M.M School Days




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 6 9 83 25〜30 2020/5/30
作品ページ(なし) ブランドページ(R-18注意)



<結局のところ、伊藤誠を氏ねと言わしめているのはプレイヤーであるあなたなんだなという事が分かりました。>

 この「School Days」という作品は、Overflowという美少女ゲームブランドで2005年に制作されたフルアニメーション作品です。世の中的に「ヤンデレ」という言葉が広まる起爆剤となった作品であり、また「誠氏ね」という言葉が固有名詞となる程の注目を浴びた作品であります。2007年にはアニメ放送もされ、原作をプレイされていない方でもこの作品の持つ強力なメッセージを感じる事が出来たのではないでしょうか。発売からもう15年も経過しておりますが、それでもなお根強いファンが沢山おり2000年を代表する作品だったと思っております。私自身、School Daysについてはアニメ放送は見ておりませんしゲームは今回初めて触れました。それでもSchool Daysの象徴的なシーンは嫌が応にも流れて来ましたし、何となく主人公の伊藤誠がとんでもない奴でメインヒロインの西園寺世界と桂言葉のドロドロした恋愛要素のある作品なんだろうなという事は知っておりました。今回プレイした理由、それはどうしてここまで誠という存在が取り上げられているのかを確かめたいと思ったからです。氏ねと思わせるだけの人間なのか、それ以外の理由があるのか、それを15年越しに確かめようと思いプレイし始めました。

 主人公である伊藤誠は、どこにでもいる普通の学生です。誠には、密かに心に思う女の子がいました。その名前は隣のクラスにいる桂言葉で、学園に伝わる「好きな相手を携帯電話の待ち受け画面にして、3週間隠し通したら想いが叶う」というおまじないを信じ実行してました。ですが、クラスメイトである西園寺世界に3週間どころかたったの1日で見つかってしまうのです。クラスメイトの恋路をじゃましてしまった世界ですが、代わりに誠と言葉の間を取り持ってくれると約束。その後誠と言葉と世界の3人で屋上でご飯を食べる事が日課になるようになりました。世界の計らいで少しずつ距離を縮めていく誠と言葉、ですが世界もまた秘めた想いを持っておりました。3人の出会いから始まった物語は、その後沢山の登場人物の思惑も重なり合い、この時には思いもしなかった結末に至るのです。思春期の学生らしい自分の気持ちに葛藤する物語が幕を開けました。

 最後までプレイして改めて思ったのは、主人公である誠を誠実な人間にするのも目の前の快楽に溺れさせる人間にするのも全てプレイヤー一人ひとりの匙加減だという事です。この作品には非常に多くの選択肢があり、それによって20以上のエンディングに分岐していきます。その中にはいわゆるハッピーエンドと呼ばれるものもあればバッドエンドと呼ばれるものもあります。一人のヒロインと結ばれるものもあればハーレムエンドもあったり、皆さんご存知の通り誰かが死んでしまうエンドもあります。それを決めるのは、プレイヤーなのです。そういう意味で、当初から誠氏ねという言葉が独り歩きしていてとんでもない奴なのかなと思っていた疑問は晴れました。誠を氏ねと言わしめているのはプレイヤーなのだと。プレイヤーが不誠実な選択肢を選び続けるから、誠が氏ねと言われるだけの存在になってしまうのだと。これ以上の部分はネタバレ有りの方で話そうと思いますが、少なくとも一方的に誠がとんでもない奴ではないという事が分かって少し安心しました。

