M.M ラブだくしょんっ!〜銀河の恋愛ガイドブック〜




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 5 7 70 5〜6 2014/9/3
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<ドタバタしたテンションの高い雰囲気の中で、彼女達の魅力を内側から外側からじっくりと味わって下さい>

 この「ラブだくしょんっ!〜銀河の恋愛ガイドブック〜」という作品は同人サークルである「US8」で制作されたビジュアルノベルです。US8さんの作品ではこれまで「Re;world」や「R-10爆弾カノジョ。」をプレイさせて頂きました。「Re;world」で壮大なスケールのある世界観を、「R-10爆弾カノジョ。」で勢いのあるドタバタコメディなテキストを味わう事ができ、様々な毛色の作品を作るサークルさんだなと常に注目しております。今回プレイした「ラブだくしょんっ!〜銀河の恋愛ガイドブック〜」はどちらかと言えば「R-10爆弾カノジョ。」と同じ方向性の作品であり、相変わらずのコメディのセンスの良さと勢いのあるテンションを味わう事が出来ました。

 公式HPをご覧になれば分かりますが、もうとにかくUS8さんらしいぶっ飛んだ設定でテンションが上がりますね。主人公はどこにでもいる極々普通の男子学生です。そんな主人公が銀河恋愛ガイドブックを手にした事でその人生は大きく変化する事になります。突然目の前に宇宙船がやってきたり、宇宙人であり銀河帝国大統領であるアニーに恋をしろとせがまれたり、その対立候補であるヨシアに誘惑されたり、挙句の果てに主人公の選択が今後の銀河系の命運を分けるという展開になります。ドタバタコメディらしい勢いのある展開で誰にも先が読めませんね。「R-10爆弾カノジョ。」も中々ぶっ飛んだ設定でしたが、こちらもそれに負けず劣らずの設定でただ単純に先が気になってしまいました。

 そしてそんなハイテンションな設定を実現している演出やシステム周りはもはや同人のレベルを超えている印象でした。まずは声優さんの演技に大変な意気込みを感じました。基本的にハイテンションな設定ですのでどのキャラクターもぶっ飛んだ性格をしているのですが、そんなキャラクターの個性は間違いなく声優さんの演技力で実現しております。ハイテンションならひたすらハイテンションに、根暗ならひたすら根暗に、無気力ならひたすら無気力にと、とにかく大袈裟に演技してくれておりますので大変愛着が湧きますね。そして背景や立ち絵が大変綺麗で細かいです。銀河を股に掛けるという事で宇宙や宇宙船や別惑星の背景が出てくるのですが、塗りがハッキリして細かいのでひと目でイメージを焼き付ける事が出来ます。何よりも女の子が可愛いですので、ぶっ飛んだ性格の彼女達をどう捕まえるのかにいつの間にか躍起になっている事と思います。

 プレイ時間は私で5時間30分程度掛かりました。この作品のテーマはタイトルの通り「恋」です。ハイテンションでドタバタコメディではありますが、そんな分かりやすい雰囲気だからこそ「恋」というものの大切さがダイレクトにプレイヤーに伝わるのだと思います。メインヒロインの2人を中心として、是非とも恋の大切さを感じて頂ければと思います。ちなみに直ぐにHシーンには突入しません。ドタバタコメディですがちゃんとテーマを伝えるシナリオになったおりますので、彼女達の魅力を内側から外側からじっくりと味わって下さい。唯のドタバタコメディではない抑えるところは抑えた良質な萌えゲーたと思いました。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<恋はやはり人間にとって生きる為の最大限の原動力だと思いました>

 最後まで楽しく読ませて頂きました。銀河系までに広がっていた設定ですがまさか時空を超えてまで展開していくとは思いませんでした。それでも恋が持つ「不可能を可能に変える力」の大切さが十二分に伝わるシナリオでした。

 恋はやはり人間にとって生きる為の最大限の原動力だと思いました。異性に恋した時に感じるドキドキした気持ちは言葉では形容し難く、この制御できない気持ちの理由を見つける為に相手の事を知ろうとします。この相手の事を知ろうとする気持ちこそがその人の生きるモチベーションであり、自分自身を成長させるのだろうと思います。ですが唯相手を求めるだけでは恋は成就されません。勿論相手にも選ぶ権利はありますし、何よりも2人だけが良ければそれでいい程世の中は単純ではありません。本編の最後でも「恋はほどほどに」とありました通り、盲目になって相手の事を求めるだけでは結果としてお互いが不幸になってしまうのも恋の持つ特性です。恋は人間の原動力でありながらどこかで制御しなければいけない、本当扱いに困る気持ちだと思いますね。

 作中では恋に走りすぎた結果として戦争が起こってしまいました。そして多くの人が不幸になってしまいましたので銀河全体で恋という気持ちが封印されてしまいました。それは確かに事実なのでしょうが、それでも地球にだけ恋という気持ちを残したのはきっと恋の持つ無限の可能性を肯定した証拠なのだろうと思いました。作中でも「恋は銀河を滅亡せしめる病であるが最高のスパイスでもある」と語っておりました。もう認めているのでしょうね。恋という気持ちを切り離す事は出来ないという事に。ヨシアがそうでしたが人生がつまらなくなるんですね。何の為に生きるのか分からなくなってしまうのだと思います。

 そしてこの作品では恋の力による奇跡という展開をこれでもかと演出しておりました。無料大数分の一の可能性を実現してしまうなんて、これ程魅力的な力はありませんね。作中でも「不可能性ドライブ」という歴史の流れすら歪めてしまうような物が存在しておりましたが、これを動かせるのは恋の力だけでした。銀河系の歴史を改ざんしてヒロイン達との出会いの事実が無くなっても再び再開できたのは恋の力でした。決められた運命に逆らい自分の意思で人生を選択できたのも恋の力でした。本当にプレイヤーに勇気を与えてくれるような展開ばかりで現実世界ではこんな奇跡は起こらないでしょうけど、恋の力を持てば自分にも奇跡を起こせると思わせてくれるシナリオでした。

 結局のところ、何か外に対して行動しなければ奇跡は起こらないという事ですね。たとえ奇跡が起こる可能性が無料大数分の一でも、ゼロでない以上奇跡は起こりますからね。そしてその行動の原動力になっているのが恋なのだと思いました。人の持つ想いの可能性、そして相手に向ける恋の可能性、そんな純粋な想いの成せる姿を感じる事が出来ました。現実世界でも始めから諦めたり悟ったりするのではなく、例えば恋を切っ掛けにして何か行動を起こしてみようという気にさせてくれる作品でした。ありがとうございました。


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