M.M 夏を探して




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
3 3 - 50 〜1 2020/2/22
作品ページ(無し) サークルページ(Twitter)



<何となく夏の雰囲気を感じる事が出来れば、それで十分な作品だと思いました。>

 この「夏を探して」という作品は、同人サークルである「サクラ納豆」で制作されたビジュアルノベルです。サクラ納豆さんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けはC97で同人ゲームの島サークルを回っている時でした。とてもシンプルなパッケージ、そしてタイトルが夏を探して、これ以外何も情報がありません。私にとって、夏をテーマにしている作品には大きな思い入れがあります。その理由は、私が一番好きな作品が「水夏〜suika〜」だからです。夏の田舎をテーマにしただけで、どうしようもなくテンションが上がってしまいます。勿論この「夏を探して」という作品が田舎を舞台としているとは限りませんし、そもそもそういったノスタルジックを感じる作品とも限りません。それでも期待してしまう、そんな気持ちでプレイし始めました。

 結果として、この作品は田舎を舞台としたものでもノスタルジックを感じる物でもありませんでした。それどころか、これまでありそうでなかった設定に逆に驚かされました。突然主人公の部屋から始まり、目の前にいるのはハルという名前の女の子です。服装はどこかファンタジー世界思わせ、明らかに普通の人間ではありません。聞けば、ナツが大人しくしてくれないから暑さが収まらないとの事。そして一緒にナツを探して欲しいとの事です。そう、目の前にいるのは季節が擬人化された女の子です。そしてナツを探さなければいつになっても夏が終わらないのです。夏を探して、まさにタイトル通りの物語が幕を開けたのです。

 この作品の魅力は、主人公が思いつく夏らしさを探るところにあります。ナツを探すのですが正直なところ何も手掛かりがありません。そうであるのなら、自分が夏らしいと思うところを回るしかない。その一心で様々なところを巡っていきます。時には夏を象徴する食べ物や飲み物も登場します。その度に、確かに夏っぽいなときっと皆さんも思うと思います。そんな風にファンタジー要素をはらみながらもほのぼのとナツを探す雰囲気がお気に入りでした。正直言えば、立ち絵のパターンは各登場人物1つしかありませんし、Unityですので非アクティブ時にアプリが止まってしまうのが気になりました。その辺りの粗削りな部分は、まあとりあえず目を瞑っても良いのかなと思いました。

 プレイ時間は私で8分程度でした。8分です、10分と掛かりませんでした。本当にナツを探して街を歩いてエンディングに向かうだけの作品です。流石に短すぎるなとは思ってしまいました。それでも登場人物は可愛かったですし、最後に提示されたテーマはちょっと考えさせられる部分がありました。このサッパリ感と言いますか潔さが、気が付けば夏が終わって秋になっている感覚なのかも知れません。そんな一瞬で終わってしまう短編ビジュアルノベルです。お菓子を食べるような気軽さで、何となく夏を感じてみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<1年経って、少しでも成長した主人公が見れたら良いなと思いました。>

 最後、ナツが居たのは主人公にとって予想外のところでした。それは夏らしいところなどではなく、自分が悩んだり迷ったりした時に立ち寄るちょっとした川沿いでした。そして、ナツだけではなくハルもアキもフユも皆主人公の事を心配しておりました。とてもほのぼのするシナリオだったと思っております。

 この作品のテーマは「わからなくても前に進む」という事でした。未来に進む事を恐れて時間が進む事を恐れてその場に留まり続ける主人公、私もその気持ちは十分に分かります。先に何が待っているのが分かっていれば、怖がらずに安心して先に進む事が出来ますからね。ですけど、現実としてそんな事はありえません。全ての人にとって、1秒先の事すらもどうなるか分からないのです。では、そんな風に先の事が分からないからずっと留まる事が出来るのでしょうか。それも勿論、現実として不可能ですね。

 未来が分からないのも、時間が進んでしまうのも、仕方がないんだと思います。成功するのも失敗するのも確定させる事など出来ない、どれだけ努力して対策しても失敗する時は失敗します。そんなものです。それでも、主人個の様に時を止める事が出来たらもしかしたら自分も少し止めていたかも知れません。そして、ナツを探すという行動の中で自分にとっての過去の思い出を振り返っておりました。小学校のプールや神社での夏祭りはその最たる例ですね。きっと、楽しい思い出があったのだと思います。ですが、そこにナツはいませんでした。それは同時に未来も無いという事でした。

 どうして季節たちが擬人化していたのかは分かりません。ですが、少なくとも彼女たちは主人公の味方であり主人公の事を心配しておりました。だからこそ、主人公が悩んだ時にやって来る川沿いでナツは待っていたのです。気が付けばハルもナツもアキもフユも皆いました。皆で主人公の事を励ましておりました。素敵ですね。個人的に良いなと思ったのは、アキに対してこれからよろしくねと言ったところです。とてもほっこりとしました。ナツは終わりましたが一生の別れではありません。また一年経てば夏がやってきます。その時は、少しだけたくましく成長した主人公の姿が見れたらいいなと思いました。ありがとうございました。


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