M.M マブラヴ オルタネイティヴ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
10+ 8 8 98 35〜50 2011/1/10
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<…これは凄いゲームだ>

 …もう圧巻です。色々と言いたい事はありますが、とにかく凄いの一言で済んでしまうくらい凄い作品でした。これは前作である「マブラヴ」の続編にあたりますので何かしらレビューを書くにあたってマブラヴのネタバレは必須ですが、そのあたりはネタバレありの方に全て持って行って、ここではこれからマブラヴシリーズをプレイする事を検討されている方の為に「マブラヴ」と「マブラヴ オルタネイティヴ」の関係についてのみ話そうと思います。

 まず言っておきたい事は、マブラヴをプレイしてからこの「マブラヴ オルタネイティヴ(以下オルタネイティヴ)」をプレイしていただきたいという事です。それはオルタネイティヴがマブラヴの続編という意味もありますが、それ以上にマブラヴの中にある「マブラヴ エクストラ(以下エクストラ)」と「マブラヴ アンリミテッド(以下アンリミテッド)」の2つと、このオルタネイティヴの3つを合わせて初めて「マブラヴ」というゲームになるからです。

 それでは初めに「マブラヴ」の中にある「エクストラ」と「アンリミテッド」について話します。これはマブラヴの中にエクストラとアンリミテッドの2つのゲームがあるという訳ではありません。シナリオの関係上舞台設定が大きく変わるターニングポイントがあるのですが、そこで便宜的に再スタートしやすいようにエクストラとアンリミテッドと区別しているだけです。流れとしては最初にエクストラをプレイする事になり、一定の条件をクリアするとアンリミテッドに自動的に移る事になります。これについてはあらかじめ攻略順序が決まっていますので流れに沿ってプレイしていただければ良いかと思います。

 それでは次にオルタネイティヴについて話します。オルタネイティヴはマブラヴ発売から3年後に出されたという事でもちろんエクストラとアンリミテッドの内容を統括したものになっております。実際プレイしていただければ分かりますが、エクストラとアンリミテッドだけではシナリオの疑問点や世界観の設定について解決する事は出来ません。それらの謎は全てオルタネイティヴをプレイしていただくと分かる仕組みになっており、自動的に物語も終焉に向かっていきます。ゲームスタート時ですが、ちょうどアンリミテッドの最後からとなっておりますのでアンリミテッドの後すぐにオルタネイティヴをプレイしていただいて差支えないと思います。まあ、事前にエクストラやアンリミテッドの疑問点を整理して気持ちを落ちつけてからプレイする事を私は勧めます。

 そしてこの事はオルタネイティヴの最大の特徴にも関係しております。多少の選択肢はありますがシナリオは基本一本道です。ですがそれでもプレイ時間は相当長くなります。私で30時間かかりました。1シナリオで30時間というのは滅多にないのではないでしょうか。そういう意味も込めて、アンリミテッドを終了したらいったん休憩し、2、3日置いてからプレイする方が持続力的に案牌かと思います。

 まあ、アンリミテッドが終わった人ならそんな休憩時間が惜しいと思うくらいにサッサとオルタネイティヴをプレイしたいと思うでしょうね。そしてそんなプレイヤーの期待に完全に応えてくれます。冒頭で凄いゲームだと話してますが、それ程までにこのオルタネイティヴというゲームは凄いのです。人によって好みはありますのでもちろん好き嫌いはあると思います。ですが、「凄いゲームですか?」という質問に対しては、全員が「凄いです。」と応えざるを得ないでしょう。

 という訳で、ここではオルタネイティヴの感想というよりもマブラヴから合わせた全体の感想として書きました。トータルのプレイ時間は非常に長いですが、それに見合った感動が待っている事は間違いありません。是非プレイしていただきたい作品です。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<「あいとゆうき」が登場人物の「立脚点」を動かすのでしょうね>

