M.M RiddLe -リドル-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 6 2 75 〜1 2017/11/13
作品ページ(無し) サークルページ(Twitter)



<シナリオと謎解きの両面でミステリーを味わえる、非常に爽やかな気持ちになれる作品です。>

 この「RiddLe -リドル-」は同人ゲームサークルである「.freeks」で制作されたビジュアルノベルです。.freeksさんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けはC92で島サークルを回っている時でした。私は基本コミケ等の即売会では全ての島サークルをなぞるのですが、当然全ての作品を購入できるはずもなく実際に購入するのは自分の中の触覚が動いた作品と出会った時です。今回.freeksさんの作品で触覚が動いた理由、それは1枚の中に2タイトル収録されているというお得感でした。すみません、作品の中身という訳ではありませんでした。それでもこれも1つの縁でありますし、お手軽に出来そうな雰囲気を感じましたのでスキマ時間を見つけてプレイしてみました。今回レビューしている「RiddLe -リドル-」は2タイトルのうちノベルゲームの方です。もう1タイトルはRPGのプロトタイプみたいですので完成版が楽しみですね。

 主人公である篠塚真斗は何処にでもいる普通の男子高校生です。真斗の特徴は省エネ思考である事です。何をするにも効率を優先して、無駄なことや面倒くさい事は避ける傾向にあります。この日も真斗は煩い教室棟の屋上ではなく静かな文化棟の屋上で1人お昼を食べにやってきました。ですが、そこにいたのは好奇心旺盛で快活な同級生である華怜でした。面倒くさい事が嫌いな真斗にとって華怜はまさに水と油の関係です。それでも口うるさく誘ってくる華怜を邪険にしつつも付き合っている辺り、きっと根は良いやつなんですね。そして華怜が真斗を誘った理由、それは学園の七不思議を解き明かすというものでした。高校生である真斗にとって子供の遊びの様な誘いですが、これが不思議なミステリーの世界への幕開けだったのです。

 タイトルである「Riddle」とは日本語で「謎」という意味です。まさにタイトルの通りで、この作品はシナリオもシステムもミステリーとなっております。シナリオがミステリーなだけではなく、実際にプレイヤーが提示された謎を解いていくのです。構成としてはノベルパートと謎解きパートが存在し、それを交互にこなしながら七不思議の真実へと迫っていきます。基本的には華怜がリードしてそれを真斗がアシストする感じです。シャーロック・ホームズで言うところのホームズとワトソンですね。このアンバランスな2人組の関係が地味に絶妙で、早過ぎずゆっくり過ぎずシナリオが進んでいきます。私にとってとてもテンポの良いシナリオ展開でした。

 そして謎解きパートですが、正直難易度は低いです。与えられた謎を解かないと先に進めませんが、分からない人の為にヒントも用意しております。まずはノーヒントで挑んでみて下さい。分からなくてヒントを読んでもペナルティはありませんでした。ちなみに難易度は低いと言いつつも、それなりに作業は行います。閃いてそれで終わりというなぞなぞではなく、そこから解くまでにある程度時間は掛かるのです。この手順を踏む辺りが実際に登場人物と一緒に謎を解いているようで楽しかったですね。答えは載せません。是非自力で解いてみてください。

 プレイ時間は私で45分くらいでした。選択肢はなく、純粋にシナリオと謎解きを楽しむ事が出来ました。シナリオ上のネタバレになりますのでここでは伏せますが、プレイ後にとても爽やかな気持ちになれました。ミステリーを解いた爽快感と合わせてエンディングを迎えた時に何とも言えない気持ちよさに包まれたのです。ここまで読後感の良い作品はそうないかも知れません。1時間未満という短いプレイ時間ながらも話としてまとまっており、謎解きも合わせて楽しい時間を過ごせました。現在通販やダウンロードは行っていないようですので、是非イベント等でお見かけしたら手に取ってみて下さい。かなりオススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<どのキャラクターにも好感が持てる。それが爽やかさの理由ですねきっと。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、本当に爽やかな気持ちになれる作品でした。冒頭真斗と華怜の出会いはスムーズでしたし、そこから勢いで真斗を引っ張る華怜という構図は2人のキャラクターを分かり易く提示しておりました。そして謎解きも閃きは一瞬で、後はゴールに向かって着実に進んでいく感覚が「自分で謎を解いている!」感を演出しておりました。そして七不思議の真相とエンディング、素晴らしい構成だと思いました。

 ミステリーにおいて大切な事、それはプレイヤーに疑問を持たせない事だと思っております。どんなに難しい謎でも、深く複雑な真実が待っていたとしても、最終的にそれが提示されて解決すれば良いと思っております。そういう意味で、この作品の真相は実に呆気ないものでした。何しろ、七不思議というものそのものが作られたものでしたからね。しかも作られた理由が無くなってしまう写真部を存続させるためという健気なものでしたからね。何だか肩の力が抜けたと言いますか、ホッとした気持ちになりました。そしてそれを仕掛けた先生が今でも現役で残っていましたからね。いつか生徒が解き明かしてくれる事を信じて何年も待っているなんて、子供心があってとても好感が持てました。始めは悪い意味で事件の黒幕だと思ってました。黒幕は黒幕でしたが、それが子供心によるものであると分かってある意味安心しました。

 それでも、あの赤い部屋には正直ビビりました。まさか本当に部屋を赤くしてしかも酢酸の匂いをチラつかせて本物そっくりの腕をぶら下げるなんて思いませんでした。おお、これは本物か?って思いましたからね。あの瞬間の為の謎解きだったんですね。そしてその後ネタばらしがあって、それでも泣いてしまった華怜は可愛すぎですね。あれだけ好奇心旺盛で怖いもの知らずだと思っていたら、泣いてしまうんですもの。私、この華怜こそ本当のツンデレだと思うんです。普段ツンツンと言いますか勝気なところを見せておいていざという時に泣いてしまう、これは誰でも惚れてしまいますよ。ますます華怜の事が好きになりました。

 そしてそんな華怜が先生にお願いしたのが、モノでもお金でもなく夜の屋上に行きたいですからね。とてもロマンチックです。そして、真斗に言った言葉が「ーーこれからも、二人で一緒に楽しいことを探しませんか?」ですよ。告白するでもなく、友達としてこれからも一緒に居ましょうです。なんて爽やかで甘酸っぱいんでしょう!真斗もキザる事なく華怜を受け入れて付き合いますからね。潔くてカッコ良い主人公だと思いました。これからもこの2人は仲良く謎解きを楽しんでいくのでしょうね。もしかしたら付き合うのかも知れません。それでも全然嫉妬心が湧きません、嫉妬心どころが爽やかさしかありません。こんなに読後感の良い作品はなかなか有りませんね。

 ここからは蛇足ですが、セリフの回収や謎解きパートの検証でもう一度始めからプレイしてみました。そしてこの時は既読スキップで読んでました。私、ここで初めて気づきました。先生、立ち絵は2パターンあったんですね!この事に気づいて、ちょっと笑ってしまいました。先生可愛いって思いました。もしかしたら、この作品の一番の萌えキャラは先生かも知れませんね。誰も解いてくれない謎かけを解いてくれるまで何年も待つ、写真部にあんな赤い部屋を用意する、そして夜中一人で部室で篠塚と宮園が来るのを待ってる、どれだけお茶目なんですかね!どのキャラクターにも好感が持てる、これも爽やかさの理由かも知れませんね。楽しかったです、ありがとうございました。


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