M.M madhumui
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
3 | 7 | - | 60 | 〜1 | 2020/7/18 |
作品ページ(無し) | サークルページ |
<軽快なテンポで読める脱出系ビジュアルノベルです。セーブせず勢いで選択肢を選んでいきましょう。>
この「madhumui(読み方はマドフムイ)」という作品は、同人サークルである「FORTONSPACE」で制作されたビジュアルノベルです。FORTONSPACEさんの作品をプレイするのは今作が初めてです。切っ掛けはC97で同人ゲームの島サークルを回った時でした。正直な話、パッケージを一目見て手に取ってしまいました。何か信念を持ったような視線を向ける少年、そしてその後ろには暗い空と重厚な工業地帯が映っております。裏を見れば、どうやらこの作品は牢屋に捉われた主人公が何とかして脱出する物語の様です。登場人物も多数いるみたいですし、どんな仕掛けが待っているのか楽しみになりました。併せてどうやらこの作品は終末が近づいている惑星が舞台の様です。それだけで色々な想像力を掻き立てられます。暫く積んでましたのでいい加減プレイし、今回のレビューに至っております。
主人公であるアロウは、もう10年以上とある工業地帯にある牢獄に囚われておりました。アロウの首には、言葉を話す骨の監視人が引っ付いております。監視人の目的はアロウが脱出しない様に見張る事です。口は悪くアロウの事を見下している監視人、そんな生活にアロウは夢も希望も持っておりませんでした。ですが、そんな牢獄に1人の新しい囚人がやって来ます。名前はラムジーと言い、首に監視人が付いているアロウの姿を見て興味を持ちます。そして一つの提案をしました。一緒にこの牢獄を脱出しないか?と。難攻不落の牢獄から脱走できた人は誰もいません。そんな事は不可能だと思っているアロウですが、ラムジーは非常に博識で何故か脱出出来そうな気にさせてくれました。手始めに、アロウの首についている監視人を無力化したラムジーを信じて牢獄からの脱出を決行したのです。
この作品は脱出系ビジュアルノベルとなっております。あらすじの通り、主人公であるアロウと同じく囚人であるラムジーの2人で牢獄から抜け出すべく行動を始めます。脱出系とありますが、マップ移動などは無くあくまで選択肢を選んでいく形式です。ですがその選択肢の数は非常に多く、選択肢の中でアイテムを入手したり情報を入手したりしながら起点となる選択肢を間違えずに選んでいく必要があります。確かに脱出系ビジュアルノベルと呼べるものだと思いました。セーブスロットは非常に多いのですが、選択肢が登場する頻度も多いのでいちいちセーブしてたらゲームの進行に支障が出るかも知れません。ここは1つセーブせずに思った通りの選択を選んで進んでみて下さい。ゲームの進行中に定期的に山場がありますので、それを超えたらセーブするイメージが調度良いと思います。
そしてこの作品は立ち絵がヌルヌル動きます。いわゆる口パクとかそんなレベルではなく、本当にヌルヌル動くんです。流石Unityを使っている事はあると思いました。そして動作が非常に軽く、スキップも非常に速いです。そういう意味で、セーブを細かくとらなくても間違ってしまったらもう一度始めからやり直してしまえばいいんです。そして間違った選択肢でセーブを取るくらいで何もプレイに支障はありません。またBGMはどこか異世界を思わせるテイストの物が揃っております。作品の雰囲気と言いますか世界観を想像させてくれます。惜しいのはテキストですね。脱出ゲームらしい緊張感はあるのですが、それ以外の描写はあまりありませんので世界観の丁寧な理解は難しいです。ちょっと勿体ないなと思いました。
プレイ時間は私で30分でした。思ったよりも短かったなと思いました。途中セーブしなくてもいいと言ったのはこの辺も理由となっております。この作品ですが、実際のところ牢獄から脱出する事が目的ではありますがそれだけでは物語は終わりません。牢獄を脱出しても、脱走犯となったアロウとラムジーは指名手配されてしまい本当の意味で自由になる事は出来ないからです。最終的にこの物語はどんな形のエンディングを迎えるのか、そしてアロウとラムジーの運命はどうなるのか、是非そこまで見届けてみて下さい。軽快なテンポで脱出を楽しめました。面白かったです。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<それぞれの登場人物に味があり、だからこそより掘り下げたエピソードを読んでみたいと思いました。>
ネタバレ無しでも書きましたが、テキストが少なく勿体ないなと思いました。もっとアロウを中心とした登場人物達の掘り下げや、この荒廃した惑星の実態などについて知りたいと思いました。ただ、脱出系ビジュアルノベルとあったので始めは牢獄から出たらそれで終わりかと思いましたが、まさかの惑星からの脱出だったという展開は驚きましたのでそこは度肝を抜かれて良い意味でやられました。
物語後半で一気に登場人物達の過去が明らかになっていきました。アロウは10年前の事件に関わっているとの事でしたが、そもそもの発端はアロウが原因でした。と言うよりも、アロウは人間ではなく人工生命体でした。隕石の衝突により衰退していく惑星です、人間の数もどんどん少なくなっております。その為、アロウの様な人工生命体の労働力は欠かせないものとなっておりました。最も、まだ人工生命体という存在は倫理的に認められていないみたいです。その為、アロウが起こした10年前の事故も秘密裏に処理され全ての責任をアロウに押し付ける形となったのです。きっと、アロウに監視人を付けたのはアロウが脱獄するかを監視すると言うよりもアロウが誤作動しないかを監視する為ですね。一度そんな大きな事故をを起こし存在ですので二度起こす事は避けなければいけませんからね。そんなアロウの境遇が語られました。
そして、アロウに関わった人物もそれぞれ事象を抱えておりました。ラムジーは元は敵側の存在として組織を牛耳っている有能な男でした。ですがマフィアのドンであるジャドマに切り捨てられました。それでもラムジーには再びジャドマの下に戻るという選択もありました。むしろその方が安定した生活を送れるかも知れませんね。ですがラムジーはそれを選びませんでした。最終的にはアロウとキャロルと3人で惑星を脱出する道を選びました。この辺りの心情については書かれていませんでしたのでどんな心持ちかは分かりませんが、きっとジャドマの下にいても未来はないと思ったのだと思います。唯でさえ衰退していく惑星です。そうであるのなら、他の惑星に行った方がチャンスがあるという物ですね。他にはキャロルの同居人であるメイスの心意気は驚きました。人工パーツが必須な体になってしまった訳ですが、その人工パーツにエレベーターを直すパーツを仕込んでいるとは思いませんでした。何よりも、同居人のキャロルを愛しているというストレートな気持ちが良かったです。存在感のある登場人物でした。
他にもAIであるトリトンMk-IIとか粋な計らいを見せたゴルドンなど、色々と個性的な登場人物が出ました。やはり見せ場が短かったなと思うのがホントのところです。牢獄から脱出し、工業地帯から脱出し、第三区に入り込み、最終的に第五区に入り込むというプロセスがハッキリしていましたが、場面の描写しかなかったのでおつかいしているような気分でした。折角の練られた設定ですので、是非リメイクでも何でも構いませんのでより深掘りされた物を読んでみたいと思いました。とはいえ、まずはアロウとラムジーとキャロルが無事に惑星を脱出出来て良かったです。きっとその後も苦難の連続でしょうが、これだけの大事を成功させた3人ですのできっと何があっても大丈夫でしょうね。3人の活躍を祈念してレビューの終了とさせて頂きます。ありがとうございました。