M.M 標-SHIRUBE-
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
2 | 7 | - | 68 | 1〜2 | 2022/9/24 |
作品ページ(R-18注意) | サークルページ |
<主人公である少女結佳と舞台となっている半島の魅力を堪能する、雰囲気を大切にした作品です。>
この「標-SHIRUBE-」は同人ゲームサークルである「根岸屋」で制作されたビジュアルノベルです。根岸屋さんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けですが、COMITIA141にて色々とお話させて頂いた事です。COMITIA141では、日頃お世話になっているえるりんごさんの売り子や手伝いをしていたのですが、その時に隣のサークルさんだったのが根岸屋さんでした。設営時にボールペンを借りるなど親切にして頂き、途中創作やレビューの話をする等とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。今回レビューしている「標-SHIRUBE-」ですが、可愛らしい制服姿の女の子が描かれているシンプルなパッケージでどんな内容なのか外見では想像出来ません。分かる情報としては、R-18ですのでこの子の性的なシーンがあるんだろうなという事くらいです。プレイする前の想像は自由という事で、この子がどんな性的な姿を見せてくれるのか、そして水色を基調とした
背景はどんな舞台なのか、そんな事を想像しながらプレイし始めました。
舞台は海洋信仰や山岳信仰が息づくとある半島です。夜、住宅に光や生活音が無いゴーストタウンと化した街に女の子の足音が響きます。彼女の名前は結佳、そしてその後ろにはこの世の物とは思えない化け物が現れました。おとなりさんと呼ばれるその化け物は障りの象徴、そんな人外の存在に結佳はどこか達観したような表情で迎え撃ちます。おとなりさんに立ち向かう結佳にはサポートしてくれる人がいました。クラスメイトの智弥です。智弥と結佳の会話には、どこか長い時間を掛けた信頼関係の様な物が見受けられました。2人の馴れ初めはどのようなものなのか、それもまたこの作品のキーになるポイントです。そして、おとなりさんは所謂伝奇的な存在ではない事が会話から推察する事が出来ます。おとなりさんの正体は何者なのか、結佳に課せられた役割は何か、物語は全て結佳を中心に展開されていきます。
この作品の魅力は、ひとえに結佳の存在に尽きます。結佳はどこにでもいるような外見の女の子ですが、表情は乏しく内面がどのようなものか分かり難いです。そんな結佳について、この作品全体を使って紹介していきます。結佳の両親は何をしているのか、智弥との出会いはどのようなものなのか、おとなりさんとの関係は何なのか、それらのエピソードを紐解いていく中で結佳という存在を理解することが出来ます。是非、結佳はどんな女の子なんだろうという事を想像しながら読んでみて下さい。何よりもR-18ですからね。勿論結佳のHシーンがあります。Hシーンこそ、その人物を理解するのに最も大切な場面ですからね。裏も表も含めて堪能してみて下さい。
また、舞台となっている半島についても多くの時間とテキストを使用して紹介しております。海洋信仰や山岳信仰があるという事だけではなく、漁村であり酒造りが盛んである事、他方工業地帯もあり複数の産業があるという事、焼き物が盛んであり伝統があるという事など様々な視点から紹介しております。何よりも、舞台紹介の場面については背景描写が実際の写真を用いた物ですからね。プレイ後に分かりますが、この半島は実在する舞台であり念入りに取材しております。そんな舞台に対する愛を強く感じる事が出来ます。自分もプレイし終わって、舞台探訪したくなりましたね。そんなリアリティ溢れる舞台の描写にも注目してみて下さい。
注意点ですが、システム周りが若干使い辛いです。一般的なビジュアルノベルに存在するバックログやスキップといった機能はありません。特にバックログについて、この作品は割と専門用語が唐突に登場しますのでうっかりテキストを読み進めてしまうと再確認する事が出来なくなります。世界観や人物について拘りが深い作品だけに、それを手軽に振り返れないのは残念に思えました。また、テキスト表示も吹き出し・ウィンドウボックス・背景表紙と様々織り交ぜております。その事自体は工夫されている点という事で面白いのですが、目移りしますので読むという動作に集中するという観点では不利に感じました。マウスホイールも効かず、音量調整も独自の操作方法です。プレイする前にあらかじめ同封されている操作マニュアルを読んでおくことをオススメします。
プレイ時間は私で1時間15分くらいでした。選択肢は無く、1本道でエンディングにたどり着く事が出来ます。上でも書きましたが、この作品で表現したい事は結佳という人物の魅力と舞台となっている半島の魅力だと思いました。逆にシナリオらしいシナリオはありませんでしたので、ネタバレで書く事は特にありません(おとなりさんを始めとした世界観も独特でしたが、それらは結果としてテキストによる説明で帰結してしまっておりました)。是非、結佳と半島を中心とした作品全体の雰囲気を堪能して頂ければと思います。そして、半島の魅力をより深く理解する為に舞台を訪れてみて下さい。心地良い雰囲気の作品でした。
現在ネタバレのレビューはありません。見たい方も見たくない方も避難して下さい。