M.M 右に人間、左には猫、私の耳に届く声




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 - - 65 〜1 2018/4/1
作品ページ(なし) サークルページ



<もしかしたらあなたにも訪れるかも知れない、そんなちょっとした不思議はお話です。>

 この「右に人間、左には猫、私の耳に届く声」という作品は、同人サークルである「Studio MEENA」で制作されたビジュアルノベルです。この作品をプレイした切っ掛けですが、すみません正直覚えておりません。確かTwitterか何かでどなたかにオススメされた気がします。プレイした切っ掛けは、私のブラウザのショートカットを整理しているときでした。直接この作品のふりーむ!のリンクページが保存されてましたので、きっと当時の自分が残したのですね。このままにする理由もありませんので、どれどれとプレイしてみました。

 この作品について少し調べたのですが、プレイ時間は約15分で制作期間は10時間と超短編の様です。その情報の通り、本当あっという間に終わってしまいました。という訳で、ネタバレ無しではありますがここではあらすじも割愛させて頂きます。タイトルの通り、右からは人間の言葉が聞こえるのに左からは猫の声が聞こえるという不思議な体験をしたとある女の子が主人公の物語です。青春の甘酸っぱさを噛み締める事が出来るホッコリと出来る作品となっております。

 その他いくつか特徴ですが、BGMや効果音といった音はありません。淡々とテキストを読み進めるだけです。そのテキストは縦書きになっておりまして、文庫本を読んでいるような感覚になる事が出来ます。背景ですが、最低限の線画が幾つかあるだけです。本当に10時間という期間限定で作り上げたんだなと逆に驚いております。ですが、そんな最低限の情報だけで確かにシナリオが完成しており、個人的に最後のスチルは物語の展開的にもグッとくるものがありました。伝えたい事をシンプルに伝える、テキストだけでは不十分な情報を必要な分だけのスチルで保管し確かに届くものがあった作品でした。

 プレイ時間は私で13分でした。本当にあっという間です。選択肢もありません。ファイル容量も僅か4.3MBととてもスリムです。是非ちょっとお茶を飲むような感覚でサクッとプレイしてみて下さい。きっと青春の甘酸っぱさがフワッと広がると思います。そして、あなたが同じ状況になったらどうするかも併せて想像してみて欲しいですね。誰にでも訪れるかも知れないシチュエーションです。その上て、ちょっとした不思議な出来事が加わっただけです。もし自分が思春期の高校生だったら、そんな気持ちでプレイするとまた味わい深いかも知れません。そんな作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<思慮深さは想像力に必要な事、それは人間にとって一番大切な事だと思いました。>


「こんなのが若さだというなら早く終わってしまえ!」


 恐らくですけど、主人公の女の子はすごく恥ずかしかったのだと思います。傍から見れば、猫を捨てた家族が再び拾いに来た、そして元通りに戻った、それだけです。自分が勝手に騒いで、勝手に怒って、勝手に不安になっていた、それだけです。結局のところ時間は進みますし物語は進んでいきます。そこに、自分が関わっていた軌跡など残らないのかも知れません。それでも、彼女は知る事が出来ました。猫だってちゃんと人間らしい感情を持っているという事を、あの鳴き声に精いっぱいの感情を詰めているという事を。これが切っ掛けで、少しでも前向きになれたのであればそれで良かったのかも知れません。

 主人公は何故泣いていたのでしょうか。きっと本人も良く分かっていないのだと思います。何故か知らないけど泣いてしまった、そして居ても立っても居られなくなった。そんな経験、皆さんもあるでしょうか?私は結構あるんですよね。ビジュアルノベルを読んでいて、何の事は無い些細なシーンで涙が流れる事はしょっちゅうあります。自分には関係無いですけど、どこかの誰かが一生懸命頑張っている姿を見て涙が流れたりもします。あれって不思議なんですよね。人間って、感情が揺さぶられるとどうして涙が出るんでしょうね。きっと主人公もそんな感覚だったのだと思います。彼女が泣いたのは3回でしたが、それぞれ涙の意味が違ってました。焦り、喜び、そして恥ずかしさです。どの涙にも優劣は無いと思います。どれもが主人公の本当の気持ちなんだと思いました。

 私が一番印象的だった言葉は「あ、駄目だ」「この子には負ける」でしたね。そしてきっとこの気持ちに気付いて「恥ずかしい」と思ったのだと思います。主人公はどうして猫を飼おうと思ったのでしょうか。命を失いたくないと思ったからだと思います。ですが、実はそれだけではない事がここから読み取れますね。主人公は、自分がきっと猫の一番になりたかったのだと思います。だから、勝ち負けなんて言葉が出てくるんですね。猫を思う気持ちはこの子には勝てない、それだったら猫はどう思っているのか?それしか主人公が縋れるものはありませんでした。そしたら猫はこう言ったんですよ。「ママ」って。もう完敗ですね。そしてそんな気持ちになる自分を恥ずかしいと思ったのだと思います。ああ、なんという青春なんでしょうね!主人公にとっては黒歴史、でも私にとっては実に思春期らしい気持ちの揺れ動きで嬉しくなりました。

 最後後日談、主人公は当時を振り返って「自分が前向きになり、ほんの少し思慮深くなったように感じられる」と言ってました。この思慮深さが想像力に繋がるのだと思います。もう主人公は猫を見ても拾わないかも知れません。それでも、猫が何を考えているのかを想像する事は出来ます。何も考えないのではなく分かった上で目を背ける、それが出来るようになるのが大人になるのかも知れません。それでも、思慮深さを持っていれば大丈夫です。きっと主人公はこれからも楽しく刺激的で涙を流す人生を送る事と思いました。ありがとうございました。


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