M.M 猫神様の棲む社




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 6 74 2〜3 2017/9/24
作品ページ(なし) サークルページ(R-18注意)



<三者三様のネコミミ男の娘を楽しみながら、是非真のEDまで読み切って欲しいです。>

 この「猫神様の棲む社」という作品は同人サークルである「BlackCamellia」で制作されたビジュアルノベルです。BlackCamelliaさんと初めて出会ったのはC90で同人ビジュアルノベルの島サークルを回っている時でした。特徴はなんと言っても男の娘です。元々男の娘が好きでサークルを立ち上げたとの事で、様々なジャンルの男の娘ゲームを作られております。私もBlackCamelliaさんがノベルゲーム部に参加された事を切っ掛けに全作品をプレイしてみましたが、一辺倒ではない様々なジャンルの男の娘を堪能させて頂きました。自分の書きたい男の娘を書いているのは勿論ですが、それ以上に男の娘という存在に対する並々ならぬ愛情を感じました。

 今回レビューしている「猫神様の棲む社」はC92で発表された新作です。ジャンルは男の娘です。……いや、もはやBlackCamelliaさんの作品を語る上で男の娘というジャンルは当たり前ですし意味を持ちませんのでやめにしましょう。改めまして、ジャンルは伝奇物です。パッケージに描かれているのは猫耳を付けた巫女のような姿をした男の娘が3人描かれております。1人はロリ、1人はメガネ、1人は清純と三者三様の姿をしており、これだけでどのようなシーンが待っているか高まるというものです。ですが、BlackCamelliaさんの男の娘作品はただ男の娘とイチャラブするだけで終わるものではありません。それぞれの作品にテーマがあり、それを表現する為の素材として男の娘が使われているのです。是非この3人の猫神様とどのようなシナリオが紡がれるのか、そしてこの作品を通して何を伝えたいのか感じて欲しいですね。

 主人公である常盤和はとある理由で仕事を辞め、自宅で自堕落な生活を送っている青年です。母親からの生活を心配する電話が止む事はなく、そんな母親の提案で叔母の家がある田舎の村で療養する事にしました。村の名前は八ヶ岳村。そこには古くから伝わる伝承がありました。それこそがタイトルにもなっている猫神の伝説であり、村では定期的に生贄を捧げているとの事です。そして年一回のお祭りで主人公はなんとその生贄に選ばれてしまいました。猫神と対峙する主人公、ですが主人公は生贄として食べられる訳でも命を奪われる訳でもありませんでした。猫神の発情を沈める日々を過ごしていく中で、少しずつ彼らとの関係を変えながら主人公は1つの決断をしていくのです。

 最大の魅力は勿論可愛らしい男の娘そのものです。はっきり言って、日常会話をしている様子は女の子のそれにしか見えません。清楚、ツンデレ、ロリの三者三様の姿を味わって欲しいですね。そしてHシーンでの行為や喘ぎ方もまるで女の子の様です。主人公ももはや何も気にせずケツ穴に自分の分身をぶち込みます。ですが女の子と男の娘の一番の違いはチンポが付いているという事、つまり射精するという事です。この作品をプレイする層は恐らく男性が多いと思います。そうであるのなら、自分が射精する感覚を男の娘もまた感じている感覚に大きく共感出来るのではないでしょうか。主人公と男の娘がフィニッシュする瞬間に合わせて自分も高めてもらえば良いと思います。

 そしてそのような性質を持つ作品ですので、EDの種類も複数あります。ですがここで注意が必要です。攻略対象3人の個別EDには比較的簡単に行けると思います。ですがそれだけではスチル集を埋めることは出来ません。つまり真のEDが存在するという事です。この真のEDに行くのに私は大変苦労しました。実はC92で作品を手に取った時に合わせて「副読本」を頂いたのですが、その中に攻略方法が書いてあります。ですが、プログラムのミスか分かりませんがその通りに選択肢を選んでも真のEDにたどり着けないのです。その後検証した結果なんとか真のEDにたどり着くことが出来ました。その方法を下記に示しますので是非参考にして頂ければと思います。

真のED到達メモ

 プレイ時間は私で2時間50分でした。共通ルートで1時間、個別ルートで20分、その他の要素で1時間といった感じでした。選択肢の数は割と多いですので、全ての分岐を検証しようと思うとかなり大変です。ですがEDリストがありますので、全ての選択肢でセーブしなくても大丈夫かと思います。そしてこの作品には既読スキップがありません。正直残念でした。こういった選択肢が多く分岐が複雑な作品において既読スキップが無いのは攻略に大変手間が掛かります。上でも書きましたが、真のEDにたどり着くまで割と多くの時間を割きました。もしアップデートされるのであれば是非実装して欲しいと思いましたね。純粋に男の娘を楽しむのであれば、ENTERキーを押しっぱなしにしてガンガン飛ばして構わないと思います。そして選択肢の直後のみしっかりとテキストを読めば大丈夫です。まずはちゃんと分岐にたどり着くこと、そこから物語を楽しんで頂ければと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<神様というものは、多くの人が真剣に願いそして気持ちが揃った時に振り向いてくれるのかも知れません。>

