M.M 沙織お嬢様の屈辱




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 7 6 65 〜1 2017/5/8
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<是非あなたにとって一番魅力的に感じる沙織を探し出して欲しいですね。>

 この「沙織お嬢様の屈辱」という作品は同人サークルである「WhiteLily」で制作されたビジュアルノベルです。WhiteLilyさんの作品をプレイしたのは今作が初めてでして、COMITIA120で同人ゲームサークルの島を回っている時に手に取らせて頂きました。COMITIA120にはサークル部活動としてノベルゲーム部が参加している事もあり、他のCOMITIAと比較して同人ノベルゲームサークルの割合が多い印象です。その為ジャンルも大変幅が広く、今回プレイした「沙織お嬢様の屈辱」のような抜きゲーも大変豊富でした。パッケージのイメージ通り、高飛車なお嬢様がどのように屈服されるのか楽しみに思い、レビューに至っております。

 主人公である三沼敦史はどこにでもいる普通の男子学生でした。そして主人公のクラスには、日本でも有数の資産家である倉紅院家の娘である倉紅院沙織がおりました。蝶よ花よと育てられ気品あふれる立ち振る舞いから、自分とは縁のない高嶺の花だと思っていた主人公。ですがそんな気持ちは最悪の形で裏切られることになるのです。突然放課後に沙織から呼び出された主人公。そして教室で裸になれと強要され、無様に射精させられます。そしてそんな姿が学校中に知れ渡ってしまい、当然学校は退学に。両親からも勘当され、若くして祖父の残した家で一人暮らしをする事になりました。人生を滅茶苦茶にされた主人公の、沙織に対する復讐がここから幕を開けるのです。

 この作品の魅力はもう言わずもがな、ヒロインである沙織のあられもない姿そのものですね。冒頭、女王様さながらに主人公をいたぶるSっ気全開の姿を見せてくれます。ですがその後主人公に拉致・監禁されてからの沙織は一変、主人公に媚を売る娼婦のようになってしまいます。このギャップを楽しむのは勿論ですが、拉致・監禁が続いていく中で少しずつ変化していく2人の距離感にも注目ですね。ただ沙織を陵辱してそのまま終わる、勿論そんなエンディングもありますがそれだけではありません。この作品には全部で4つのエンディングが用意されており、その全てにおいて主人公と沙織の関係は微妙に変化しております。是非あなたにとって一番魅力的に感じる沙織を探し出して欲しいですね。

 そして沙織のお嬢様な雰囲気に合わせて、背景やBGMやボイスもまた気品あふれるものに統一されております。特にBGMはピアノを中心とした楽曲が多く、Hシーンの殆どがそうした楽曲で沙織の高貴な雰囲気と豊満な体をより魅力的に引き立てております。また全体として暗い背景のものが多く、この作品が復讐という暗い感情を起点にしている事を物語っております。主人公の復讐という感情と沙織の高貴な雰囲気がどのように混じり合うのか、是非背景やBGMの変化からも感じてみて下さい。

 プレイ時間は私で40分でした。上でも書きましたがこの作品には4つのエンディングが用意されており、それに伴い幾つかの選択肢が用意されております。1周目は20分程度で終わり、その後既読スキップを活用して残り3つのエンディングを合計20分で見終わりました。あっという間に終わってしまいますが、実際プレイ中はそこまで時間の経過を感じませんでしたね。理由は幾つかあると思いますが、プレイ時間に対して圧倒的に多いHシーンの数や選択肢によって明かされる真実と2人の気持ちの変化を追っていったからだと思っております。割とプレイ前とプレイ後で印象が変わる作品だと思いますので、是非全てのエンディングを見てみてください。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<4つのエンディングの先に果たして幸せが待っているのか、それを知っているのは主人公と沙織の2人しかいないのです。>

 復讐なんて陳腐なもの、どのエンディングを辿っても最後には復讐という気持ちは消え失せておりました。自分も沙織も、結局は家という物の中で都合良く動かされるコマに過ぎませんでした。それに気づいたとき、既に主人公に生きる意味はありませんでしたね。ではその後の人生をどうすればいいのか、その結果が4つのエンディングに現れておりました。

 主人公は沙織に辱めを受けた事で人生の舵取りを大きく変更せざるを得なくなりました。ですが、それは逆に言えば三沼家というしがらみから取り払われて自由の身になったという事でもありました。勿論主人公の姿は多くの人の目にとまってしまいましたのでそこからくるマイナスイメージを払拭する事は非常に困難だと思います。ですが時が経ち主人公も年齢を重ねていく事でそうしたイメージは風化され、いつかはやり直せるタイミングが来るかもしれません。その時主人公が持っているものは祖父から受け継いだ莫大な資産。実のところ、主人公の境遇は思ったよりも最悪ではなかったのかも知れません。

 それに対して沙織はどうでしょうか。両親の本当の子供ではない事で忌み嫌われて育った幼少時代。父親の命令でやりたくもなかった陵辱を行わざるを得ない状況から、沙織に自由など殆どなかったのだろうと思っております。海外に留学したのも主人公に対する後ろめたさとは別に、三沼家を混乱させるという役割を果たしてお役御免になった沙織が目障りだったからなのではないでしょうか。全ての行動が家に制限され自分というものを見いだせなかった沙織にとって、同じ資産家であり自由に生きている主人公が羨ましいと思う気持ちがあったのではないかと思います。

 そんなお互いがお互いを違う視点で羨ましく恨めしいと思っていた主人公と沙織、この2人が出会った時に歯車が回り出すのは必然でした。何しろこの2人は合わせ鏡のような存在なのですから。お互いがお互いを常に見つめていたのですから。最終的に復讐という名目を失ってしまった主人公。彼が沙織をどうするかは、もう主人公の気持ち1つで決まりました。沙織と一緒に人生をやり直す結末、沙織を徹底的に奴隷にする結末、沙織と今後一切関わらない結末、沙織の奴隷となり付き従う結末、そのどれもが主人公が望んだ結末であり、沙織が受け入れた結末でもありました。

 もともと沙織には天性の淫乱という素質がありました。また主人公にもSにもMにもなれる素養がありました。皮肉なことに、この2人にはそうした家柄という関係だけではなく体の相性についても抜群の組み合わせでした。何しろ沙織は監禁されて僅か2日で快楽に狂いヨガっていたのですから。これは主人公も夢中になるというものです。家柄とか復讐とか、羨ましいとか恨めしいという気持ちは全て二次的なもの。大切なのはこの2人がお互いをどう思っているかという気持ちだけでした。4つのエンディングの先に幸せが待っているのかは分かりません。知っているのは、主人公と沙織の2人しかいないのです。ありがとうございました。


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