 …これからオルタネイティヴの感想を書こうと思うのですが、正直なところ本当に凄いの一言しか頭の中に出てこないのが事実です。色々と言いたい事はあるのです。それでも、この物語においてそれらを議論する事に意味はないのだと思っています。理由は、結局この物語の立脚点は「あいとゆうき」なのですから。

 まずは見事にエクストラとアンリミテッドの伏線を回収してくれました。そしてその伏線の答えは完全に私の予想の斜め上を行ってました。オルタネイティヴ計画の全貌、脳髄の正体、白銀武の時空移動の正体、BETAの正体、あらゆる要素が綺麗にまとまってました。そんな中で物語は少しずつ進行しており、その中で登場人物はそれぞれで戦う意味とそれに立ち向かう為の「あいとゆうき」を身につけていくのかなと思いました。

 このゲームの見どころはゲーム内の独自理論である「因果律量子論」や鏡純夏と白銀武の思いの交差がメインですが、それ以外にも日本人としての生き方や軍としての行動など現在の世界情勢の中で忘れてはいけない観念についても詳しく語られていました。本来こういった話題はタブーであり抑止されるものなのかなと思ってましたが、そんなことはなくむしろ徹底的に描く事でリアリティを追求し、ただのSF作品として終わらせない結果を生んだのではないかと思います。人によっては帝国軍や国連軍の話題は無駄だという感想を持った方もいると思います。実際物語の主軸とはちょっとズレていますし、さっさと伏線を回収したいという思いもあったでしょう。ですが、最終的に登場人物の「立脚点」を考える上でこの無駄とも思える世界情勢の説明は実はある意味一番重要なのです。

 人類みな思っている事は同じなのです。BETAを駆逐し平和な地球を取り戻したいという思いは全世界共通です。ですが、一人一人が戦う本当の理由は様々であり、そういった僅かな思いの差が人間らしさなのではないでしょうか。そして、そういった些細な思いの差をそろえる意味でも、日本人としての生き方や軍としての行動を長く表現する必要があったのではないかと思います。結局最後まで一人一人の立脚点は違いました。それでもそれぞれの立脚点に納得出来るのはあの長いバッググラウンドがあったからだと思います。そういった世界情勢の話とSFの話と全て統括してこそマブラヴの魅力なのだと思います。

 そして、それぞれの登場人物が見出した立脚点を起点に自分の生きる道を探る訳ですが、その原動力が「あいとゆうき」なのだと思いました。私の中で「あい」は人への思い、「ゆうき」は自分への思いと置き換えてます。自分の立脚点を起点に自分の信じる「あいとゆうき」をもって行動する、これが全てでありこれが出来たからこそオルタネイティヴ4は成功したのかなと思っています。物語の伏線の回収はもちろん大事ですが、それらバッググラウンドの要素を持って「さあ!登場人物はどうする!?」というのが大事です。その起承転結で言う結の部分をしっかりと信念を持って語ってくれた事はプレイヤーにとっても大きな喜びではないのでしょうか。

 正直言えば「因果律量子論」については原子核物理を先行してきた私に言わせてみれば突っ込みどころ満載です。それらしい言葉を並べて恰好はついてますが記憶の流出や並行世界の説明には現実の「多世界解釈」や「エントロピー増大の法則」と比較してどうしても穴があります。ですがそんなマイナス要素は全く評価を動かすものではありません。あくまで登場人物が立脚点を持ち、それをあいとゆうきを持って突き進む構図が見えれば良いのです。

 まとめます。非常に膨大な時間を使った世界設定の説明やSF世界観の描写、張り巡らされた伏線とその回収、登場人物の魅力、どれをとっても最高級でした。また、随所で展開されるアニメーションや立ち絵のみでの細かな演出もこれまでプレイしてきたサウンドノベルのどれよりも素晴らしい技術でした。そしてそんな壮大な世界観やゲームシステムの上に乗るシンプルな「あいとゆうき」というテーマ、見事にまとまっていました。これを超えるゲームはそう無いでしょう。サウンドノベルの可能性を見る事が出来ました。素晴らしかったです。ありがとうございました。


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