M.M Magfilia




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 6 78 3〜4 2025/3/8
作品ページ(なし) サークルページ



<ファンタジー作品を楽しむ為の心配りが細部に込められている、プレイヤー目線の作品です。>

 この「Magfilia」という作品は、同人サークルである「白砂庵」で制作されたビジュアルノベルです。白砂庵さんの作品は、過去に「灰色の夜が明けたとき」をプレイさせて頂きました。個人的な白砂庵さんの印象は、綿密に練られたハイファンタジー設定です。剣と魔法が登場し魔力の大小や家柄によって身分や立場が決まってしまう、例えばハイファンタジーに対する一般的な印象はこのような感じかと思います。白砂庵さんの作品にもこのようなハイファンタジー設定の王道らしさはありますが、そんな単純なものではなく例えば魔法一つとっても属性が変わればそれまでの歴史的経緯から迫害を受けてしまったり、強すぎる魔力が故に身内からも嫌煙されてしまうといった複雑な事情が垣間見れます。そのような、丁寧なハイファンタジー設定が魅力であり今回レビューしている「Magfilia」でも見る事が出来ました。

 人間と魔族が存在し、互いに敵対している世界が舞台の物語。中心都市ルテティアから、一人の勇者が魔王討伐に向けて出発しました。その名前はジーノ、ある日人並外れた怪力が発露した事で勇者として任命されました。本人はそんな自分の怪力についてそこまで気にしている様子はなく、あくまで気さくで陽キャな性格の持ち主です。魔王討伐に向かう数日前、ジーノは一人の少女と出会います。彼女の名前はアンジェ、強い魔力を持っている魔人であり魔王をこの手で倒したいと心の底から願っております。そんなアンジェと、ジーノの友達であり魔法が使えるオリヴィアを含めた3人で、魔王討伐に向けて出発する事になったのです。サポートには友達であり占術師であるエミーとその妹であるフィーナも付いております。強い志を持っているというよりもどこかピクニックに行くかの様な軽い空気感での魔王討伐の旅は、思わぬ結末を迎える事になるのです。

 この作品のジャンルは「凌辱×魔王討伐ファンタジーノベル」となっております。凌辱という言葉が入っている通り、18禁です。上で書いたあらすじですが、おおよそプレイ開始から30分程度までの内容となっております。今作も前作同様のハイファンタジー設定であり、この時点でワクワク感が溢れてきました。RPGで最初の街から出る瞬間って、緊張と期待が交錯しませんか?まさにそんな気分を味わう事が出来ました。そして、この時点で人間と魔王・魔法やマナ・占術師といった専門用語が幾つも飛び交っております。これらの真の意味を理解するには物語を進める必要がありますが、既にそうした下地を整えておりますのでプレイヤーが抑えるべきポイントが明確になっております。ちゃんとお膳立てが出来ていて交通整理が出来ている状態で物語が進んでいく、これ程プレイヤーにとって安心感のある状況はありません。ファンタジーを楽しむには設定がしっかりしている事が重要だと思っております。その点を抑えており、流石の白砂庵さんだと思っております。

 その他の要素として、主要な女性キャラクターはフルボイスとなっております。一部収録環境の違いの為か音声のクリア加減にバラつきがありましたが、そもそも同人作品においてヒロインフルボイスというだけで驚きです。登場人物に絶対的な印象を付けてくれますので、やはり声の力は大きいですね。そして、主題歌があります。主題歌が流れるタイミングは、あらすじで書いたジーノ一行が中心都市ルテティアを出発する時です。さあ、これから冒険に出発だ!とプレイヤーに教えてくれるかのような絶妙なタイミング、この演出もワクワク感を後押ししてくれます。更に、前作同様マップ選択システムがあります。これも設定がしっかりしている事の表れであり、街や拠点などの位置関係や距離関係が一目でわかるのは大変親切です。明確に場面が変わるんだなという事をプレイヤーに教えてくれるので、頭の整理をするにも調度良いです。様々な要素がファンタジー世界観を楽しめるように作られております。

 プレイ時間は私で3時間40分でした。ネタバレになりますので詳しくは書けませんが幾つかエンディングが用意されており、とある選択をする事で分岐させる事が出来ます。真のエンディングを見るには必然的にそれ以外のエンディングを見る必要があり、その事が物語の真相を理解するのに必須となります。後半になるにつれ物語は加速的に展開していき、今まで知らなかった真実が明らかになっていくのです。こうした伏線回収などもまた、ファンタジー作品の醍醐味だと思っております。是非最後までプレイして頂き、彼らの物語の帰結を見届けてあげて下さい。プレイし終わったら、是非同時発売されている副読本も読んで頂きたいですね。勿論ネタバレ満載ですが、登場人物の裏話や裏設定もありとても楽しいです。良質なハイファンタジーの世界へ、是非とも旅立って頂きたいです。楽しい作品でした。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<困ったら隠さず全部話す、簡単なようでなんと難しい事なんでしょうね。>

