M.M 12の月のイヴ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 8 7 87 13〜15 2014/2/5
作品ページ(R-18注意) ブランドページ



<これまでのminoriで培った表現力をフルに活かした、18禁だからこそ表現できる愛の物語>

 この「12の月のイヴ」という作品は「ef - a fairy tale of the two.」や「夏空のペルセウス」などで有名な「minori」で制作されたビジュアルノベルです。minoriの作品はとりあえず背景描写とBGMの美しさについては全てのプレイヤーが舌を巻くところだと思うのですが、それ以上にメーカーとプレイヤーとの距離感が近い事が最大の魅力だと思っております。全国巡礼や各種イベントでの対応は丁寧というよりも精力的ですし、ニコ生で展開される歯に衣着せぬ物言いは他のメーカーでは中々真似出来ない営業活動だと思います。最近は巨乳メーカーとしての地位も確立しており、上で書いた夏空のペルセウスの巨乳はエロさにプラスして名画のような美しさすら覚えました。そんなminoriの新作がこの「12の月のイヴ」という事で何も考えずに予約した訳ですが、期待を裏切らない美しさと何よりも18禁だからこそ表現できる物語に感動しました。

 この作品はタイトルの通りクリスマスイブの季節を舞台とした学園ものです。主人公である降旗直人がとある不思議な少女と出会うところから物語がスタートします。ヒロインは全部で3人でそれぞれがぞれぞれの形で主人公に対する想いを持っており、その想いが交差する時に物語は大きく動いていきます。想いが交差する切っ掛けは勿論この不思議な少女であり、主人公はこれまでどこか目をつむってきた事実と向き合いながら正しい答えを求めて奮闘することになります。とまああらすじだけを読めば割とありがちな内容ですので魅力が伝わりにくいですが、最大の魅力はこの物語が18禁だからこそ表現できるものであるという事です。具体的に言えば男女の恋愛に欠かせない性描写をしっかりとシナリオに取り込み、物語への説得力を獲得している事ですね。年頃の男女ですからプラトニックな関係だけでは納まりが付くはずがありません。そんな生々しさをリアルに感じられながら唯のエロゲーになっていないシナリオはなかなかお目にかかることが出来るものではありませんでした。

 そしてヒロインの立ち絵をご覧になれば分かりますが、もう清々しいほどの巨乳ですね。この流れは夏空のペルセウスと同様であり、minoriの巨乳はもはや芸術なのではないかと思っております。勿論これ程の巨乳ですのでHシーンも期待通りです。やっぱり18禁ゲームですからね。エロいものはとことんエロい方が良いに決まってますし、そういった部分を強烈にアピールする事でシナリオへの本気度も感じる事ができます。よく「シナリオ重視なゲームにエロはいらない」とか言う人がいますが、そんな人ほど読んで欲しいシナリオですね。あっても無くても良いエロではなくしっかりとシナリオに必須であるエロを是非堪能して欲しいと思います。

 後はいつもの通り背景描写とBGMの美しさは流石といったところです。クリスマスイブという事でイルミネーションに輝く街や澄んだ空気の夜空など冬の都会らしい背景が描かれているのですが、まあ塗りが細かくて綺麗ですね。この作品、1枚の背景画だけでどれくらいの時間を要しているのか本当に知りたいです。BGMは天門さんのピアノを中心とした透明感のある曲が多いですね。これはefの時からのお気に入りでして、聖なる夜らしい雰囲気を演出してくれます。初回限定盤はサントラも付いてきますので私のようにBGMを大切にしている人にとっては最高の特典でした。そして個人的に魅力に思ったのはヒロインのアップの絵がよく登場するということです。背景が美しければ当然ヒロインも可愛いに決まってます。そんな魅力あるヒロインのコロコロ変わる表情がアップで見れますので、必然的に引き込まれると思いますね。可愛いというかもはや愛しいです。

 という訳で背景やBGMの美しさやヒロインの巨乳っぷりはこれまでのminoriでもお目にかかる事が出来た訳ですが、この「12の月のイヴ」はそれに加えて18禁だからこそ表現できるシナリオも味わう事ができます。公式HPでも書いておりますが、これまでminoriが培ってきた表現力をフルに使った愛の物語があなたを待っております。minoriの作品をプレイしたことがある方はもちろん、これまでプレイした事がない方にも大変オススメです。ちなみに私でプレイ時間は13〜15時間程度でした。長すぎず短すぎない文章量ですので忙しい人でも十分楽しめます。後はあれですね、18禁だからこそ表現できる愛の物語ですので、出来るならプレイヤーの方にはシナリオの区切りのいいところでは是非小休止を取り、登場人物達の心情を自身の心に染み込ませてからリスタートして欲しいですね。時間いっぱい使って是非minoriの本気を味わって下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<愛の形はそれぞれであり、そこに気付く事が出来たからこそ2人にとって永遠のものになったと思っております>