 その他の点として、フルアニメーションは力が入っていたなと思いました。一部重複箇所もありますが、全部で60〜70話分のボリュームのあるアニメーションは圧倒的大作であり力が入っていると思いました。その中に選択肢を混ぜ、非常に多くの分岐を作っております。選択肢も凄いと思ったのは、選ぶだけではなくスルーという選択もあるという事です。これは本当現実世界ではよくある事だと思います。自分で何かを選択しなくても時間は経過し世の中は動いておりますのでいつの間にか勝手に何かが決まっている、そんなリアルさを反映していると思いました。特にこの作品は学園の恋愛要素のある作品です。好きという事が良く分からない学生にとって恋愛事で何かを決断するという判断はとても難しいというものです。ですが、その分分岐も多くなる事になります。2択だったらする事も含めて3択になる訳ですから、全てのルートを確認するのは相当な時間が掛かると思います。私はとりあえず自力でプレイして後は攻略サイトを見て全てのエンディングを確認しました。物語を理解するだけでしたらそれで十分だと思います。

 そしてこの作品を象徴するのはボーカル曲にあると思っております。世の中的に有名なのは、いとうかなこ氏が歌う「悲しみの向こうへ」だと思います。あの鮮血のシーンで必ず流れますので、映像と共に印象に残っていると思います。ですが、この作品はこの悲しみの向こうへを含めて全部で10曲程度の楽曲が用意されております。そして、そのどれもが歌詞に登場人物の心情やシチュエーションの状況を組み込んだものとなっております。是非全てのボーカル曲についてその歌詞の意味を感じてみて下さい。悲しみの向こうへも、悲しい事が起きてその向こう側にたどり着くにはどうしたらいいのかという歌詞ですからね。悲しい事が起きてはい終わりではありません。恋愛という一言では割り切れない題材を扱っており、登場人物の数だけ気持ちがありますのでそれを象徴したボーカル曲なのだと思っております。

 プレイ時間は私で26時間45分でした。上でも書きましたが、この作品はフルアニメーションであり選択肢が非常に多いです。その為いわゆる既読スキップという概念がありませんので全てのシーンを見る事を考えると安易に飛ばす事が出来ません。2倍速であれば声やBGMも聴けますが、4倍速8倍速になるとそれも無くなりますので見た事無いシーンになってもうっかり飛ばしてしまう可能性があります。幾つかのエンディングを見てくると段々また同じような展開だなと思う場面が出て来ますので、そういった割り切りが出来る場面以外ではそこまで倍速モードは使わないほうが良いかも知れません。私は展開を見て積極的に倍速モードを使ってこのプレイ時間でした。全部そのまま見てたら30時間は超えていたでしょうね。それだけの大作でした。そして、誠氏ねの意味やヒロイン達の性格も良く分かりました。少なくとも、世の中的に言われている程酷い奴だとは思いませんでしたね。その辺りもネタバレ有りで書こうと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<「Still I love you」結局はみんな誠の事が好きなんですね。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、誠を誠実にするのもクズにするのも全てはプレイヤーの一存なんだなと思いました。ヒロインがどんな風に攻めてきてもそこに確固たる意志があればバッドエンドは避けれました。それにしても、ヒロイン達は誠の事が好きでしたね。結局は、誠がモテる事に対するある種の嫉妬みたいなのが「誠氏ね」の本質なのかなと思いました。

 プレイしていて思いました、どうしてこの伊藤誠という人間はここまでモテるんだろうと。確かに誠はそこまで人間的に成熟しているとは思いません。基本的にめんどくさがりですし、周りに流されますし、性欲に対してもだらしないし、本当どこにでもいる普通の学生です。そんな誠がこの物語の主人公になれた理由、それは圧倒的に女の子からモテてたからです。誠の意思に関わらず周りの人が誠を振り回して離さないのです。そんな状況であれば、誰に対してもだらしなくなってしまうかも知れませんね。結局のところ、誠に対して誰も諫める人がいなかった事があの象徴的なバッドエンドに繋がったんじゃないかと思います。女の子の無自覚でも何も学園生活に支障が無ければ、そこから自分を律しようとする気持ちも起きにくいですからね。そんな女性陣の気持ちに胡坐をかいている姿勢が誠氏ねに繋がったのかなと思いました。

