思います。

 また、でじたるきゃっとさんの作品はヒロインフルボイスです。同人ビジュアルノベルにおいてヒロインフルボイスという作品は中々少なく、時間を掛けて制作された事が伺えます。併せて要の部分では印象的なスチルが表示され、その時その時のヒロインの気持ちが伝わる様でした。登場人物のキャラクターに重きを置いた、まさに超王道学園恋愛アドベンチャーの名前の通りの作品だと思いました。他にもオープニングムービーがあったり挿入歌があったりと歌唱曲も幾つか収録されております。挿入されているタイミングも絶妙であり、吟味して調整されたのだと伺えました。

 プレイ時間は私で2時間30分でした。選択肢は殆どありません。分岐については基本何も考えずに読む事が出来ます。またこの作品は章単位で分かれておりますので、各章が終わったタイミングで休憩などを挟むのが良いと思います。既読スキップが遅かったりといったティラノスクリプトらしい窮屈感が否めませんが、大きなバグもなくプレイする事が出来ました。まずはどんなヒロインなんだろうという点に注目し、そこに主人公がどのようにアプローチするのかを見届けてみて下さい。きっと、優しい気持ちになる事が出来ると思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<「貴方を信じる自分を信じる」、それが物語を終わりに導く鍵でした。>

 最後までプレイして、やはりメインヒロインである真幸の姿が最も印象的でした。何と言いますか、ここまで王道のツンデレを見たのはある意味久しぶりかも知れません。普段高根の花に留まっているが故に素直になれない、それでも鈴夏が気になって仕方がない、そんな気持ちがよく伝わりました。

 スノーフレークとは、作中でも言っておりましたがヒガンバナ科の植物である大待雪草(オオマツユキソウ)を指します。その花言葉は「純粋」「純潔」「汚れなき心」「皆をひきつける魅力」となっており、まさに真幸の姿そのものに思えました。純粋であり純潔、それは日々の学園での態度や行動から明らかでした。両親が経営している楢原銀行で不祥事があった時、真幸は学園のさらし者として扱われました。ですが真幸は挫けませんでした。挫けるどころか、クラスの中で「黙りなさい!」と自分の想いを誇示し続けました。まさに「純潔」。自分に課せられた汚名と自分の手で消し去ったのです。この「純潔」さが「皆をひきつける魅力」そのものだと思いました。

 それでも両親に捨てられた瞬間の真幸は、流石に消沈しておりました。自分なんか生きている価値なんてないとまで言っておりました。真幸のセリフの中で印象的な物に「自分を無価値と思う、その自分こそが、真に価値なき人間だ」があります。普段凛としている時の真幸はまさにこの言葉を体現するかのようでしたが、そこは年頃の女の子らしい弱さでした。だからこそ、鈴夏は真幸が気になり放っておく事が出来なかったのだろうと思います。お互いがお互いを大切な存在だと認識すれば、後は一途な姿だけが印象的でした。鈴夏に内緒で料理の練習をする真幸、真幸に内緒で浴衣を買うためにバイトをする鈴夏、素直になれないけど相手に対して真剣、まさにツンデレの王道といった感じでした。

 この作品のテーマは「信じる」だと思っております。両親に捨てられた真幸とコミュニケーションが苦手な鈴夏、本当は誰かに頼って甘えたい気持ちがありながらもそれが出来ませんでした。何故なら、相手の事を信じられなかったからです。ですが、それは相手だけではなく、自分の事も信じられなかったからです。今ここで自分は頑張れるのか?ここに自信が無ければ前に進むことは出来ません。4章までの約2ヶ月間で、真幸と鈴夏は確かにお互いの信頼関係を作ってきたのだと思います。相手が何をしているのか分からない時間があっても相手を信じる。もしかしたら両親に反対されるかも知れないけど自分を信じる。いや、両親の事も勿論信じていたんですね。そうしてやっと告げる事が出来た自分の本当の気持ち、それが物語を終わりに導く鍵でした。

 この作品は基本的に真幸と鈴夏の物語でした。それをサポートする玲桜と明菜という構図でした。勿論、サブヒロインである玲桜とのエピソードも印象的でした。自分で自分を王子様という殻に閉じ込めた玲桜を女の子に解き放つ物語でした。これもまた、お互いの信頼関係があってこそのエピソードでした。2人の物語はまだまだ始まったばかりですからね。そこから先は、皆さんの想像の世界になります。今思えば、明菜も鈴夏の事を信じて無ければ青山ハウスを任せたりしませんね。隅から隅まで信頼に包まれた物語だと思いました。是非彼らには、時にすれ違っても最後にはお互いを信じられる関係でいて欲しいと思いました。ありがとうございました。


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