M.M 探シモノ
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
4 | 6 | - | 58 | 〜1 | 2019/6/30 |
作品ページ(なし) | サークルページ |
<全てのエンディングと全てのおまけ要素を見るまで、きっと探シモノは見つからないと思います。>
この「探シモノ」という作品は、同人サークルである「g^2(読み方はジーツー)」で制作されたビジュアルノベルです。g^2さんの作品をプレイするのは今作が初めてで、知った切っ掛けはCOMITIA128で同人ゲームの島サークルを周っている時でした。探シモノというシンプルなタイトルに、どこか古い屋敷を連想させる重そうな扉が映っているジャケットでした。間違いなく伝奇ものだなと思いました。ですがそれ以上の情報はここからは引き出せません。こういうものは買ってプレイしてみるのが一番です。探シモノの正体を求めて、いそいそとプレイしてみました。
主人公である久世暁斗(くぜあきと)はどこにでもいる普通の学生です。暁斗には穂積京香(ほづみきょうか)という幼馴染がいました。京香は山登りが好きで、この日も暁斗と一緒に山登りに来ていました。ですが、途中で急な雨が降り加えて遭難してしまいます。途方に暮れた2人ですが、たまたま見つけた屋敷で雨宿りさせてもらえることになりました。その屋敷は大変広いのですが2人しか住んでませんでした。どこか暗い雰囲気漂う屋敷を調べていく中で、2人はこの屋敷に隠された秘密に出会う事になるのです。
この作品を包み込む雰囲気は、一言で言えば不気味です。全体的に暗い屋敷の色合いに、何かを隠しているかのような屋敷の住人達、そしていつまでも止まない雨、不安な気持ちが2人を包んでいきます。それでも、冷静な暁斗と明るい京香の存在が場を盛り上げてくれます。そして、屋敷の中を調べたり住人に話を聴いていく内に少しずつこの屋敷の謎と言いますか何か隠している様子に気が付くのです。それが探シモノの正体なのかは、是非皆さんの目で確認してみて下さい。何か切っ掛けが無ければ屋敷の外に出る事は出来ません。それが良いものか悪いものかも、プレイして見なければ分からないのです。
システム周りですが、やや不便さを感じました。私のPCだからなのか分かりませんが、左クリックが効きませんでした。その為テキストはエンターキーを押す事で進めました。また、既読スキップがありません。この作品には幾つかの選択肢があるのですが、既読スキップが無い関係で安易にテキストを飛ばせませんのでフラグ管理に時間を費やしました。その他の要素で、BGMは場面にあったものを使用しておりましたが、和風のテイストでありながらBGMの種類は様々で少しごった煮な感覚を覚えました。これもまたこの作品の特徴だと思いました。
プレイ時間は私で45分でした。この作品には複数のエンディングがあるのですが、それと同時におまけ要素がどんどん解禁していきます。解禁されたおまけ要素によって後日談や別視点でのシナリオを読む事が出来まして、ここまで来て初めて探シモノという作品の全貌が分かりました。是非全てのエンディングを確認し全てのおまけ要素を見て欲しいですね。プレイ時間に対して選択肢の数は多く感じましたが、そもそも絶対時間が短いので全てのエンディングを見るのにそこまで苦労しないと思います。全てのエンディングを見る頃には、何だかんだで登場人物に愛着を持っているのではないでしょうか。そんな作品でした。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
<伝奇ものなどではない、1人の少女の素直な想いがこの作品を動かしておりました。>
最後までプレイし終わるまで、この作品はどこかに絶対伝奇要素があるなと思い込んでました。これだけ不気味な雰囲気、どこか人を寄せ付けない屋敷の様子、隠された何か、それで何もないとは思えませんでした。ですが、その先に待っていたのは、両親に見捨てられた少女のあどけない様子でした。その少女を守るために、宇都宮さんも藤林さんもこの屋敷に居続けたんですね。
九条家の実態については多くは語られてませんでしたが、随分と血筋と伝統を守ったお堅い一族だなという印象を持ちました。何故なら、ちょっと髪の色が違うだけの九条光莉を、屋敷の外に出さずずっと離れで生活させていたからです。頻繁に会いに来てくれた両親もいつの間にか寄り付かなくなり、気が付いたら宇都宮さんと藤林さんしか傍にいませんでした。ですが逆に言えば光莉には2人が必ず傍にいたのです。まだ、それだけでも十分幸せだったのかも知れません。私は人の境遇を可哀相と思う事が嫌いです。光莉は慎ましくも幸せな生活を送っておりました。
そんな光莉ですので、来客という存在は当然珍しい事この上ありません。ましてや、暁斗は異性ですので光莉が人一倍関心を持つのは当たり前だと思いました。ですが、人前に姿を見せる事を禁じられてましたので光莉は暁斗とお話する事が出来ません。だからこそ、光莉が帯を落としたりして気を引く様子が印象的でした。結果としてそれが功を奏し、暁斗は光莉を見つける事が出来ました。後は、どれだけ信頼関係を築けるかだけでした。藤林さんも、本当は光莉と仲良くしてくれる人を待っておりました。暁斗が光莉と仲良くしてくれると信じれたからこそ、藤林さんは暁斗を受け入れる事にしたのだと思いました。
そしてここまで来れば、後は暁斗の問題でした。言ってしまえば、この屋敷に留まるのか出て行くのかです。それはイコール光莉を選ぶか京香を選ぶかの選択でした。作品としては京香を選んだエンディングがトゥルーエンドといった印象でしたが、光莉を選んだエンディングもバッドエンドではありませんでした。この辺りは、プレイヤー次第かも知れませんね。好みで考えて良いと思います。おまけ要素を見て、どっちのエンディングもそれなりに幸せな展開になってましたので正直ホッとしました。これが、探シモノの正体だったのかも知れません。
全体として短いながらも、一人ひとりの性格と求めるものが伝わるシナリオでした。ですが流石にちょっと短か過ぎたかも知れません。もっと屋敷での生活を読んでみたかったですし、登場人物の心理描写も読んでみたかったです。後は何よりも九条家についてもっと深掘りして欲しかったなと思いました。そもそもこの屋敷は何なのか、光莉はどのような立場だったのか、その辺も知りたいと思いました。もし次回作などで再びこの探シモノの世界観に触れる事が出来ればと、そんな事を思いました。ありがとうございました。