M.M 永遠のメルディラージェ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 8 - 74 3〜4 2016/2/27
作品ページ サークルページ リズベルルの魔7 完結篇同梱


フリーゲーム夢現



<水を中心とした高品質で動きのある演出が作り出すファンタジーを体感して欲しいですね。>

 この「永遠のメルディラージェ」は同人サークルである「ときてっと」で制作されたビジュアルノベルです。ときてっとさんの作品は現在リズベルルの魔の方をプレイしているのですが、その中の「リズベルルの魔7完結篇」の中に収録されているのが今回レビューしている「永遠のメルディラージェ(以下メルディラージェ)」です。ときてっとさんがお送りしているほんとうの物語シリーズの1つではありますがリズベルルの魔との直接的な繋がりはありません。それでもお得意の美しいCGとメカニックな造形は健在であり、リズベルルの魔とは少し毛色の違った世界観を楽しむ事が出来ます。

 主人公である伊吹芽ルナはとある事情でメイリュウ学園という霧に包まれた学校に転校生としてやってきます。そこは白い門に囲まれ、学園内の至るところに水槽が設置され無数の魚たちが泳いでいる幻想的な学園。そんな学園らしく校風は自由で、生徒達も生き生きと学園生活を送っております。そんなメイリュウ学園にはルナの幼馴染である永倉ハルカが在籍しており、彼に色々と教えてもらいながら学園生活をスタートさせます。気さくな女子生徒である森園クゥラやその友達である花咲リリシェと共に穏やかな時間を過ごしていくのですが、少しずつ違和感を感じていきます。そんなメイリュウ学園に語り継がれている人魚の噂。その名こそタイトルになっているメルディラージェであり、ルナの数奇な運命が動き出す事になります。

 冒頭でも書いておりますが、この作品をプレイする時には既にある程度リズベルルの魔をプレイされていると思います。あの壮大なファンタジー世界と美しいキャラクター描写、そして3DCGを駆使したロボットの動きは中々見る事が出来ないものでありときてっとさんらしい演出だと思っております。そして表情や衣裳差分の多い立ち絵もまた拘りであり、キャラクターに対する愛着を感じます。そんなリズベルルの魔で感じた魅力はそのままこのメルディラージェにも生かされており、違う世界観でありながら圧倒的な雰囲気を感じることが出来ます。リズベルルの魔とは違った一風変わった幻想的な雰囲気に酔いしれ、是非メルディラージェの謎を解き明かして欲しいですね。

 リズベルルの魔と比較して特に凄いと思ったのは水の描写ですね。人魚が登場するという事で当然水の描写が多数ですのですが、そのバリエーションが大変多いです。昼の太陽に照らされた水槽の姿や深度を増すごとに徐々に深くなる青の描写などがとても丁寧であり、一枚一枚じっくりと鑑賞していたくなります。そしてそんな水の中に佇む魚たちやメルディラージェの姿はこの世のものとは思えず、気が付けばクリックする手を止めてしばらく見入ってしまいました。魔性ではないのですがこれ程までに人を引き付ける美しさに出会えたのは本当に久しぶりです。主人公ならずとも誰もがメルディラージェに夢中になり虜になってしまうのが頷けます。

 プレイ時間は私で3時間45分程度掛かりました。全部で三章構成になっており、それぞれ45分〜1時間30分程度で終える事が出来ます。そして全てをプレイし終えますとそのまま番外編が始まり、その先にリズベルルの魔1+2で解禁できなかった永遠時計のパスワードが解禁されます。当初は永遠時計の解禁のためにプレイを始めたのですが、勿論これ単体だけをプレイする為に購入しても良いと思います。リズベルルの魔は非常にボリュームのある作品ですがメルディラージェは実質3時間程度で終わりますので初めての方には調度良いです。そして初めてプレイされた方はそのままリズベルルの魔に入り込んでしまう事でしょう。是非高品質で動きのある演出が作り出すファンタジーを体感して下さい。オススメです。

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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<前を向いている人って、その人を支えている人が必ずいる気がします。>

 人魚姫はおとぎの話、それは決して現実には存在しない夢の世界の物語です。ですが夢は覚めなければ永遠に夢のままでその世界の中に残り続ける事が出来ます。それはとても幸せな事。この作品をプレイし終わって、果たして全ての夢は本当に覚めなければいけないのかとても考えさせられました。これはプレイした人の数だけ感想が別れる結末だなと思いました。

 私も途中まではずっと夢の中に留まるのではなく現実を見て前に進むべきだと思いました。ですが、この学園に存在している生徒は既にみな死んでおり現実世界に帰ることができない存在でした。この事を知ったとき、自分はなんて浅はかな事を言ってしまったんだろうと思いましたね。世の中にはどうしようもなく理不尽な事もあります。それは自分一人の力では解決できず、周りの支えがないと耐えられないものです。そんなものが急に襲いかかって来た時、それでも現実を見ろと言えるでしょうか。ましてや死んでしまったものが生きていた時の思い出に縋って永遠の時間を生きていると知ったとき、早く成仏しろなんて言えるでしょうか。余りにも悲しい現実。悲しい運命。そりゃあ生きているルナは周りに対して違和感を持つでしょうね。

 それでも、生きているルナの姿は輝いて見えました。別にルナ以外の学生がくすんでいる訳ではありません。誰が悪いとか悪くないとかそういう話でもありません。ですが、やっぱり現状を打破し前に進もうとしている人の姿は輝いております。言ってしまえば、この学園はルナの為の学園でした。学園のみんなも本当は分かっていたのです。ただ自分が死んでいるという事を認めたくないだけで、分かってしまえばあとは静かに消えていくだけです。では彼らが出来ることは何なのでしょうか。それは生者が迷い込んだ時に励まして元の世界へ返してあげることです。あの学園は、大切な妹が行方不明になりその身柄が大切な幼馴染の手で殺され本人は自殺したという事実を受け止められなかったルナが一時的に避難するための場所でした。そこで現実を知り、そのうえで覚悟を持って離れるまでの学び舎でした。

 私は別に全ての人間が前を向いて積極的に歩まなければいけないとは思っていません。足を止めて休むのもいいですし、社会からはみ出されても自分の大切なものを守れればそれでも良いと思っております。ですが、前を向いている人にはその人を支えている人が必ずいる気がします。どんな人でもたった一人で突き進む事は出来ません。様々な形で他人の影響を受けており、それが最終的に自分の糧になっております。ルナの周りには沢山の信頼できる存在がいました。たとえ自分が死んでしまってもなおルナの事を支えてくれました。ルナは彼らの想いに応えなければいけませんね。辛い現実ですが、何とか一歩一歩前に進んで自分だけの幸せを見つけて欲しいと思いました。

 最後に個人的な事ですが、後半メルディラージェの真実が明らかになる場面で使われたBGMの選択が凄く気に入りました。私、ダッタン人の踊りってかなり好きなんですよね。吹奏楽をやっている事もありある程度有名なクラシックは知っているのですが、ダッタン人の踊りを高校2年の時に初めて知って以来絶対に演奏したいと思っておりました。今のところ演奏する事は叶っていないのですが、いつか機会があれば吹いてみたいと思っております。この場面はシナリオ展開的にもBGM的にも個人的に超盛り上がりました!ありがとうございました!

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