M.M 二重影


<謎解きの面白さとそれを損なう最大の欠点>

 この「二重影」というゲーム、始めはとりあえず名前だけは知っていたゲームであり、私の中でもそれほど特別視している物ではありませんでした。しかし、プレイしてみるとその独特の世界に引き込まれてしまい、最後にはある種の満足感が残る事となりました。

 まず評価出来る点として、キャラクターや背景の書き方です。このゲームの舞台は江戸時代初期という設定で、それが故にその時代という雰囲気をしっかりとプレイヤーに提示する必要があります。そこでこの「二重影」では、背景を水彩画風のタッチで描き、ごく自然に近い雰囲気を作り出しています。さらにこのゲームは奇伝物なのですが、その雰囲気を出す背景やCGも多数あります。そしてキャラクターの書き方なのですが、ヒロインを可愛く描いているのは勿論なのですが、男性キャラクターなどはとてもリアルにカッコよく描いています。これは、根本的に絵の描き方が違っていて、まさしくゲームの雰囲気を重要視している物となっています。

 そしてシナリオですが、前にも言いましたがこのゲームは奇伝物です。その不気味さという物をプレイヤーにストレートに伝えてきます。そして、このゲームは同時に謎解きゲーです。プレイヤーは基本的に主人公の視点でこの「二重影」に纏わる謎を解いていくことになりますが、この謎解きが非常に面白いです。謎自体は非常に難しいのですが、ゲームを進めていく途中で主人公が現在の状況を振り返るという形で何度か状況を整理する場面があります。そして、謎解きに使用されている要素に歴史的な内容が多々含まれているのですが、これに関しては本編で丁寧に解説してくれています。このように、難しい謎を提示しておきながらプレイヤーが出来るだけそれを解けるようにする配慮も備わっており、思わず時を忘れて考えてしまうかと思います。

 しかし、唯一にして最大の欠点が存在します。それはシステムについてなのですが、既読スキップがありません。これは、謎解きゲーに関しては致命的な欠点だと思います。なぜなら、気になった部分があったとしてもそこに戻れないのもありますが、誤って文章を飛ばしてしまったといった時でももう前の文章には戻れないのです。これはもしかしたらケロQがあえて謎を解きにくくするためなのかもしれませんが、それを差し引いても既読スキップが無いのは痛いところだと思います。

 そして、このゲームは奇伝物ですが、その描写はもの凄く濃いものに仕上がっています。これは雰囲気を出すという意味では良いのですが、こういった物が苦手な方には不快になる可能性があります。その辺は注意してプレイする事をオススメします。

 とにかく、このゲームの最大の売りは謎解きです。誤って文章を飛ばさないよう、じっくりと謎を考えて頂ければとても面白い物になるかと思います。何か骨のある謎解きをやりたい方にはオススメの作品です。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<ヒロインの存在意義>

 このゲームを終えて思ったことは、まず明らかにヒロインが複数いる事に意味を持たないという事です。

 ヒロインは全部で三人いて、それぞれ三種三様のシナリオとエンディングが想像できます。しかし、実際三人とも同じシナリオとエンディングで、ヒロインが複数いる意義を見出せません。これは、Hシーンに入るタイミングから最後のCGの使い方、バッドエンドへの流れまで、本当に全て同じシナリオなのです。これはさすがにマイナス点だと思いました。

 そして謎解きについてですが、主人公らは幾つもの謎を解いてやっと最終段階に突入する事になりますが、最終的に淡炎島の消滅を救ったのはイルとスイという太陽の巫女であり、あまり主人公の力は反映されていなかったという印象を受けました。そして何より、本編中ではこの謎解きに関する解答は用意してあるのですが、それを受けてのエンデイングまでの流れが急すぎるのです。数々の戦闘で長く感じるかもしれませんが、結局主人公らが出来た事は無影や異形の者達を食い止める事だけで、その辺の肝の部分は全てイルとスイに投げてしまいました。この当りをもう少し丁寧に説明してくれたら良かったと思います。

 とはいえ、その独特の雰囲気には正直驚かされました。特にヒルコや異形の描写のグロテスクさにはかなり楽しませて貰いました。必ずしも大衆にオススメ出来る作品ではありませんが、こういった雰囲気のゲームを今後とも出してもらえたらと思います。

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