 ですが、ネタバレ無しでも書きましたが伊藤誠という人物はそこまで悪い奴だとは思いませんでした。優柔不断ですが人を不快にはさせませんし、妹想いで他人に対する愛情を持てますからね。そして作品をプレイして分かった事ですが、自分でお弁当を作れるスキルは凄いと思いました。母子家庭という環境もあるかも知れませんが、あの年齢で自分でお弁当を作れるのは間違いなくプラスポイントです。加えてかなりのスキルみたいですからね。後は顔立ちはイイみたいですね。4組の女子たちが3組の顔のいい男の子と言ってましたからね。もうこれだけでほとんどの女の子にとっては誠を嫌いになれなくなってしまいます。そして黒田光ルートで分かりましたが、誠のアソコはかなりデカいみたいですね。身体の相性が良いとか言ってましたが、単純に大きくて気持ちいいところに当たる事もまた誠を話したくないという理由なんだと思います。まとめれば、伊藤誠はかなりハイスペックな男の子という事です。まさに美少女ゲームの主人公という感じでした。

 だからこそ、殆どのルートで誠に対する嫉妬の気持ちは他の女の子に向かいました。流石に「我が子へ」エンディングは2人も無節操に孕ませて世界を無視した形ですので擁護出来ませんが、それ以外のルートは全部誠を責める物は一つもありませんでした。怒る事はありませんでしたが本質的には誠の事を好きですので、心のどこかで嫌われるのが怖かったんでしょうね。それが誠を増長させた理由でもありますが、それを許してきたヒロイン側にも原因はあると思いました。それがこのSchool Daysという作品の本質、全ては誠の事が大好きなヒロイン達の取り合いの物語だったと思っております。取り分け、世界は席が近いというポジションに油断していました。言葉に紹介したのも、誠に褒められたいからで言葉との関係はそのついででした。ですがいざ誠と言葉が付き合ったら、あのキスですからね。ズルいなと思いました。誠をかき乱したのは間違いなく世界、それを誠だけに誠実さを求めるのはちょっと違うかなと思いました。

 対称的に言葉は真っ直ぐなキャラクターでした。言葉は元々人間関係が希薄でしたのでコミュニケーションが苦手でした。相手の言った言葉をそのまま信じ、約束は必ず守られると無条件で信じてました。ですが、実際のところそんな事はありません。人は誰もがあべこべであり、行動と考えている事と言葉が矛盾します。それを知らなかったのが言葉の不幸なのかなと思いました。そんな言葉の気持ちの矛先が世界に向かったのが「鮮血の結末」、矛先が自分に向かったのが「永遠に」でした。まあ、あの時の誠は時と場合をかまわず世界とHしてましたし、言葉もクラスメイトから虐められていましたのでそんな出来事が重なった結果なんだと思います。思うに、恋という物はそもそも自分勝手なものですのでそういう意味では世界の方に共感できると思います。言葉のように真っ直ぐに相手を思えるのは理想、そんな風にも思いました。世界は現実で言葉は理想、そんな対称だったのかなとも思っております。

 ちなみに、自分が一番好きな登場人物は清浦刹那です。どうやら人気投票でも第2位になったみたいですね。何となくそれは当然かなと思いました。何しろ、あのドロドロの榊野学園の中で唯一自分を律し且つ相手への思いやりのある人物なのですから。恋愛は、調子がいい時は気にならないですけどそうでない時は面倒くさいですからね。そんな気持ちすら不誠実かも知れませんけど、それが恋愛だと思います。だからこそ、そんな面倒くさいところをきっと包んでくれるだろう刹那という存在にプレイヤーが傾倒するのは当たり前でした。刹那を失った榊野学園は、皆さんご覧の通りです。結局は、みんな誠の事が好きなんですね。好きだから選ばれたいし結ばれたい、でも誠は1人しかいない、それならもう争うしかありませんもの。そんな、恋愛の本質と学園生活を描いた普通の内容だったのかなと思いました。ありがとうございました。


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