M.M ミスティックロンドン〜新米探偵のまいにち〜


<マウスオペレーションシステムを最大限使って多くの人と会話をしましょう>

 この「ミスティックロンドン〜新米探偵のまいにち〜」という作品は同人サークルである「サークルリンネ」で制作されたサウンドノベルです。作品自体発売されたのはだいぶ前のようですが私がこの作品を見つけたのはメロンブックスで物色している時で、可愛らしいパッケージと昨今では珍しい「マウスオペレーションシステム」のゲームという事で買ってみました。パッケージにはご丁寧に推定プレイ時間まで書いてあり、その時間は「3〜8時間」と1日かければ絶対終わる分量という事でそれも購入の理由でありました。感想ですが、コミカルな世界観で描かれる良質の謎解きゲーであったと思いました。

 まずは何と言っても「マウスオペレーションシステム」ですね。このゲームは自分で移動先を決めて自分で話す内容を決めます。そして話をしていく中で注目するべきポイントになると「Focus!!」と「Ignore」というコマンドが出て、それが注目するべきポイントで「Focus!!」を選べば新しいトピックが現れ、注目するべきポイントでないところで「Focus!!」を選ぶと主人公のホームズポイント(以下HP)が減ってしまいます。このHPがまた絶妙でして、0になるとその時点でゲームオーバーになり途中から強制リトライになります。しかもこのゲームは途中でセーブが出来ず中間ポイントで自動セーブになりますので、毎回毎回の「Focus!!」をよく考えて行わないといつまでも先に進む事が出来ません。ですが、このHPは場面移動や人との会話のなかで経験値が溜まっていくと最大値が上がります。最大値が上がると失敗できる回数も増えますので自然と死ににくくなるわけです。そういう意味で、謎解きゲーとしては珍しくゲーム要素が強めですので結構真剣になりましたね。中間ポイントまではそれ程長さはありませんのでしょっちゅうゲームオーバーになることはありませんし、何よりもよく人の話を聞いてシナリオを吟味すれば一回もミスすることなくエンディングまで行くことも可能です。総じて楽しいシステムでした。

 そして肝心のシナリオですが、長さの指定が「3〜8時間」という事で実際は2時間ドラマのサスペンス物程度の分量でした。上手く選択を間違えなければ3時間で終わりますし、何度もミスしても精々8時間以内には終わるという事だったのでしょう。中身についてですが、まあ様々なノベルを読まれている方にとってはさして斬新なものでは無いと思います。どこかで誰かが扱ったような内容ですので、感の良い方は途中で犯人が分かって様々なトリックや状況証拠を頭の中で組み合わせてさっさとエンディングにたどり着けると思います。まあそれだけ気軽にプレイできて後味無くサクッと終わらせる事が出来る内容だという事です。

 何よりも登場人物のパーソナリティが非常に魅力的でしたので、場面を移動しながら様々な人たちと話をすることそのものが楽しかったです。主人公はまだ探偵の経験がなくオドオドする典型的な小動物キャラでして、それに対して周りには我の強い個性的なキャラばかりです。当然そんな人たちに振り回されてすんなりと調査は進みません。ですがそんなドジっ子な部分もこのキャラクターの魅力ですし、そうやってこの作品の世界観にゆったりと浸ることがある意味この作品を楽しむことになると思います。ある意味シナリオはおまけで各キャラクターの掛け合いをマウスオペレーションシステムをふんだんに使って味わうというのがもしかしたからこのゲームのテーマになるのかも知れません。

 ちなみにシステム面で結構データ容量を節約しているみたいで演出や背景と言った部分はさほど拘っているようには見えませんでした。ですが逆に動作は速かったですので、こういったマウスオペレーションシステムではこのくらいが調度よいと思いました。様々な場面を移動して様々なキャラクターと会話をしなければいけないゲームで、動作が重いのは致命的ですからね。そういう意味でも余計なものを削ってマウスオペレーションシステムをストレスなく楽しめるよう環境を作ったのは非常に良かったと思いました。

 という訳で短いながらも良くまとまっていて楽しむ事が出来ました。もっともっとこの世界観に浸っていたかったですね。是非同じようなシステム同じようなキャラクターで新しい作品を作ってほしいと感じました。本当短時間で終わりますので時間のない方にもおススメです。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<人と会話する事、それが事件の真実に近づきミスティアの成長につながる>

 楽しかったですね。謎解きも楽しかったですけどやっぱり多くの登場人物と会話出来た事が一番楽しかったです。そして調査を進めていく中で主人公も探偵として大切なものを探していき、いつまでもオドオドした正確ではなく最後はちゃんと自分の口で犯人を言及出来た事が一番嬉しかったですね。

 主人公であるミスティアはとにかくまじめで一生懸命な子でした。そんな彼女が探偵であるセレーネに憧れて友達であるマリィから助けを求められているとなれば、当然自分が探偵として事件を解決したいと思うのは時間の問題だったわけですね。そんなミスティアの心の中を見抜いていたセレーネの策略で、この物語はスタートすることになりました。

 おそらくセレーネの手にかかればこの事件はもっと早くに終わったのではないかと思います。結果を見れば衝動的な犯行でしたので状況証拠や物的証拠は比較的多くあり、それらを繋ぎ合わせればあっという間に真実にたどり着けたんだと思います。それでもこの事件をミスティアに全て任せたのは、ミスティアの持ち前の一生懸命さと友人を思う心にプラスして探偵としての素質を見出したからなんだと思います。後はきっとセレーネ本人も割と激務だったのではないかという事ですね。冒頭でセレーネは寝起きが悪いキャラ設定でしたが、普段の会話や実績を見る限りそんなキャラクターであるとは思えませんでした。ではなぜ彼女が朝に弱いのか、単純に仕事が忙しかったからなんじゃないかと思っています。それだったら後任としてのミスティアを一人前にする意味でも経験を積ませたかったのではないでしょうか。ましてや今回の事件は友人の彼氏が殺されたという事件です。ミスティアにとってデビュー戦としては調度良かったのかも知れません。

 トリックとしては良くある話ではあると思いました。あくまで衝動的な犯行ですのでそれ程深みはありませんので、その真実にたどり着ければ事件は解決でした。ですがその真実にたどり着くためには多くの人と会話をしその中から得られる事実を繋ぎ合わせる必要がありました。ミスティアにとってこの事が一番苦手だったわけですね。冒頭でも話してましたが「自信のない探偵には誰も協力しない」訳ですので、自分に自信を持ち友達を助けたいという思いを達成する信念があって初めて犯人特定につながったんだと思います。そういう意味ではこの事件はミスティアにとっての成長の舞台と呼べるのかも知れません。

 いずれにしても個性的なキャラクターが織りなすシナリオは見ているだけで気持ちがほっこりするものでしたし、それを自分の選択次第でいくらでも見る事が出来るマウスオペレーションシステムは最適だと思いました。ただ文章を読むだけのサウンドノベルしかここ最近やってなかったのでこういったものは新鮮でした。是非次回作があるのならプレイしたいと思いました。


→Game Review
→Main