M.M 折紙憑き
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
7 | 6 | 5 | 76 | 3〜4 | 2018/8/16 |
作品ページ | サークルページ |
<各ヒロインの様々な一面を感じながら、是非呪いの真実を明らかにしてください。>
この「折紙憑き」という作品は、同人サークルである「Forest*Leaf」で制作されたビジュアルノベルです。Forest*Leafさんの作品は、過去に「鱗姫伝説」という作品をプレイさせて頂きました。後から知ったのですが、Forest*Leafさんの作品はその全てが「郷土学サークルシリーズ」と呼ばれるシリーズ物となっております。そして、頒布順番としましては今回レビューしている「折紙憑き」がC87で、その後に「鱗姫伝説」がC90で頒布されました。逆の順番でプレイしてしまいましたが、それぞれのタイトルでエピソードは終わっておりますのでどれからプレイしても問題ないと思います。何れにしても、過去に「鱗姫伝説」をプレイしてこの郷土学サークルのメンバーにもう一度会いたいと思い、今回「折紙憑き」の方もプレイさせて頂きました。
主人公である「三石陣」は郷土学サークルと呼ばれるサークルに所属しております。名前の通り郷土学を扱っているサークルであり、彼らが専門としているものは歴史的なものや民族的なものがメインとなっております。メンバーは部長であり小さくて可愛らしいマスコット的な「森咲双葉」、双葉の自称双子の妹であり落ち着いた性格の「森咲若葉」、スポーツ万能でおっぱいが大きく中性的な雰囲気の「真城江蓮」、おっとりお嬢様で学園のアイドルとしても有名な「渚みるく」ととても個性的です。時にコミカルに、時にシリアスに、それでも本気で事件に向き合いその答えを探そうとする真剣なサークル活動を見る事が出来ます。郷土学はオカルトではありません。ですが、何故か彼らが調べる物にオカルトが付いてくるんですね。今日もそんな慌ただしくも楽しい日常を過ごしております。
今回の舞台は、彼らが住んでいる梟街の街はずれにある「廃病院」です。ある日、郷土学サークルとは似ている様で全然違う「オカルト研究サークル」から宣戦布告されました。部室の獲得を巡って、廃病院に伝わる都市伝説を調査する事になったのです。部長の双葉は安請け合いしてしまいましたが、初めから双葉は都市伝説など信じておりませんでした。これは負ける事のない戦いだと思っていたのです。そんな訳で、殆ど警戒せずに乗り込んだ廃病院。ですが、そこにはいるはずのない物が潜んでいたのです。命からがら逃げかえってきた郷土学サークルのメンバー。これで一安心かと思いましたが、本当の恐怖はここからでした。都市伝説の通りに始まった呪いの数々。果たして彼らは皆無事に生きてこの呪いを解く事が出来るのでしょうか?
「鱗姫伝説」でも感じましたが、この作品の魅力はとにかく個性的で可愛い郷土学サークルのメンバーです。この作品は選択肢を選ぶ事で各ヒロインの個別ルートに入っていきます。そしてそれぞれの個別ヒロインを中心として都市伝説に挑んでいきます。エンディングは各ヒロインとのものになりますが、そこは郷土学サークルですので全員で解決していきます。主人公とヒロイン達との立場が微妙に変化しておりますので、距離感が会話の雰囲気が少しずつ違っており、それが各メンバーの様々な顔を見せてくれるのです。4人のヒロインを攻略していく中で、4人全員への愛着が増していくと思います。是非、自分が一番大切にしたいものを見落とさないように攻略していって下さい。
そして今作で取り扱っているのはオカルトであり都市伝説であり呪いです。その力は予想以上であり、いつもの日常の中にあっという間に忍び寄ってきます。直接的に呪いの存在がバーン!と出てくる訳ではありませんが、いつもと少し違う背景、いつもと少し違う立ち絵、いつもと少し違うヒロイン達の言動、こういった素朴で地味な違いがかえって恐怖心を煽ってきます。そして、割と簡単にBADENDに行ってしまいます。真面目に考えて選択していかないと呪いは解けないのです。是非セーブ&ロードを繰り返して呪いを解いてあげで下さい。
