M.M サナララ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 8 8 83 10〜20 2010/2/8
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<テーマ性を重要視しコンパクトにまとめ上げられた内容>

 この「サナララ」は、かつて「銀色」や「みずいろ」で一躍注目を浴びるようになり2001年に代等した「埼玉連合」の一つである「ねこねこソフト」が2005年に世に出した作品です。最近再び息を吹き返したねこねこソフトですが、このあたりから旧ねこねことしての体制が難しくなってきた様子が伺えます。そんな時代の流れの中でいつものねこねこソフトのテイストで書かれた本作ですが、なるほどテーマ性を重要視しながらここまでコンパクトに形に出来るのだなと感心すらしてしまうものでした。

 ねこねこソフトの作品を触れてきた人なら分かるかと思いますが、この作品はこれまでのねこねこソフトの作品と比較してちょっと異色です。まず第一に、タイトルである「サナララ」ですが色の名前ではありません。これまでの作品は「White」「銀色」「みずいろ」「朱〜aka〜」「ラムネ」と全て色の要素が関係していました。ですが今回はそれがありません。それだけでもねこねこソフトに何があった?と思ってしまいます。次に原画家が違います。ねこねこソフトはいつもシナリオが「片岡とも」、原画が「秋乃武彦」、音楽が「ebi」、と全部がそうではないのですがメインはこのメンバーで固定でした。これが変わったあたり何か変革があるなと思いました。ですが、実際プレイしてみてそんな不安は全くなくなりました。むしろ今までのねこねこソフトの雰囲気をのままに新しい要素を加えたような、そんな前向きな変化に思えました。

 シナリオは全部で4章構成のオムニバスであり、それぞれの長さが約2時間と比較的短くなっています。私の最終的に10時間程度ですべてプレイする事が出来ました。この長さのシナリオで一体何を語るのか?と不安に思うかも知れません。ですが、そこがこのサナララの素晴らしいところで、4章のシナリオのどれもがテーマ性をくっきりと主張しながらも綺麗にまとめ上げられたシナリオだったのです。

 世の中にある「大作」と呼ばれる作品は、そのどれもが膨大なテキストと深いテーマ性と感動系です。もちろんそれらのゲームが大作と称されることに異論はありませんに私も大きく評価しています(例えばKey系)。ですが、これはそのゲームに触れる時間が長いことによる愛着や長時間かけてプレイヤーに訴えるテーマ性により、否が応にも評価が高めになってしまうことも事実としてあります。そういう意味で、短いシナリオというのはそれだけでも不利であり、なかなかプレイヤーの印象に残りにくいです。そんな中、この短ささでこれだけしっかりとテーマ性を明示出来る作品はある意味貴重であり、プレイし終わった跡に言い様の無い爽やかな感覚が包んでくれます。

 唯一残念なことがあるとしたら、ちょっと短すぎたのでもっとこのサナララの世界に触れていたいという事ですかね。キャラクターも魅力ですし音楽も雰囲気と相まって良いですし、あっという間に終わったのが残念で仕方がありません。まあ、変に長くするよりもテーマ性をしっかりと主張出来た段階で潔く幕引きをした方が形としては良いのでしょうね。

 とりあえずテーマ性とシナリオの長さについてのみ言及しましたが、それ以外の要素ももちろん高レベルにまとまっています。このあたりの妥協のなさもさすがのねこねこソフトと言わざるをえませんね。初心者の方はもちろん、ある程度作品をこなした方の小休止的な意味合いでも是非プレイしてもらえたらと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<誰にでもチャンスはやってくる。大事なのはそれをどう生かすか。>

 とりあえずやられました。まさか「サナララ色」だったとは思いませんでした。なんだ、ねこねこソフトのゲームは全て色物だったんじゃないですか。まあそのあたりの伏線も面白かったですが、とりあえずこのサナララで主張したった事について触れてみようと思います。

 誰にでも一生に一度願いがかなうチャンスに巡り会える。そんなキャッチフレーズで始まったサナララですが、結局のところチャンスは一生に一度ではなくてそこら辺にたくさん転がっているものなんですね。ですが、自分に自信が持てなかったり過去の失敗を素に前に踏み出せなかったりと、そんな後ろ向きな気持ちが数あるチャンスを無にしているのではないかと思います。実際登場人物のだれもがどこか心に引っかかるものを持っていて折角の一生に一度のチャンスを使えずに尻込みしていました。そうなんですね、チャンスって使おうと思わないと使えないんですね。人から使えと言われても自分の意志でないと使えるものではないです。だからこそ、チャンスを使える人はその後色々と苦労するかと思いますがそれなりの成功を納めることが出来たのです。

 ですが、この「一生に一度のチャンス」というものを「チャンス」にして主人公とヒロインたちは思いを遂げることが出来ました。規約ではナビゲータと対象者の役割が終わればそれまでの記憶が消えるとありました。そうですね、この一生に一度のチャンスも自分の気持ち次第で無きものにすることも生かすことも出来たのです。それには一歩踏み出す勇気が必要でした。それが形になったのが、1章では「腕時計」、2章では「ヘアピン」、3章では「靴ひも」、そして4章では「サナララ」だったのです。不器用ではありますが、それぞれの登場人物が必死になってこの折角巡り合えたチャンスを生かしたい、その思いが成就されたのではないかと思います。

 まあ、シナリオの特性上各章でその重みは違いましたけどね。1章や4章はオーソドックスな内容だったと思います。2章はやや軽めでしたね。そして3章ですが、唯一ハッピーエンドとは言えないような内容でした。確かに三重野涼の思いは成就されたかも知れません。でも、残された高畑は本当に幸せになれたのでしょうか。もしかしたら忘れた方が良かったのかも知れませんね。ですが、きっとこの時の記憶を胸に高畑はこれからたくさん来るであろうチャンスを掴もうと歩みだすと思います。

 さて、ここでちょっと考えたいのは私たちの身の周りにもチャンスというものはきっとたくさんあるという事です。大きなことなんか出きなくても慎ましく平凡に生きていたい、大きな変革なんか望んでいない、そんな事を思っている私ですがそれはもしかしたら折角のチャンスを潰しているのかも知れませんね。確かにチャンスを掴んで行動しようと思えばそれだけ労力も時間もお金も掛かるかも知れません。ですが、一度手を話したチャンスはもう二度と帰ってくることはありません。そう考えると、たまにはちょっと頑張ってどうでもいいチャンスでも何か行動してみようかとか思ってしまうわけです。この物語は、きっとそんな事を言いたかったのかも知れません。

 まとめます。チャンスというものをテーマに繰り広げられたシナリオはコンパクトで綺麗にまとまっており、非常に親しみやすかったです。欲を言えば、もっとこの世界に浸っていたかったくらいですが、このテーマ性が言うにチャンスはそこら辺にあるから掴んでこいといったメッセージだったのでしょう。楽しかったです。


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