M.M 戦場ノベルゲームシリーズ2 最後のルフトバッフェ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
2 5 - 50 〜1 2016/1/4
作品ページ サークルページ(R-18注意)



<ギュンターという男が戦争を通じで何を思ったのかを感じて欲しいですね。>

 この「戦場ノベルゲームシリーズ2 最後のルフトバッフェ」は同人サークルである「moarea88」で制作されたビジュアルノベルです。moarea88さんの作品は過去に幾つかプレイさせて頂いておりますが、その種類はただひたすらHだけし続ける変態物もあればハートフルな純愛物もあり、そして今回レビューしている「戦場ノベルゲームシリーズ」と呼ばれる男の生き様を描いた戦争物と非常に多岐に渡っております。何れの作品もコンセプトの非常に忠実であり、パッケージの印象が琴線に触れた方であれば間違いなくお気に入りのタイトルになると思っております。今回レビューしている「戦場ノベルゲームシリーズ2 最後のルフトバッフェ(以下ルフトバッフェ)」は戦争ノベルゲームシリーズの第2弾であり、第1弾である「戦場ノベルゲームシリーズ1 蜃気楼戦線(以下蜃気楼)」同様戦争のリアルさやそこで生きる男の生き様を感じることが出来ました。

 タイトルにあるルフトバッフェとはドイツ空軍の事です。主人公であるギュンターはルフトバッフェ所属の軍人であり、祖国及びルフトバッフェに対し非常に高い忠誠心を持っておりました。ですが歴史が示しております通り1945年にナチス・ドイツは降伏しルフトバッフェは解体され、その後長きに渡る東西分裂の歴史を歩む事になります。始めからこの作品の結末は悲劇しか待ってないのです。主人公であるギュンターが最後どのような運命を歩むかは是非皆さんの目で見届けて欲しいのですが、同時に彼がルフトバッフェとしてどのような気持ちで戦場に飛び立っていったかに思いを馳せて欲しいですね。

 プレイ時間は私で10分掛かりました。前作同様本当にあっという間に終わってしまいます。ですがこれも前作同様ですが全てのテキストが英語ボイスで語られており、さながら外国の映画を見ているかのようです。加えてCGで描かれた飛行機の姿は非常に勇壮であり、飛行機のビジュアルが好きな方にとっても満足のいく作品だと思います。この作品のテーマは冒頭に書かれている言葉の通り「この悲劇が繰り返されないことを願って」です。ギュンターという男が戦争を通じで何を思ったのか、そしてそこから我々プレイヤーが何を感じ取るのかを意識して読んで欲しいと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<道は1つしか選ぶ事が出来ない。だが生きていくという目的を失ってはいけない。>

「道は1つしか選べない」

 果たして戦争とは何なのでしょうか?戦争を行って誰が幸せになるのでしょうか?例え自分が忠誠を誓う祖国の命令とは言え、顔も名前も知らない人達を殺さなければいけないのです。この事に何の意味があるのでしょうか。第二次世界大戦が終わりを迎え祖国の敗戦を知ったギュンターはそこで改めて戦争の意味というものを考え始めました。そして考え抜いた末、1つの決意を胸に祖国ドイツへ帰って行きました。何が正しいかなんて存在しない。それでも道は1つしかないしどれか1つを選ばなければいけないのです。

 プレイ時間10分という短いテキストではありましたが、人生にとって非常に教訓的な内容が多く含まれておりました。今作はドイツの同盟国である日本をと共にアメリカ軍と戦うというシナリオでもありましたので、ただ祖国の為だけに戦うのではなく目の前で繰り広げられる惨劇に対してどう思うのかという部分がクローズアップされておりました。軍人だからといって人を殺すのは好きなはずがありません。それが例え敵国でも同盟国でも同様です。それでも上からの命令が全てであり個人の意思など無視される世界です。だからこそ、敗戦して拠り所を失った軍人たちは迷うんですね。ギュンターもまた日本軍が次々と自決していく様子を見て、中性の騎士のようだと罵っておきながらそれが正しいことかもしれないと迷いました。最後のルフトバッフェがルフトバッフェでなくなった時、そこからがギュンター自身の人生となりました。

 最終的に彼が決断を下したのは祖国へ帰るというものでした。彼には幾つもの道がありました、日本へ留まる、自決する、誰もいない土地へ行く、どの道も正解ではなくどの道も自分が決意して決めるものでした。では彼は何故ドイツへ戻るという決断を下したのでしょう。それは「生きていかなければいけない」という言葉が後押ししたからでした。祖国を失っても誇りを失っても、生きなければいけないのです。それは戦争中感じた戦争に対する疑問、そして目の前の惨劇に対する無力感から来たものでした。そう、彼にはまだまだ出来る事があるのです。戦争に負け荒廃した祖国を立ち上げるという決意、それが最後のルフトバッフェに灯った生きる為の拠り所でした。戦争が壊すものは街や生命だけではなく、人の心もまた同様でした。それでもそんな環境の中で生きるために道を選択できたギュンター。彼の選択が報われる事を祈るのみですね。ありがとうございました。


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