 素直に感動しました。登場人物達の健気で一生懸命な想いがストレートに伝わりました。お互いがお互いを想いながらも実現できない現実に苦しみながらも、運命に抗って本当に手に入れたいものを手に入れようとする姿は唯々応援したくなりました。思春期の男女らしい純粋な心と体のぶつかり合いはそれだけでエネルギーがあり、この作品に対するminoriの本気を感じることが出来ました。

 この作品に登場する人物はみな他人思いの優しい人ばかりでした。ですがその優しさは実際は自己愛の裏返しであり、本当の意味で相手の為に行動している訳ではありませんでした。記憶を失う前のみずかは始めは唯自分の存在が無くなってしまう事を嘆くばかりで新しく生まれたみずかに嫉妬ばかりしてました。杏鈴も3人で変わらない関係でいたいと思いながら直人を愛してしまい、家族と恋愛の狭間で苦しみました。由紀に至ってはもう自分の命が掛かってますからね。短命である事を受け入れながらもよくもあそこまで明るく振る舞えたと思っております。それぞれが自分の気持ちと向き合い相手の気持ちを想像することで、お互いが持っていたモヤモヤが解消され本当の意味で歩みだすことが出来たのかなと思っております。

 思い返せば全員が悩みながらも一歩一歩前に進む様子が丁寧に描かれておりました。特に主人公については正直なところ始めは煮えきれない性格で何なんだよと思ってましたが、確実に自分の気持ちにケリをつけてしっかりとヒロインと向き合っていく姿に徐々に好感を持てました。学生らしい成長物語でそれぞれのEDでは大変スッキリとすることが出来ました。愛の形はそれぞれあり、そこに気が付くことが出来たからこそ2人にとってその愛は永遠のものになったのかなと思っております。

 そしてやっぱり一番心が動かされたのは由紀のシナリオでした。父親なのか恋人なのかというありえない状況に戸惑いながらも不器用に愛し合っていく2人はハラハラしながらも温かく見守ることができました。それは由紀だけでなく直人も同様でしたが、最後には恋人として愛する決心をしてくれました。ですがそんな愛する恋人を救うことが出来ない無力感に苛まれる直人の姿は見ていられない重さがありました。目の前にいる愛しい人の命がどうしようもなく弱っていく、自分という存在が無意味なものと思っても仕方がないと思いましたね。ですがそんな直人を支えたのは他ではない由紀であり、由紀の「ずっと一緒に生きていこう」の一言は私的に涙腺崩壊の最大点でした。ああ、強いなと思いましたね。命が短いことを受け入れてそれでも愛する人との時間を大切にすると決めた由紀と直人の決意、強かったです。これだけ愛せる人と巡り会えるなんてこの2人は幸せですね。18禁だからこそ描ける愛の形なんて陳腐なセリフだと当初は思ってましたが、本当にそんな物があるんだなと本気で思いました。

 実際のところループしている事はある程度予想通りでした。その分衝撃は少なかったですが同時にどのようにこのループを解決するのかというところに注目してました。正直直人が過去に向かい橋の上でリスタートをきってからの展開は思いのほかサラッと流して最後の再開の場面に展開してましたのでちょっとだけ拍子抜けに思いましたが、まああれはあれで良かったのかも知れません。研究に苦悩する姿や周りの人から変人扱いされる姿も見てみたい気はしましたが、そこを細かく書くと確かに愛の物語というテーマからブレてしまうかも知れませんからね。あそこでクレジットが入る演出も見事だと思いました。長い長い輪廻から脱出し病を克服した2人に怖いものは無いでしょう。これからも2人愛し合いながら幸せな生活を営むことを切に願うばかりです。

 とにかくminoriらしい背景やBGMの美しさと巨乳ヒロインのエロさを全面に出した愛のあるシナリオは良くまとまっておりいつまでも浸っていたい気持ちになりました。18禁のゲームをやってて良かったなと久しぶりに心から思うことができました。このような作品がこれからも世の中に出てくれる事を切に願うばかりです。ありがとうございました。


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