 最後までプレイして、諦めない事の大切さを感じましたね。全員が幸せになる方法を模索し続けて、やっとそれを実現する事が出来ました。本当に何百年という長い年月をかけて、やっとこの物語は終わりを迎える事が出来ました。

 自分がそうなのですが、人ってどうしようもない問題や課題に直面した時にその解決策が提示されたら割とそれに縋ってしまう傾向があると思います。まるで神の救いが舞い降りたかのような、安心感と感動を覚えるのです。そして、その解決策が例え100点満点でなくても「まあ仕方がないよね」と思考停止してしまいがちです。だって、もう悩みたくないんですもの。どうしようもない状況にようやく射した一縷の望み、それを手放す事は中々出来る事ではありません。エミーが行った事はまさにこれで、アンジェを犠牲にする事でそれ以外の人を全員救おうとする作戦でした。十分立派な作戦であり、誰もエミーの作を非難する事は出来ません。仕方がないけど、これが最良だったと言われたらどうしようもありませんからね。それが、まず私たちがたどり着いたエンディングでした。

 ですが、エミーの作戦には一つ重要な視点が欠落していました。それは、この作戦はエミーが一人で考えた作戦だという事です。言い換えれば、誰にも相談していなかったという事です。勿論、アンジェを犠牲にして世界を救うなどジーノ達が了承するとは思えません。それが分かっているから、相談せずに一人で考えたのだと思います。ですが、それもまた自分の作戦が一番現実的で最も良い作戦だという驕りでした。これも皆さん経験あると思いますが、話辛い事って実は自分自身が一番気にしているだけで周りはそこまで重く捉えていなかったりします。なんだそんな事かと、意外と軽く捉えられて拍子抜けした事もあるのではないでしょうか。大切な事は、正しい情報や真実を全員で共有して、同じ目的に向けて足並みをそろえた時に想像を超えた力を発揮するという事です。それが、この作品で自分が一番良かったなと思った事でした。

 ジーノもオリヴィアも、アンジェの正体を知りませんでした。アンジェがまさにこれから自分たちが倒そうとしている魔王フォルコとクリスティーナの娘であり、人間と魔人の辛い歴史の果てにフォルコとクリスティーナが何百年も心を砕きながら留まっている事も知りませんでした。そうであるのなら、オリヴィアがアンジェを逆恨みするのも納得です。ジーノもどうしてもオリヴィアではなくアンジェを優先してしまうでしょう。ですが、心の底ではジーノもアンジェもオリヴィアも全員大好きで仲良しのはずです。わだかまりが産まれてしまったのは、お互いが本当の事を言ってなかったからでした。だからこそ、ジーノとオリヴィアは魔物の街にてアンジェや魔王フォルコとクリスティーナの真実を知る必要があったのです。

 真実を知ったオリヴィアは、もうアンジェを逆恨みする事はありませんでした。むしろ何百年も生き続けて両親の辛い姿を見続けたアンジェに対して協力したいという思いが芽生えました。そしてその事をアンジェやエミーとも共有し、誰も犠牲にならない方法を模索し始めたのです。結局のところ、誰か一人欠けても幸せにはなれない事が分かりました。フォルコが愛しているのはクリスティーナですし、クリスティーナが愛しているのもフォルコです。どちらか片方が欠けたらそれで終わりです。ですが、フォルコの魔力は強大でもはや誰の手にも追える物ではありません。ならば、やはりフォルコ自身によって自分を制御してもらいクリスティーナを開放するしかありませんでした。それを、ジーノやエミーの力で成し遂げアンジェは再び父と母に再会する事が出来ました。やれば出来るんですよ、誰も犠牲にならずに世界を救う方法はあったんですね。

 強大な魔力を持つフォルコがまだ生きていますので、人間としては不安に思う気持ちはあります。ですがそこは流石のルテティア王の器の広さでした。もう暴走するフォルコはいなくなった訳ですし、魔王を止めた勇者ジーノはここにいます。彼らを信じた事がルテティア王が王たる所以だと思いました。その後、フォルコとクリスティーナとアンジェは200年振りに魔物の街へ、ジーノとオリヴィアは恋仲になりました。それぞれがそれぞれの幸せの形を実現出来たんですね。これこそ100点満点の結末。その実現に必要だったのは、一人で抱え込まないで全部話す事でした。一人で悩んでしまうと、一気に視野が狭くなり100点でなくてももうこの方法しかないと思い込んでしまいます。そして、その殻を破るのはとても難しいです。彼らは幸せだと思います、これだけ信頼しあい全部曝け出す事が出来るのですから。私も、困ったら何でも話せる信頼関係のある人付き合いをしたいなと強く思いました。素敵な作品をありがとうございました。


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