M.M Rejuvenescence-リジュベネッセンス-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 5 3 65 2〜5 2012/2/9
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<短く荒削りながらもよく考えられた設定とシナリオ>

 この「Rejuvenescence-リジュベネッセンス-」という作品は同人サークル「WhiteMoor」で制作されたサウンドノベルです。確かC79で同人ゲームの島サークルを回っているときに偶然見つけたことが切っ掛けだったと思いますが、正直なところ正確なところはうろ覚えです。パッケージとあらすじを見て何か惹かれるものがあったので買ってみました。実際のところWhiteMoorというサークルもチェックしていたわけではなく、本当に同人ゲームの島サークルを巡っていて偶然見つけたのです。そんな偶然の出会いに感謝しつつ、購入して1年以上放置してのプレイとなりました。感想ですが、短く荒削りながらも良く考えられた設定とシナリオだと思いました。

 OHPを見ると分かりますが、この作品は奇伝ものです。日本にある春が訪れない梅の花が咲き満ちる島が舞台で、そんな島だからこそ伝わる伝承にずっと縛られている人々の物語です。主人公は今回とある切っ掛けで初めてそんな島に訪れ、そこで出会った一人の少女と心を寄せ合っていきます。あらすじはこんなものですし割とよく聞くプロットではあると思います。ですが、OHPを見ると分かりますけど設定としては割と細かいです。過去に島を滅ぼそうとした女神と島を守ろうとした女神がいたこと、そんな女神を封印した巫女がいたこと、その巫女が転生しモガミとして現代に生きているという事、プレイ始める前から色々な妄想が膨らみますね。こんな興味深い設定の上でどんな物語が紡ぎだされるのか非常に楽しみになる設定でした。

 結果としては、荒削りながらもきちんとまとまったシナリオでした。上記の設定をよく生かしてましたし当初の期待を裏切ることはありませんでした。登場人物もそれぞれに役割があり、一人として疎かにするということはありませんでした。残念な点とすればやはりそのプレイ時間ですね。多少長めなシナリオを想定していたのですが、結果2時間30分で終わってしまいあっという間の印象でした。まあ短いながらも良くまとまっていたのでそれはよかったのですが、よくまとまっていたからこそもっとこの作品の世界に触れていたいという思いもありました。感情移入できる時間が少なかったという事です。

 それではその他について書こうと思います。とにかく驚いたのがHシーンでのアニメーションですね。最近の同時サークルは進歩しているんですね。あそこまでヌルヌル動くアニメーションのHシーンを見たことはありませんでした。まあ抜きゲーとか専門にしている人から見れば大したことはないのでしょうけど、シナリオ重視の私にとってこのアニメーションは新鮮でした。そしてその数も多いですね。よくもまあこれだけのアニメーションを作ったものです。素直に驚きました。後は絵やBGMですが、これはまあ同人サークルということでこんなものかも知れません。絵については好みの問題もありますので特にいう事なしですが、BGMが少なすぎて残念でした。タイトル画面の曲とか割と好きなので、もっと本編の中でのBGMの出番を増やしてほしかったというのが正直な感想です。

 という訳で比較的満足できた内容でした。このレベルの作品が多数出てくるようなら、日本のサウンドノベルの未来は明るいと思いますね。是非WhiteMoorさんには今後も良い作品を作っていって欲しいですし、今後もこのような良作に出合いたいです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<プレイヤーの感情を登場人物に移入させる事が如何に大切か>

 純粋に面白かったです。もともと奇伝ものは好きでしたし、シナリオ展開も速かったので先が気になりクリックが止まりませんでした。ただ上でも書いたのですが、やっぱり短すぎですね。こんなに良い設定を作れるのなら、もっと登場人物の心理描写やシナリオ進行に関係ないエピソードを加えてもいいのではないかと思いました。

 いきなり先輩とのHシーンが始まってこれはもしや抜きゲーなのかと思ったのですがそれは杞憂でしたね。ヒロインも突然友人とHし出したりこんなものかなと思ったのですが、予想以上に友人が良いやつで心がほっこりしました。そしてヒロインも寂しさを抱えた典型的なツンデレで、主人公と結ばれた時にはニヤニヤが止まりませんでしたね。このゲーム、抜きゲーとしての要素と読ませるシナリオゲーとしてのバランスも実はよく考えられているのではないかと思いました。

 それにしても、本当にサクサクシナリオが進みましたね。きっとこの後主人公との気持ちのすれ違いがあるんだろうな〜って思っていたらもうその場面になってましたし、その後誤解を解決して結ばれるんだろうな〜って思っていたらもうHしてました。何がいいたのかと言いますと、ある程度までシナリオが読めてしまったんです。確かに主人公とヒロインが結ばれるまで多少のシナリオの揺さぶりはありましたがそれでも予測できました。そしてこの点はこの作品のマイナスポイントだと思うのですよ。

 純愛って、一筋縄でいかないから純愛だと思うのですよ。まあそれは現実世界の話ですが、これをゲームの中に当てはめるとすれば「あれ、この二人って本当に結ばれるの?」って如何にプレイヤーに疑問符をつけることが出来るかだと思うのです。そうやってプレイヤーの心を煽って、その上で結ばれるからこそ「ああ良かったな〜」って思えるんだと思うんです。そういう意味で、サクサクシナリオが進むのはストレスがなくて良いのですが予測できたので感動の深さという意味ではちょっと残念でした。それこそ主人公とヒロインが結ばれるまで5時間でも10時間でも使ってさんざん焦らしてやればいいんですよ。その方が結果としてプレイヤーに満足して頂けると思うのです。まあ、何時間も焦らして且つ飽きさせない文章というものは非常に難しいですけどね(最近だと「遥かに仰ぎ、麗しの」の本校系が至高)。

 ですが、この物語の伏線の回収や物語の真実や落としどころはさすがに読めませんでした。というよりも、まさか且羅があそこまでの力と自主性がある重要人物だとは思いませんでしたし、後半で伝承の中心である寄摩と華成が登場するとは思いませんでした。この段階ですでに主人公とヒロインは結ばれているわけですし、この辺りは純粋にどんなシナリオ展開になるのかワクワクして読み進める事が出来ました。エンディングも呪いに解放され皆が死なず幸せに生きる内容という事でスッキリですね。

 今回このゲームを通して学んだこと、それはプレイヤーの感情を登場人物に移入させる事が如何に大切かという事と設定の深さは純粋に期待度の深さになるんだなという事ですかね。荒削りな出来でしたがよく考えられていた内容でしたのでこれからの発展に期待ですが、もっともっとプレイヤーの心を惹きつける文章数が必要なんだなと思いました。またこのサークルの新作はプレイしてもいいと思わせるには十分でした。もし似たような設定の作品が出されることがあれば是非プレイしようと思います。


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