プレイ時間は私で3時間45分掛かりました。個別ルートで約50分、全てのスチルをコンプリートするまで30分といった感じです。上でも書きましたが、選択肢を間違えるとあっという間にBADENDに行ってしまいます。加えて、その選択肢の数が非常に多いです。1ルートの中で20前後の数の選択肢を選ぶことになります。そして、全てのスチルをコンプリートするにはヒロインの好感度を上げる選択肢を的確に選ぶ必要があります。多少好感度が下でも物語上のエンディングは迎えられますが、それではスチルが埋まらないのです。折角の可愛い個性的なヒロインですので、是非全てのスチルを回収して欲しいですね。そして、全てのルートを歩く事で呪いの真実を解き明かしてください。物語の結末に、色々と思う物があると思います。楽しい作品でした。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<折り鶴に込めるのは相手を思いやる気持ち。その事に、最後千鶴は気付けたのでしょうか。>
正直かなり怖かったです。安全なはずの家の中がいつの間にか一番怖い場所になっている、そうやって居場所をどんどん削っていくやり方が上手いなと思いました。そして、昨日まで普通だった人が次の日にいなくなってる。これも突然でビックリしました。圧倒的な力の前に、それでも真実を探ろうとする郷土学サークルのメンバーが印象的でした。
折紙憑きの元凶である折原千鶴、正直彼女の行動は擁護できるものではないと思います。いわゆるヤンデレですね。大好きな主治医の気持ちを引くために褒められた折り鶴を送り続ける。ですが、本来折り鶴は幸福祈願、災害慰安、病気快癒・長寿を祈念して送るものです。決して、自分の気持ちを押し付ける為に送るのではないんですね。そこを千鶴は間違っておりました。そしてその千鶴の一方的な想いは、次第に猟奇的なものとなり実の弟や家族を巻き込む事になったのです。それでも成就されない想い、そんな未練を抱えたまま呪いの存在となってしまった千鶴は、もはや恐怖の対象でしかなくなっておりました。
ですが、そんな千鶴も完全に呪いの存在になった訳ではありませんでした。自分の幸せを掴んだ主治医、最後にはちゃんとその主治医を祝福する気持ちを持つ事が出来ました。どうしてこの気持ちを忘れてしまったのでしょうね。いや、きっと忘れていた訳ではなく箱の中に気持ちを閉じ込めたからなのでしょうね。どのルートでも最終的に箱の中にある手紙を葬る事で千鶴の呪いは消えてなくなりました。千鶴が呪いの存在になった理由、それはやはり自分の気持ちが伝えられない未練なのかなと思っております。呪いの存在と本当の千鶴は別人なのかも知れません。何れにしても、悲恋の物語だったなと思っております。
そんな千鶴ですが、それでも彼女の事を大切に思う存在がありました。それが一番身近にいた弟であるユズルくんの存在でした。ユズルくんは千鶴に身体を切りつけられて殺されてしまいました。ですが、やはり姉の事を心配していたんですね。死してなお千鶴の傍に寄り添い、彼女の事を見守っておりました。それだけではなく、千鶴の呪いに飲み込まれそうになってる人を助けもしました。赤い折り鶴は呪いのアイテム、ですがその中にユズルくんのメッセージが込められておりました。千鶴の呪いを解く事は、同時にユズルくんを成仏させる事でした。悲しい出来事が続きましたが、それも郷土学サークルのメンバーの諦めない気持ちで終わらせる事が出来たんですね。
千鶴の呪いを掛けられ、七日間で死んでしまう約束をされた陣。それは一日一日と蝕むように陣の周りに侵食していき、郷土学サークルのメンバーにも手が広がっていきました。つい先日まで5人で当たり前のサークル活動をしていたのに、1人また1人といなくなってしまうのです。この時初めてこの当たり前の日常の尊さを実感したのですね。そして、同時に自分にとって掛け替えのない存在にも気付く事が出来ました。物語としては最後に特定のヒロインと結ばれます。ですが、それ以上に郷土学サークルのメンバーが誰ひとりとして欠けることなくお月見祭を迎える事が出来たのが一番嬉しかったです。彼ら5人が5人らしくサークル活動を続けられる、これが本当のエンディングのように思えました。
振り返ればもう何周もプレイしておりました。一度エンディングを迎えても全然スチルが埋まっていない、その為その後何周も繰り返して好感度が最大になる選択肢を選び続けました。スチルが埋まると、場面の情景も浮かびますのでより臨場感が湧きますね。ビジュアルノベルらしい魅力だと思いました。そして、文字通り命を懸けて人に恋する姿を見る事も出来ました。最も、それはあくまで恋でありました。残念ながら千鶴の恋は成就しませんでしたが、最後はちゃんと主治医を愛する気持ちを確認できました。恐怖心を煽る演出が連続し終始ドキドキしながらプレイしておりました。その分、最後の挿入歌が流れるシーンは一入でした。是非また郷土学サークルのメンバーの活躍を読んでみたいと思いました。ありがとうございました。