M.M 男性を癒やし抜く機械




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 - 74 2〜3 2019/11/9
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<アンドロイドだからこそ出来るシチュエーションを十分に楽しみ、癒されつくされて下さい。>

 この「男性を癒やし抜く機械」という作品は同人サークルである「夜のひつじ」で制作されたビジュアルノベルです。夜のひつじさんの作品は、このHPでもかなりの本数のレビューを掲載させて頂いております。お手軽にプレイ出来るエロゲーを制作されているサークルさんであり、ジャンルも幅広く取り扱っております。ここ最近はロリータシリーズが頻出な気がしますね。そして、唯のエロゲーではなくどこか現代を生きる社会人の心の寂しさを埋めるようなシナリオやテーマ性も特徴です。抜けるだけではなくジンワリとした読後感も味わえる、それが夜のひつじさんの魅力だと思っております。今回取り扱っているのはアンドロイドです。どのようなシナリオとテーマを表現しているのか楽しみにプレイさせて頂きました。

 主人公はとある部屋で目を覚まします。そこにいたのはアリスという名前のアンドロイドです。主人公は自分の過去をいっさい覚えておりませんでした。その為、アリスと共に暫く療養する事になります。アリスにプログラムされている療養プログラムは、主人公の体温、心拍数、血圧など全ての情報を統合し最適な効果をもたらします。そして、それは性的なものも含んでおります。主人公は、何も考えずにアリスに身を委ねればそれで良いのです。ちっぽけなプライドなど捨てて、素直になってアリスの言いなりになってしまいましょう。そうすれば、きっとアリスとの幸せな未来が待っている筈です。

 もうタイトルが最高ですね。男性を癒やし抜くなんて、本当夢の様です。アリスの立ち絵も、あどけない表情でありながらおっぱいはとても大きく、お尻や太もももむっちりしていてとても抱き心地が良さそうです。こんな女の子が隣にいたら、もう何もいらないですね。もちろん、それだけで終わらないのが夜のひつじさんの作品です。始めは単調にアンドロイドとして主人公に接しているアリスですが、次第に感情の様な物を発露していきます。ちゃんと学習していくんですね。そして、それに合わせて主人公も少しずつ失われた記憶を取り戻していきます。心を通わせていく中で、どこか最後までこのままにはならないんだろうなという予感を感じさせます。アリスは何者なのか、そして主人公の記憶の先には何があるのか。癒される中で垣間見れる2人の過去を探ってみて下さい。

 Hシーンの数は流石でした。10以上のシチュエーションで私たちプレイヤーを癒してくれます。またこの作品にはアリスだけではなく妹分のウィタというアンドロイドも登場します。2人の性格は正反対ですので、同時にシチュエーションも増えるという物です。2人になれば当然3Pもありますしね。そして、アンドロイドですので言ってしまえば中出ししても妊娠しないのです。人間には出来ない事が出来てしまう、この背徳感こそが今作の魅力かも知れません。他にもアンドロイドだからこそのシチュエーションが出て来ます。絶対にお気に入りのシチュエーションがある筈ですので、是非それも素直に楽しんでみて下さい。

 プレイ時間は私で2時間30分掛かりました。選択肢はなく、一本道でエンディングにたどり着く事が出来ます。2時間30分で10以上のHシーンですからね。もう半分以上がHシーンだと思って頂いて結構です。基本的に同じ部屋での主人公とアリス(と時々ウィタ)との絡みあいですので、まったりと適宜休憩を取りながらプレイするのが良いと思います。一気にプレイすると、折角のHシーンを十分に活用できないかも知れませんからね。同じような状況でありながら少しずつアンドロイドに慣らされ常識が書き換えられていく、そんな癒やされの醍醐味を味わってみて下さい。楽しかったです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<寂しいのは人間もアンドロイドも一緒、それが分かったから2人は一緒に居る事が出来た。>

 こういった殆ど人間と変わらないアンドロイドを見ると、人間とアンドロイドの違いってなんだろうって思ってしまいます。人間の思考も所詮は脳の中のニューロン同士による電気信号によるもの、そうであるのならアンドロイドのプログラムと何も変わるものはありません。アリス達の表情や仕草を見ていると、人間とアンドロイドなどという区別に何も意味はないように思えてしまいます。

 物語途中、アンドロイドの進化の過程の話がありました。予備バッテリーを持ってくるようプログラムされたアンドロイドは、傍にある爆弾に意識が向きませんでした。次に爆弾を始めとした自分に危害を加える可能性があればそれを回避するようプログラムされたアンドロイドは、全ての可能性を考慮しようとして時間切れになってしまいました。次に可能性の低い危害については検証しなくてよいとプログラムされたアンドロイドは、そもそも何が可能性が低いのか分からず時間切れになってしまいました。この進化の過程は人間が失敗と経験を繰り返して成長していく過程と何一つ変わりませんでした。人間であれば、何も考えずに行動する事によって人に怒られ、それが罪の意識になって今度は何も行動出来なくなり、その繰り返しで最適化されていきます。主人公とアリスの生活は、そんな人間とアンドロイドの進化の過程の縮図のように思えました。

 そして、そんな主人公とアリスが最後に持った感情は愛するという事でした。アリスが気にしていたのは性行為の感想などではなく愛していますという言葉の答え、こんなの人間以上に人間らしいとしか言えませんね。主人公すらハッとしていましたもの。そして、その先に待っていたのはどうしようもない幸福感でした。信頼感と言い換えても良いかも知れません。お互いに性行為をするだけではなく何度も何度も人間とアンドロイドとは何かという会話をしました。「正常に動作している人間は、もう死に始めている」「生まれてこないほうがよかったが、生まれてしまった」「生きている事の実感」こんな哲学的な事ですが、これを真剣に考える事が2人にとっての必然でした。何故なら、実は主人公がアンドロイドでアリスが人間だったからです。

 エンディングで明かられた真実、それはアリスが実は死を控えた人間であり主人公はそんなアリスの死の直前の記録を取る医療用の人工知能でした。少しずつ減っていくニューロンの繋がり、それはかつて主人公が見てきた夢の逆再生です。ですが、主人公はこのまま観察するだけではいけないと思ったんですね。そんな時、アリスの脳の中で主人公との対話がスタートしました。そして、その結論は「ひとりで死ぬのは寂しい」という事でした。愛する事を知って、信じる事を知って、幸福という事を知った主人公とアリスは、決してお互いを一人にはしたくないと思ったのかも知れません。最後、主人公はアリスを救う事が出来ました。そしてそれをアリスも喜んでおりました。この2人は、きっと最後の最後まで一緒に居るのでしょうね。

 「愛してるよ、人間」というセリフには、そんな人間の複雑な気持ちの揺れ動きを愛おしく思う気持ちが込められていると思いました。素直になりたいのに素直になれない、気持ちいいのに気持ちいいと言えない、まるでかつての主人公の様です。そしてそれとおなじ感覚をアンドロイドであるアリスも持っておりました。私、この作品の中のセリフで一番頷いたのは「頭の中で何を話すか決めているのに、考えている素振りをする」でした。何となく、演じるんですよね。特に意味は無いのにです。そんな、行動や動作一つ一つに人間らしさを感じる事が出来た作品でした。ありがとうございました。


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