M.M 猫は永遠を知っているのか。




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 5 3 68 2〜3 2014/4/16
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<自堕落的な主人公のリアルな性格を表現した文章が最大の魅力ですね>

 この「猫は永遠を知っているのか。」という作品は同人サークルである「Nix*」で制作されたビジュアルノベルです。C85で同人ゲームサークルを回っている時に入手した作品でして、当時は無数に買ったビジュアルノベルの1つ位の認識でした。ですがパッケージから漂うどこか哀愁を感じる雰囲気とご無沙汰だった百合という設定に興味をそそられプレイに至っております。感想ですが、生々しい登場人物達の心情が心に残るちょっと悲しい物語でした。

 主人公は28歳のOLで、過去に最愛の恋人を事故で亡くしている過去を持っております。そんな壮絶な過去を経験している為か、数年経過した現在でもその時のショックから立ち直れず空白な生活を送っております。このあらすじと主人公紹介から想像出来るかと思いますが、正直言って現実世界だったら相当面倒くさい性格です。ですがこの作品の最大の魅力はこの面倒くさい性格を忠実に表現した文章でして、自堕落的で活力のない様子を主人公視点中心に書いております。基本的に主人公の心情と会話のみのテキストでして、風景描写や群像劇の部分は殆どありません。プレイヤーにとってみれば早い段階で主人公の人となりを理解出来ると思います。

 そしてそんな主人公の元にポチと名乗る神様がやってくるところから物語は動いていきます。マイペースで歯に衣を着せない物言いは実に神様らしいですし本来こんな自堕落的な主人公にやってくるものではないのですが、勿論このポチと主人公には大切な関係があります。プレイヤーの方には是非ポチが何故主人公の元にやってきたのか、ポチの目的はなんなのかを想像しながらプレイして欲しいですね。そしてこのポチが主人公にかけた呪いによって周りの女学生達との関係がどのように変化していくのか、最終的に過去のショックとどのように向き合うのかについても想像して頂ければと思います。

 後プレイするに当たっての注意点ですが、選択肢が結構多く油断すると簡単にBADENDに行ってしまいますのでこまめにセーブする事をオススメします。それでも全体で2時間30分程度で終えることが出来ましたので、とりあえず何かしらのENDまで読んで改めてスタートしても別段問題はないかも知れません。割と判断に悩む選択肢ですので満足いかないENDであっても気にしない事ですね。まずは主人公の気持ちに寄り添いそこからどのように発展させていくのかを楽しみにして頂ければと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<本当の幸せと楽しみとは何かを考えさせられるシナリオでした>

 正直なところ何ともやるせない気持ちになりました。主人公が過去のショックから立ち直ること、それは同時にポチとの永遠の別れを意味してました。最終的に全員が幸せになる方法は無かったのでしょうか。いや、全員が生きていることが必ずしも幸せとは限りませんね。全ての登場人物達の気持ちが通じ会った瞬間、それが物語の終焉の時でした。

 過去のショックから立ち直らなければいけないと頭では分かっていてもそれをしてはいけないという梓の葛藤、解消する為にはやはり自分の力だけでは叶わずポチのように強引でも状況をかき乱す存在が必要だったのでしょうね。梓が言っていた「1人で閉じ篭っていると楽しくない、でも安心する」という言葉はかなり私の心にも刺さりました。現状維持は正直言って楽ですし安心しますからね。ですがそれは凪のようであり新しい刺激は入ってきません。新しい刺激がなければ自分で動こうという気持ちには中々なれませんからね。ポチにとって梓の幸せは自分の命と引き換えでも叶えたい願いだったのだと思います。

 逆にアリサと結ばれるルートでは梓は自然と前向きになる気持ちを持っておりました。学校に通わず将来が見えないアリサに対して「レールは沢山あるし拘る必要はない」と言った梓の姿にポチは自然と安心したのだと思います。それでも初めに梓の背中を押したのはポチでした。梓の気持ちの変化の仕方はルートによって違えどポチの存在が物語の起点である事は言うまでもありませんね。人間動いてみると案外動けるものですし景色も変わってくるものです。それに気がつければ後は自然と前に進めるところが人間の強いところだと思います。

 個人的には梓と霞が結ばれるENDも見たかったのですが、それは現実世界では叶いませんでした。ですが直接お互いの思いを確認は出来ませんでしたけどそれぞれで相手の気持ちを信じる事が出来ましたので当人たちにとってはハッピーエンドなのかも知れません。それでも生きて結ばれるENDを求めるのは私の女々しい気持ちが残っている証拠ですね。アリサと添い遂げるENDと比較して余りにもやるせない気持ちになりましたが、それもまた運命なのだと思います。本当の幸せとは何か、前に進むとはどういう事か、日々の生活の中でどのように振舞えばいいのかを考えるキッカケになる作品でした。ありがとうございました。


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