M.M MOE!! ERA




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 - 72 2〜3 2020/4/1
作品ページ サークルページ(作品ページと同じ)



<日本の「萌え」という物を本当に良く研究し理解していると思いました。みんな可愛いです。>

 この「MOE!! ERA」という作品は、同人サークルである「Comfy Company」で制作されたビジュアルノベルです。切っ掛けはC97で同人ビジュアルノベルの島を回っている時でした。とあるお誕生日席のブースにて、一際元気なサークルさんがありました。そこにいらしたのは全員白人の男女の方々でした。聞けば、なんとロシアより今回コミックマーケットに参加されたとの事!これは熱いなと思い真っ先に作品を手に取らせて頂きました。タイトルは「MOE!! ERA」です。「萌えの時代」という直球で分かり易いタイトルがまた良いですね。C97当日に頒布されたのはまだ体験版との事で、その後Steamで完成版が頒布される事を待っておりました。Steamで無料で頒布されておりますので、是非お気軽にプレイしてみて下さい。

 タイトルにあります通り、この作品はいわゆる「萌え」という物を徹底的に追求した作品となっております。舞台はとある学園で、登場するのは3人の同級生と1人の先生です。4人とも勿論女性で、しかもとびきりの美人です。立ち絵でもスチルでも共通ですが、とにかく人物が細部にまで細かく描かれているのです。しかも、1人は快活、1人はお淑やかで巨乳、1人はちびっこ、と属性もハッキリと分かれております。ちなみに先生は眼鏡をかけております。これだけで十分日本に数多くあるギャルゲーの定石を網羅しております。そして、その立ち絵ですが非常にバリエーションが多いです。状況に応じて細かく変化し、感情豊かに人物を表現しております。しかも、その立ち絵が大袈裟なくらいアクティブなポーズを取っているのです。この辺りは日本のギャルゲーも見習うべき姿勢かも知れませんね。非常に良く研究されていると思いました。

 その他の要素についても丁寧に作られておりました。例えば背景描写ですが、教室の様子や自室の様子など丁寧に再現しておりました。基本的にロシア語が描かれているのですが、時々日本語が入るのも凄いと思いましたね。また、Steamだからなのか分かりませんが背景が動くんですよね。風が吹いてカーテンがはためく様子、夜の街の中で電光掲示板が変化する様子、そのような高い技術も垣間見れました。BGMもバリエーションが多く、日本の同人ビジュアルノベルやフリー素材では聴かないオリジナルのサウンドに思えました。じんわりと心に染みわたる感じの曲が多かったですね。システムについても一通りの機能が揃っております。少しセーブスロットが少ない気がしますが、それ程不自由する要素ではありません。この辺りもまた日本のビジュアルノベルを研究されている様子が伝わりました。

 ただ一点残念な部分がありました。それは翻訳の精度です。この作品はロシアの方が作られたという事で、Steamではロシア語を始め、英語、日本語、中国語でプレイする事が出来ます。私は日本語でプレイしたのですが、残念ながらとても機械的な翻訳に思えました。どうしても、登場人物の感情が乗って来ないのです。まあ、この辺りはどうしても仕方がない部分なのかも知れませんが、登場人物の魅力を引き出すのはテキストだと思っている私にとってはとても勿体ないなと思いました。英語でも読めるのですが、あいにく私は英語圏の文化が分かりませんのできっと登場人物に気持ちを乗せられないんだろうなと思います。ある程度はプレイヤーでその時に何を言っているのかを補完しながら読む必要があるかも知れません。この辺りは、言葉の壁を感じましたね。

 プレイ時間は私で2時間45分でした。選択肢が幾つかあり、それによってエンディングも分岐します。どうやらエンディングは8つあるみたいですが、このプレイ時間は4つのエンディングにたどり着いた時間であり全てのスチルは網羅しております。基本的にはそれぞれの登場人物に寄り添う選択肢を選べば問題なく目的のエンディングにたどり着けると思います。基本的には日本のギャルゲーを模した学園生活を描いているのですが、途中ロシアの文化を感じるイベントも用意されております。授業の様子はその典型だと思いました。特定のテーマでディベートをしたり、キャリアデーと呼ばれる学生がプレゼンをするイベントがあったりと、新鮮でした。そのようなロシアの文化を感じながら、是非それぞれの登場人物とのエンディングを見届けて下さい。ロシア人が日本のギャルゲーを作ってみたら、こんな素晴らしいものが出来ております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<ギャルゲーはゲームでありヒロインはフィクション、そんな当たり前の事をハッキリと明言する事のなんと大変な事か。>