 物語序盤で、常盤和が無邪気にはしゃぐ環を見て「ほほえましい」と思いました。私はこの作品を最後までプレイして、この「ほほえましい」という言葉はこの作品全体に言えるのではないかと思いました。自分の大切なものに気づいてそれを取り戻そうとした和。そしてそんな和を慕い守ろうとした3人。そんな4人の想いが成就され、最後に和の撮るカメラの中に3人が写っている姿を見て心から「良かった」と思いましたし「ほほえましい」とも思いました。そんな人間の気持ちの強さがどれだけ大切なのかを、この作品から感じる事が出来ました。

 世の中にある数多くの伝承は、その殆どが自然災害や外界から入ってきた異文化を恐れる事から生まれているそうです。自分たちの常識や知識では理解できない現象が存在する、ましてやそれが自分達に災いをもたらすものであるのなら全力で排除するしかありませんね。理屈ではなく本能的なものだと思います。そして未来永劫自分たちが生きていく為に伝承として残す、そこに理論など不要でした。ですが、真の理想はそういった人知を超えたものを遠ざけるのではなく理解したり分かり合えたりする事だと思います。それが叶えば誰にとっても安心であり幸せな事です。そんなたどり着きたいゴールにたどり着くまで、随分と回り道をしてしまいました。

 この作品では誰もが一歩前に踏み出す事を恐れておりました。和はかつて仲良かった友達から裏切りとも呼べる行為を受けました。その為大好きだったカメラにも触れられなくなり、一度はそのカメラを壊してしまおうと思いました。ですがそれは本心ではありませんでした。本心はまた友達と昔みたいに仲良く一緒に過ごす事。ですがその為には自分を裏切った友達と対峙して想いを打ち明ける必要がありました。苛められた過去を持つ和にとってこれ程勇気がいる事はありませんね。それでも、人間いつかは前に踏み出さなければいけない時がある。村人からの攻撃から命を懸けて環を守った和であれば、その後きっと友達と再会し自分の気持ちを伝えた事と思います。再びカメラを手にした和、これからも怖い事はやってくると思いますけどきっと乗り越えられますね。

 三人の猫達も同様でした。雅は自分が母親を殺してしまったという責任に甘えて、凌と環に向き合う事を恐れてました。雅にとって怖かったのは凌と環の気持ちだけ。それはどれだけ贖罪を重ねても解決しませんね。2人と向き合う勇気を貰う事で、やっと雅にも心の平穏がやってきました。凌は自分たちを迫害した人間を憎むと同時に人間を恐れておりました。どれだけ和が歩み寄っても壁を残してしまい、本当の意味で和を信頼できませんでした。自分が自分である事を誇示する為に、人間が嫌いという事が必要不可欠だったんですね。そんな自分の弱さを曝け出せたとき、ようやく凌にも心の平穏がやってきました。環は逆に人間に興味があり人間と一緒に暮らしたいと思っておりました。それでも雅や凌を裏切る事は出来ない、その狭間で揺れ動いておりました。背中を押したのは和です。ですが決断したのは環でした。2人暮らしをする決意をした環は、その時点で幸せを掴んでいたのかも知れません。

 そして伝承を恐れ思考停止していた村人も同様でした。もしかしたら猫神などという存在はいないのかも知れない。仮にいたとしても話し合えば分かり合えるかも知れない。そういう気持ちは根底には持っていたんですね。ですがそこに踏み出す勇気はありませんでした。生贄に全てを被せて、誰も猫神に会おうとしませんでした。ですがこればっかりは仕方が無い事かも知れませんね。自ら命を捨てる真似など、出来るはずがありません。だからこそ和が村に帰ってきて真実を告げた時、彼の言葉に心が揺れ一歩前に踏み出せるかも知れないと思いました。ですが誰かの一言で踏み出すに至りませんでした。楽な方へと転んでしまいました。その結果として、和という一人の人間を打ってしまいました。ここでやっと気づいたんですね。自分たちの過ちに。そしてきっと願ったのだと思います。自分たちの愚かさを認めるのでこの男性を生き返らせて欲しいと。

 結局のところ、最後まで鈴の音の正体と神様の存在については明確に明かされませんでした。もしかしたら神様はいないのかも知れないしいるかも知れない、猫達3人の先祖は神様だったのかも知れないしそうではないのかも知れない。真実は分かりません。ですが確実にこれだけは言えると思います。神様は、人間でも獣でも心から願った強い気持ちには答えてくれるのだと。損得でも偽善でもなく、自分が本当に叶えたいという願いが集まったとき、和は死ぬ事はありませんでした。猫達3人は心から和が死なない事を願いました。村人達もきっと自分たちの行動を悔い和が死なないで欲しいと願ったのだと思います。そして和自身も生きたいと願いました。まだ彼らの写真を撮ってませんからね!奇跡というものは、多くの人の気持ちが揃った時に起こるのかも知れません。そんな事を思ったとき、この作品が愛おしく同時にほほえましく思いました。ありがとうございました。


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