M.M みずいろ
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
8 | 8 | 10+ | 85 | 20〜30 | 2006/5/17 |
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<非常に綺麗に描かれた、安心してプレイできる学園物>
「ねこねこソフト」の作品の中でおそらく最も有名であり、「普通の学園物」というコンセプトで非常に人気の有る作品が、この「みずいろ」です。コンセプトでも言っている通りこの作品は「普通」をテーマにしていますので、特に真新しい物はありませんでした。しかし、そんな「普通」の学園物だからこそ表現できる魅力があるものだと考えさせられる作品でした。
このゲームの設定は、一月後半から二月にかけての冬の時期を描いた学園物です。登場人物は、世話好きで素直な妹、ポンコツの幼馴染、口うるさいクラスメイト、おっとりした先輩、物静かな後輩と、本当に真新しい物はありません。シナリオも変にファンタジーという訳でもなく、だからといって起伏が激しいというわけでもありません。まさに「普通」というよりも「平凡」なギャルゲーです。一見すると特別やる必要が無いような印象を受けますが、この作品の魅力はそういった個々の部分にあるのではありません。それは、これらの普通の要素を非常に丁寧に描いた事によって生まれる雰囲気にあります。
まず雰囲気に関してですが、BGMや背景を非常に丁寧に描いているのはもちろんなのですが、それらが自己主張することはありません。あくまでシナリオが進行していく上での飾りでしかありませんので、心地よくゲームを進めていく事が出来ます。そして、キャラクターの描き方やシナリオが非常に分かりやすくなっています。あくまで「普通」をコンセプトとした物語ですので、トリッキーな伏線も無く、変に頭を使わずシナリオを読み進める事ができます。
そして、このゲームの最大の魅力と言えると思うことは、「安心して」プレイできるという事だと思います。ゲームという物を作る上で、基本的にプレイヤーに何かしらの印象を持たせようとする試みは当たり前にあると思います。その内容として考えられるのは、シナリオに起伏をつけるという事、特徴のあるキャラクターを出すという事、演出に拘るという事などの様々な試みがあります。それによって、確かにプレイヤーはその作品に対して強い印象を持ち記憶に残ると思いますが、それは同時にプレイ中はそれなりの緊張感を持つ事になると思います。。その事は決して悪いことではありませんし、寧ろ当たり前なのだと思います。しかしこの「みずいろ」というゲーム、あらかじめ「普通」のゲームであるという事を断っており、その公約どおり全てが終わっても本当に普通だったという印象しか受けません。これは言い換えれば、変に気を張る必要が無くリラックスしてプレイ出来る事を意味しています。これはまさに「安心して」プレイ出来るという事を意味しており、ゲームを起動するに当り全く抵抗を感じる事がありません。ここまでリラックス出来るゲームはそうそう無いと思います。
とにかくありとあらゆる面において「普通」のゲームですが、ここまでストレス無くプレイ出来るゲームはそうあるものではありません。最近の色々斬新なゲームをやって疲れてきた方には是非オススメです。気分転換のつもりでプレイしてみては如何でしょうか。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<シナリオによって設定が変わるキャラクター>
このゲームの特徴として、過去パートでの選択によって現在パートのキャラクターの設定が全く変わるという点があります。例えば、「進藤シナリオ」に入ると進藤むつき(本当はむつきではありませんが)の正確は非常に大人しいですが、それ以外のシナリオではやかましい性格になっています。「日和シナリオ」では、もはや完全に早坂日和の存在の扱いが違う物になっています。まあ、これらの原因は全て過去パートでの主人公の行動に原因がありますし、そういう意味では首尾一貫してますので良いと思います。しかし、このシステムには致命的な欠陥があります。
それは、そのヒロインのシナリオ以外のシナリオを先にやってしまうという事によって、そのヒロインの本当の設定がばれてしまい、シナリオ上重要なネタバレが起きてしまうという事です。例えば「進藤シナリオ」についてですが、初めてやったシナリオがこれなら問題は無いのですが、先に別のシナリオをやってしまいますと「進藤シナリオ」での進藤の性格の違いに完全に違和感を持つ事になります。そして、この進藤の性格の違いはこのシナリオの一番の肝の部分となっています。これは全体のバランスを考えてみても非常に致命的な欠点だと思います。
そして、このシナリオごとのキャラクターの性格の違いはその後に無数に出されているネタ的ショートシナリオにも少なからず影響を与えています。プレイヤーによって「どの設定のヒロイン」が好きか分かれるかと思いますが、基本的にそのシナリオでのヒロインの性格を反映した物はほとんど無いようです。ねこねこソフトの戦略がどういうものかは分かりませんが、作品の中で「生きていた」ヒロインが作品を飛び出した途端「死んでしまった」ような印象を受けてしまいました。「普通」を目指したこのゲームは、その後どんどん「普通」から遠ざかっていくのでしょうか。