 最後までプレイして、この作品は明確に女の子と一緒になる事を目標した作品だと思いました。本当にギャルゲー、特定の女の子と一緒になるべくしっかりと選択肢を選んで先に進む事が求められるのです。それが達成されたから、最後彼女たちはプレイヤーを祝福し、エールを送って離れていったのだと思います。明確なハッピーエンディング、これもまた日本のギャルゲーでは見ないシナリオだと思いました。

 始めは普通のギャルゲーだと思いました。私はななをメインに攻めて、無事にエンディングにたどり着きました。ですが気になったのは、ななを始め彼女たちがいわゆる普通の人間ではなかったという事、そして冒頭語られていた「大多数の人間は決して何にもならない」という言葉です。私は、これは主人公はどこか夢の世界に来たのでありそのなかで本当に恋愛シミュレーションをしているのだと思いました。4日間という限られた期間で女の子と結ばれるのか、そうしたシミュレーションでした。それが確信に変わったのは、2周目からでした。2周目ではタイチのサポートがあり、途中共通部分の会話は簡略化され、意味のない選択肢が削られました。明確にギャルゲーだという事を突き付けられた気がします。

 それでも、魅力的な女の子を目の前にしておりますので感情移入してしまうのは当たり前だと思います。願わくば、意中の女の子と「それからずっと2人は幸せに過ごしましたとさ、めでたしめでたし」となりたかったと思います。しかし、それは叶わないのです。何故ならば、これはギャルゲーであり恋愛シミュレーションだからです。シミュレーションが終わったらそれはゲームの終わりだからです。私は少しビックリしてしまい、寂しく思ってしまいました。ですが、それはほんの一瞬でした。何故なら、彼女たちはシミュレーションが終わったからといってただ居なくなるのではなく、「いつまでも見守っててあげる」と言ってくれたのですから。人間じゃなくてごめんね、でも一緒に居た時間は楽しかったよ、いつまでも見守っててあげる。ある意味しっかりとプレイヤーに夢から現実へと戻してくれるのです。これは逆に考えれば優しさなのかなとすら思いました。

 日本のギャルゲーであれば、きっとヒロインとのその後を連想させるように終わらせます。何故なら、その方が想像力が膨らみいつまでも自分のヒロインでいてくれると思えるからです。この「MOE!! ERA」のように敢えて終わりをハッキリと宣言する行為、それはそのヒロインとのその後の人生を打ち切る行為、キャラクターを売るという意味では逆効果だと思います。だからこそ、この作品は前衛的であり「萌えの時代」の名前に相応しいと思いました。私は、逆に勇気を貰いました。特にグランドエンディング直前で各ヒロインが掛けてくれた言葉は、人生においてとても大切な事ばかりでした。親に電話しなさい、自分を褒めなさい、暗い人は気にするな、これ程優しいヒロインはいないかも知れません。元々「MOE!! ERA」は営利目的ではありませんし、このように本当の意味でプレイヤーを励ますのが目的だったのかなと思っております。そういう意味で、きっとこの作品はこれでキッパリと終わりなんだと思います。彼女たちとの未来は、自分で夢見るしかありませんね。

 色々と書きましたのでそろそろ閉めようと思います。ネタバレ無しでも書きましたが、とにかく日本のギャルゲーという物をよく研究しておりました。ヒロインは誰もが可愛く、萌えポイントを的確に掴んでいると思いました。そして日本のギャルゲーでは殆ど見る事が無かったメタ要素はギャルゲーというものの在り方を根本的に考えさせるものであり、プレイヤー一人ひとりの人生に訴える物でした。ギャルゲーはあくまでゲームであり、ヒロインはフィクションです。そんな当たり前の事をハッキリと明言する事のなんと大変な事か。これもまた、ロシアの方らしい着想なのかも知れません。是非、次は純粋なオリジナルの物語が読みたいと思いました。非常に挑戦的な作品でした。ありがとうございました。


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