M.M Revelation




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 2 - 61 2〜3 2017/12/21
作品ページ サークルページ



<魅力的な登場人物と設定なだけに、システム周りで損しているのが本当に勿体無い。>

 この「Revelation」は同人ゲームサークルである「unlimited」で制作されたビジュアルノベルです。unlimitedさんの作品をプレイしたのは今作が初めてでして、切っ掛けはC92で島サークルを回っている時でした。コミケにおいて、同人ビジュアルノベルの中で実は取り扱っているジャンルによってサークルがまとまっております。とりわけサスペンスを制作しているサークルさんは比較的多く、島サークルを回っていると「お、サスペンスの島に来たな」なんて思ったりします。そんなサスペンスの中でも今回レビューしている「Revelation」は一際印象に残るジャケットでした。パッケージこそトールケースではありませんでしたが、ハードボイルドを感じさせる登場人物の絵柄に血と銃の香りを感じました。サスペンスと同時にドラマティックな展開も期待し、今回のレビューに至っております。

 舞台は新宿の歌舞伎町です。ある日、歌舞伎町の病院に合法ドラッグでショックを起こした患者が運ばれました。その患者は心肺停止しており、誰もが生き返ることを諦めておりました。ですが、奇跡的にもその患者は生き返ったのです。ですが、生き返ったのにも関わらずその体には死斑が現れており、周りの人を無差別に襲い出しました。それはまるでゾンビの様。そんな事件を、主人公である松永慎一警部補が調査を始めました。一方、この世界にはCold Bloodと呼ばれる特殊機関が存在しました。そのメンバーであるマリア・ライナスもまた、この事件に関わっていくのです。所属も生まれも違う2人の視点がクロスオーバーしたとき、事件の真相が見えてきます。

 この作品の最大の特徴はダブル主人公であるという事です。日本人である松永慎一とイギリス人であるマリア・ライナスの2人で交互に視点が入れ替わりながら物語が進んでいきます。慎一がこのゾンビ事件を追っている一方で、マリアは全く別の調査を行っておりました。ですが、行く先々で慎一とマリアは鉢合わせする事になり、お互いに追っているものが実は同じものであるという事に気付くのです。それでも事件の真相は思ったよりも深く、それぞれ単独での調査では真実にたどり着けません。是非2人の視点の入れ替わりを活用しながら、お互いの視点でしか見えないものを追ってみて下さい。慎一とマリア以外にも心強い仲間が沢山おります。そんなキャラクター同士の掛け合いも魅力です。

 ですが、システム面で見れば非常に読みにくいと言わざるを得ません。既読スキップはありませんし、マウス以外での操作を受け付けませんし、バックログも殆ど遡れませんし、音量調整や文字速度調整もありません。正直、これで本当に人に読ませる気があるのか?とすら思ってしまいました。他にもBGMやボイスの音量がバラバラである、セーブスロットが5つしかないなど、とにかく文字を読む以外の要素が気になってしまいました。ビジュアルノベルにおいて、私は文字を読むという行為を阻害する要素は徹底的に排除するべきだと思っております。残念ながら、この作品からはそういった部分に対する配慮は感じませんでした。是非システム面について改善して頂きリニューアルして欲しいですね。

 プレイ時間は私で2時間20分くらいでした。この作品には比較的多くの選択肢があります。そして割と簡単にBAD ENDに行ってしまいます。是非選択肢の度にセーブして頂き、事故を防いで欲しいですね。ですが、上でも書きました通りセーブスロットは5つしかありませんので、幾つかは捨てる事になると思います。既読スキップがありませんので始めからやり直しても安易にスキップ出来ません。登場人物や物語の素材がとても魅力的なだけに、どうしてもシステム周りさえ整っていれば・・・と思ってしまいます。ボリュームとしては決して長くありませんので、時間の許す限りのんびりとプレイしてみるのが良いのかも知れませんね。またこの作品は過去作品と登場人物が共通しているなどシリーズ化されているみたいですので、時間があったらそれらもプレイしてみようと思います。純粋にサスペンスを楽しむ、その気持ちが肝要なのかも知れません。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<俺の正義が試されている、正義を貫かなければならない。>

 上でも書きましたが、2人の視点で徐々に事件の真相に近づいていく様子が楽しかったです。ゾンビ事件は大学生が実験で作ったドラッグがばら蒔かれただけではなく、過去の事件と繋がっておりそこには深い因縁がまっておりました。そしてその因縁の中心にいたのが、他ならぬ慎一とマリアの2人でした。

 この作品にとって、それぞれの登場人物の立場を正確に把握することが大切です。日本人であり日本の警察に所属している慎一と、イギリス人であり女王が創設したCold Bloodに所属しているマリア。お互いの気質は似ていても生まれや関わった事件、何よりも立場が全然違うという事を忘れてはいけません。自分の上司は誰なのか、何のために事件の調査をしているのか、誰が信頼できて誰が裏切っているのか、それは誰の立場での考え方なのか、そういった部分の葛藤が印象的でした。

 特にCold Bloodという組織の役割が印象的でしたね。死刑が確定した人物は躊躇なく殺す事が出来る。こんな超法的な権限が与えられているのですから、並大抵の精神力ではとても持ち堪えることが出来ませんね。ましてや、殺す相手が自分の因縁の人物だったらまだしも最愛の人物だったとしたらどのように思うのでしょうか。今回の事件の黒幕はダニエル・エイデンでした。そしてその人物は自分たちの家族でもあったのです。複雑な感情を持って対峙した事と思います。そしてそんな家族の戦いに巻き込まれた慎一と行動を共にしている。これもまた印象的な事実でした。

 それでも自分にとって守らなければいけない事があります。それが自分の正義というものです。ダニエル・エイデンが殺されて事件が終わる訳ではありませんでした。事件を終わらせるために必要なこと、マリアはそれは自分の正義を貫いた先に待っていると信じ過去の出来事を調べ始めました。そしてたどり着いたのが1年前のバステロ事件でした。自分たちの戦いに巻き込まれた慎一。それでも自分の正義を貫く為に、その事実をしっかりと自分の言葉で慎一に伝えました。この瞬間、ようやくマリアにとってこの事件は終わったのかも知れません。これからもテロ組織との戦いは続きます。Cold Bloodとしての仕事も続きます。ですが、今回の事件を切っ掛けに改めて何故今自分がこの仕事を行っているかを考えた事と思います。

 そして慎一です。日本人として歌舞伎町を守る為にマリアと協力して事件を解決に導きました。ですが、その先に待っていたのは、最愛の恋人を失った真実でした。慎一は十二分にマリアを銃弾する資格があると思います。何しろ他人の争いに勝手に巻き込まれたのですから。それでも慎一は自分に問いかけました。それがタイトルにもなっている「俺の正義が試されている、正義を貫かなければならない。」でした。強いと思いました。カッコイイと思いました。もしかしたら心の底では許せないのかも知れません。いや、むしろ許してないからこそ自分に言い聞かせているのだと思います。そんな慎一もすぐに新たな事件に巻き込まれ、それを解決する日々がやってきます。これまで以上に自分の仕事について、正義について覚悟を新たにして励むのではないかと思いました。自分の気持ちと立場、そして正義というものを考えさせられました。ありがとうございました。


→Game Review
→Main