M.M 最期の一葉
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
4 | 8 | - | 61 | 〜1 | 2020/1/1 |
作品ページ(無し) | サークルページ(Twitterアカウント) |
<もし自分の命が残り一週間だったらどう生きるか、そんな事を考えながら彼らの生き様を見てみて下さい。>
この「最期の一葉」は同人ゲームサークルである「夕暮れ☆めろんぱん」で制作されたビジュアルノベルです。夕暮れ☆めろんぱんさんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けはC97で同人ゲームサークルの島を回った事でした。正直言いまして、一目見てパッケージに惚れてしまいました。夕暮れの海に佇む儚げな印象の少女、そしてあらすじを読むと一週間後に隕石が落ちて地球が滅ぶらしいです。こんな終末感をストレートに押し出してますので、どのようなシナリオになるのか想像が一気に広がりました。パッケージの女の子が何を抱えているのか、どんなエンディングになるのか楽しみにしてプレイしております。
主人公である城月湊人は、とある出来事から夢を失い怠惰に生きている学生でした。そんな湊人ですので一週間後に隕石が落ちるという話を聞いても特別取り乱す事無く、特に意味もなく普通に学校に通おうとしておりました。一週間後に地球が滅びますので当然学校などやっている筈がありませんし、校舎の中に入っても誰もいる筈がありません。ですが、教室に一人の女の子が立っていたのです。彼女の名前は相ケ瀬一葉、一葉は血液の病気を患っており余命一ヶ月と宣告されておりました。そんな2人による、たった一週間の日々がこの時から幕を開けます。
この作品は、正直ネタバレ有りのレビューは必要ないのかも知れません。何故なら、もうあらすじだけでこの作品の結末が分かってしまっているからです。主人公とヒロインがどんな一週間を過ごしても、地球は滅んでしまうのです。2人が何を残しても、何を約束しても、それも全て消えてなくなってしまいます。儚いですし寂しいですね、それだったら隕石が落ちる一週間をどう過ごしても意味は無いのでしょうか。そんな事はありませんね。何故なら、意味があるかどうかを決めるのは他人ではなく他ならぬ自分自身だからです。もし自分の命があと一週間で消えてなくなる運命だったとしたら、そんな風に主人公とヒロインの物語を読みながら自分だったらどう過ごすかを考えながら読んで頂ければと思います。
最大の魅力はヒロインである一葉ですね。血液の病気を患っており余命一ヶ月と宣言されているとは思えない天真爛漫っぷりを見せてくれます。何事にも素直であり、決して卑屈になる事が無い振る舞いは周りにいる全ての人を笑顔にしてくれます。そしてちゃんと自分の病状を理解しており、その上て人生を楽しもうとする姿勢が素晴らしいと思いました。面白かったのは生クリームでした。一葉は生クリームが好きなのですが、それを直飲みする位なのです。そしてそれがちゃんと立ち絵で表現されている、拘りを感じましたね。そんな彼女の生き方に、何かしら学ぶものがあると思います。例え残り一週間の人生でも一ヶ月の人生でも何十年も続く人生でも、その時その時の生き方は変わりないという事を思いました。一葉というヒロインが、間違いなくこの作品を動かしております。
プレイ時間は私で30分くらいでした。選択肢も無く、あっという間に終わってしまいました。この作品は地球滅亡までの一週間における、とある男女の生き様を描いた作品です。それ以外の要素も極力排除し2人だけの世界を表現しております。だからこそ素直でありストレートにプレイヤーに言いたい事を伝えてくれます。もしかしたら、作中では語られない背後要因など沢山あるのかも知れません。そしてそれを丁寧に描く事でまた味わい深いものになるのかも知れません。もっとこの雰囲気を味わいたいと思いつつ、この位コンパクトなまとまりでも良かったのかなと振り返っております。短いプレイ時間の中に人生観をギッチリ詰めた、言葉通りたった一週間の人生を生き抜いた姿から何かを感じてみて下さい。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<いつかやって来る死に備えて、自分の幸せはちゃんと考えて追及するべきだと思いました。>
ネタバレ無しでも書きましたが、終わりが決まってますので後は彼ら2人がどんな生き方をするのかに興味がありました。後悔するもしないも全てに意味がある、そんなガムシャラな一週間を楽しませて頂きました。それでも叶えたかったのは普遍的な事だけでした。普通に学校に通って普通に恋をするだけ、それが叶って本当に良かったと思っております。
本当一葉は良いヒロインだなと思いました。特に生クリーム好きなところと病人ジョークを言うところが大好きでした。もう完全に自分の運命を受け入れて、その上て楽しもうとする姿勢が素敵でした。体育祭をしようと自分で言いながら運動できるかと訊いた陀「できません!」と自信満々に言ったり、そして神社で世界中の人の幸せを願ったり、本当こんな聖人がいるのかと思うほどでした。もしかしたら、もう一週間しか無いのだから無理しているのかも知れませんし良い人になりたいだけなのかも知れません。むしろそれが普通でありそれでも全然構わないと思いました。ですけど、彼女の場合はきっと違いますね。元々余命一ヶ月と宣告されていましたので、きっとこういう準備をしていたのだと思います。彼女の言葉一つ一つは自然な気持ちの表れ、それが伝わるテキストと演出でした。
そしてそんな一葉に真剣に向き合う湊人にも好感を持てました。元々夢を失って怠惰に生きてきた湊人でしたが、それでも完全に夢を諦めた訳ではなくどこか燻ぶった想いを持っておりました。ですがどこか吹っ切れる事が出来ず、このまま何かをしてもしなくてもどうせ終わるから良いかなと思っていたのかも知れません。だからこそ、本当に一葉には感謝しているのだと思います。一葉がいたから、父親の秘めた想いに気付く事が出来ました。一葉がいたから、他人に対して真剣に思う気持ちに気付く事が出来ました。一葉がいたから、最期楽しく幸せに終える事が出来ました。それも全て、ちゃんと一葉に向き合い自分で考えて選択したからだと思っております。卒業証書に書かれていた「あなたは全力で生涯を生き抜きました。お疲れさまでした。」に、精一杯の気持ちが詰まっていると分かりましたからね。「結婚しちゃう?」という言葉に「いいぞ」と直ぐ返事出来たのも、ちゃんと準備していたからだと思います。本当、湊人は一葉に会えて良かったですし一葉は湊人に会えて良かったと思っております。
きっと外から見たら残り少ない人生で悪あがきをしているだけに見えるかも知れません。そんな事をしても無駄だと思うかも知れません。ですが、そんな人の言葉なんてどこ吹く風ですね。大事なのは自分の人生は自分が決めるという事、そしていつかやってくる死の前に幸せになれるかだと思いました。私は素直に湊人と一葉が羨ましいと思いました。恋人がいるとか結婚するとかではなく、自分なりの幸せはやはり考えて追及するべきだなと改めて思いました。素敵な物語をありがとうございました。