M.M 六迷雪華
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
5 | 6 | - | B | 1〜2 | 2017/8/16 |
作品ページ | サークルページ |
<いつも通りの大正浪漫な雰囲気とメインキャラクターの掛け合いに安心感を覚えます。>
この「六迷雪華(読み方はろくめいせっか)」は同人サークルである「YUKIRINS」で制作されたビジュアルノベルです。YUKIRINSさんは「大正浪漫ミステリー」というシリーズ物を連載しており、これまで「石榴の時計」「蝶々髑髏」「華焔櫻」と番外編である「君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ」をリリースしております。これらのタイトルは全て同じ舞台同じ登場人物であり、差し当たり1話完結で終わるミステリードラマの様なものです。それぞれのタイトルで事件が起こり、それを登場人物と共にプレイヤーであるアナタが解決していくのです。大正時代という歴史的背景に忠実でありながら、一筋縄ではいかないミステリーに私も毎回苦戦させられております。
今回レビューしている「六迷雪華」は、大正浪漫シリーズにおける2つ目の番外編となっております。時間軸としましては最新作である「華焔櫻」の続きでして、タイトルにあります通り雪が降りしきる冬が舞台となっております。番外編ということでボリュームは決して多くはありません。代わりに過去作をプレイしているとプレイしていないとで受ける印象が変わると思います。公式HPでも話されてましたが、可能であれば「石榴の時計」と「君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ」はあらかじめプレイして欲しいですね。プレイしていなくても謎解きは出来ますが、メインキャラクターのパーソナリティやセリフに見え隠れするネタが分かりますのでより楽しめると思います。
大正浪漫シリーズの魅力は、上でも書きましたが大正時代という舞台背景を丁寧に描いたテキストと個性的なメインキャラクターの掛け合いにあると思っております。明治時代でも昭和初期でもなく大正時代、それを当時使っていた言葉や道具・身分制度や学校の常識などを交えてリアルに再現しております。特に大正時代は西洋の文化が民衆に浸透し始めていた時代、外国の食べ物や着る物に敏感な様子が丁寧でした。メインキャラクターは、主人公である香山理穂子・探偵である紫藤直樹・女中である七瀬八重・理穂子の婚約者である遠野高志といったレギュラーメンバーは皆出演します。そして理穂子の天真爛漫な様子・紫藤の素っ気ない様子・八重さんの最強な様子・遠野の熱血漢な様子も変わらずで、これだけで過去作をプレイされた方は安心感を覚えると思います。
プレイ時間は私で1時間30分程度掛かりました。過去作と比べて本当に短いです。ゲストキャラも2名しかおらず、推理もそこまで難しいものではありません。それでも久しぶりの大正浪漫ミステリーシリーズに懐かしさを覚え、その雰囲気を楽しませて頂きました。探偵紫藤直樹とその助手である香山理穂子がいればどんな事件でも解決できる、そう思わせてくれる安心感があります。さて、今回の事件では誰が犠牲者で誰が犯人でしょうか?是非皆さん一人一人が状況を見極めながら読み進めて頂ければと思います。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<理穂子や八重さん、彼女たちの事を知り尽くした紫藤直樹だからこそ簡単に解き明かす事が出来たんですね。>
正直な話、ここまで本格的に番外編だとは思いませんでした。何しろ誰も死んでないのですから。それどころか何も取られませんでしたし怪我一つしませんでしたからね。本当にキャラクターの魅力で押し切った内容でした。まさに番外編、本当にファンの方の為に作られた内容だったと思いました。
今回の事件(?)、ある意味なるべくしてなったと言えるかも知れません。天真爛漫で活発な理穂子、そんな彼女がちょっとした好奇心で主人の寝室に入ることは十分想定されました。そしてたまたま空いていた窓を閉めるという行動も決して珍しい事はありませんでした。そしてそんな理穂子をよく知っている八重さんが、効率よく2階を廻り理穂子を探すのも想定済でした。唯でさえ停電しておりますので、細かく探すくらいなら大雑把に心当たりのある部屋全体を回ったほうが良い、この判断も八重さんらしさでした。そしてそんな理穂子と八重さんの人柄を知っているからこそ、紫藤は簡単に理穂子の居場所を掴めたのだと思います。起きるべくじて起きた事件(?)、だからこそ解決するのも簡単でしたね。
それでも、理穂子が簡単に取り乱さない様子が立派だったなと思いました。停電になり、暖を取ることも出来ず心細さはそれなりにあったと思います。それでも八重さんがきっと探しに来てくれる、それを信じていたからおとなしく待つ事が出来たのだと思います。また作中では「不運を嘆くよりも、苦難に立ち向かえ」という父親のセリフも紹介されました。これが事件であれば理穂子は立ち向かったのだと思います。ですが、今回は事件ではありません。ちょっとした偶然で起きた事故でした。それが分かっていたのでしょう。嘆いたり騒いだりせずおとなしく待つ、それが今回の理穂子の戦い方だったのかなと思っております。
それにしても、有野屋修平は紛らわしいですね。まあ元々こういう性格ですので仕方がないのですけど、こういうキャラクター1人いるだけで自分の推理が本当に正しいのか自身を失ってしまいます。まあ、彼は究極的に疑わしいですけど嘘は付きませんので初めから犯人とは思ってませんでしたけどね。そして新キャラのクーパー・ドナルド・ジェイコブソン、唯一の新キャラですので何らかの形で事件(?)に絡んでくると思いましたが、そんな事はありませんでしたね。むしろ、今後の紫藤直樹の探偵業に大きく関わってくる気がします。帰化したクーパーとそうではない紫藤直樹、この対比も気になるところでした。
そんな感じの「六迷雪華」でした。元々C92で入手した時にサークルさんから「今回は番外編だからそうでもないですよ〜」ってお話を聞いてましたので、割と軽い心持ちでプレイ始めました。だとしてもここまで軽い内容だとは思いませんでした。それでもいつもの大正浪漫シリーズが見れて十分満足でした。推理もオチも楽しかったです。いつものしどうくんも見れました。そして次回に向けた布石も投げられました。次は再び長編のミステリーが待っているのでしょうか?その時は、しっかりと腰を据えてプレイしないといけませんね。楽しみにしたいと思います。