M.M 夏の終わりの雨上がり




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
3 4 - 51 〜1 2016/3/17
作品ページ サークルページ



<小学生らしい素直で等身大なキャラクターが一番の魅力です>

 この「夏の終わりの雨上がり」は同人サークルである「えるりんご」で制作されたビジュアルノベルです。えるりんごさんの名前を初めて知ったのは、COMITIA116にサークル部活動として参加するノベルゲーム部のメンバーとして名前をお見受けした事からでした。毎年春のCOMITIAに参加しているノベルゲーム部ですが、その参加サークルは毎回様々でありジャンルに富んでおります。えるりんごさんがメインとしているジャンルはショタです。今回レビューしている「夏の終わりの雨上がり」は女性向け恋愛シミュレーションですが、ヒーローは皆小学生でありショタの名に偽りなしです。他にも幾つか体験版をプレイさせて頂いたのですが、それぞれBLであり恋愛アドベンチャーであり共通点はやはりショタでした。そんなショタの魅力に溢れるえるりんごさんの処女作がこの「夏の終わりの雨上がり」であり、短いながらもヒーローの素直な性格が印象的でした。

 主人公は教育学部に所属している大学生です。夏の間だけ教育実習という事で母校の小学校に赴任するのですが、そこで3人の男の子と出会う事になります。一人は野球が大好きで快活な性格の市原達也。一人はピアノが趣味で周りと比べて大人びている性格の笹川琉太。最後の一人は図書室で本を読むのが好きなちょっと気弱な性格の岸田冬馬。三者三様のキャラクターですが、皆小学生という事で根は素直な性格であり全員主人公であるあなたを慕っております。自分と比べて10歳も年下の男の子という事で始めは恋愛対象などと考えもしませんでしたが、思春期の始まりであり見た目以上に大人になろうとしている彼らのちょっとした一面に心揺さぶられてしまいます。果たして教育実習の終わりに待っている結末はどのようなものなのか。是非あなたが主人公に成り代わって見届けて欲しいですね。

 一番の魅力は、もう何度も書いておりますがやはり小学生らしい等身大のキャラクターですね。3人とも性格はバラバラなのですが、主人公に褒められれば素直に甘えたり、悔しければ涙を流したり、好きになったら一直線に突っ走ったりする素直な性格の子ばかりです。その姿は大人になった私たちには二度と取り戻せない懐かしい記憶。小学生だからこそ許される自由な自己表現は恋愛という枠組みを超えて惹かれるものです。加えてこの作品は全年齢対象です。性的な描写がないのにも関わらず何故ショタに拘るのか。それは間違いなくショタだからこそ許される素直な性格とキャラクターを描きたいからです。教育実習という事で彼らに物事を教えるのが主人公の仕事。ですがそれ以上に彼らの素直な心の声に耳を傾けてみてください。それが一番の思い出になると思います。

 プレイ時間は私で45分程度掛かりました。この作品は選択肢を選びながらエンディングを目指す一般的なビジュアルノベルですが、その選択肢の数は比較的多いです。それでも難易度は低いですので着実に目的の男の子とのエンディングを目指して欲しいですね。それでも一人15分程度で終わりますので間違えても簡単にやり直すことが出来ます。教育実習というとても短い時間ではありますが、出来るだけ彼らと心を共有し想いを分かち合って欲しいですね。思い出に残る夏になることを期待しております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<自分に生まれた分からない気持ちを必死になって追いかける姿、それこそがショタの魅力だと思いました。>

 男の子って、基本バカなんですけど時々ドキっとする程大人びて見える事ってあるんですよね。いつまでも子供じゃない、実際のところ本人たちはそんな反抗心しか持っておらず大人になっているつもりはないのかも知れません。それでも手の届かないところに一生懸命背伸びして手を伸ばす姿はそれだけで心が温かくなります。そんな淡い気持ちを思い出させてくれました。

 ヒーロー3人にとって主人公であるあなたはどのような存在に見えたのでしょうか?私がそうだったのですが、小学生にとっての大学生は正直雲の上の存在だと思っております。何しろ自分達はこれから中学校、高校と続くのです。その先にある大学生なんて全く想像出来るはずがありません。それでも、自分のお母さんよりは若い女性。憧れの気持ちは自然と持つと思います。そしてその憧れの気持ちは本当に憧れの気持ちだけでしょうか?本人たちにも説明できないこのモヤモヤした気持ち、それが恋の始まりだったのかも知れません。

 気が付けば彼らは主人公であるあなたに夢中でした。野球でカッコいいところを見せたい、自分のピアノを聞いて欲しい、一緒に図書室で勉強したい。そんな姿は他人から見てもハッキリ分かる程素直なものでした。当然鈍くさい主人公のあなたでも気がつきます。だからこそ、シナリオの長さの割に数多く用意された選択肢は全て彼らとの距離感を決めるためのものでした。小学生だからと距離を置こうと思えばいくらでも距離を置けました。逆に真摯に付き合おうとすればどこまでも距離を短く出来ます。主導権は始めからこっちのもの。後は彼らの素直な気持ちをどう受け止めるかだけでした。

 最終的に3人とも主人公であるあなたと一緒のベッドで眠るところまで関係が深まりました。小学生とはいえ異性と一緒のベッドに入るなんて生徒と先生の関係ではありません。この段階で、きっとあなたも彼らに恋していたのだと思います。それは大人として子供に接するような対応ではなくちゃんと一人の異性として見ているという事。それでも彼らは小学生です。大学生の自分が付き合うには世間が許しません。その危うさこそがショタの魅力であり、大切にしなければいけない想いなのだと思いました。彼らがこれから再び出会い恋をするかは分かりませんし、むしろもう二度と出会う事はないと思います。そんな淡い青春の一ページを感じる事が出来た作品でした。ありがとうございました。


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