M.M Lost Friends1-Disappeared Name-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 - 78 1〜2 2022/5/4
作品ページ サークルページ



<プレイヤー目線で作られたシステムの中で、丁寧に描かれたファンタジー世界観を感じて下さい。>

 この「Lost Friends1-Disappeared Name-」は、同人ゲームサークルである「渦女屋本舗」で制作されたビジュアルノベルです。渦女屋本舗さんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。切っ掛けですが、私とフォロワーである倉下さんで企画している「crAsM.M ビジュアルノベルオンリー」に御参加頂いたい事です。このイベントは、コロナ禍でオフラインの即売会に向かい風となっている現状を鑑みオンラインでの即売会が出来ないかと思い始めたイベントです。ビジュアルノベルの新しい形での頒布が主目的ではありますが、何よりも私個人がこれまでご縁が無かったサークルさんに出会いたいという想いがありました。渦女屋本舗さんもそんな偶然で知る事が出来たサークルさんであり、是非作品をプレイしたいと思い今回のレビューに至っております。ファンタジー系の作風が印象的で、どのような人間模様や世界観を見せてくれる か楽しみにプレイし始めました。

 この作品の舞台は、人間と化け物が存在しております。主人公であるキリオは山間にある村ウルクに住んでいる少年です。キリオにはずっと抱えている後悔があります。それはかつて友人であったハカモリを裏切ってしまった事です。ウルクでは、昔から死者を敬う風習がありました。その為死者が帰ってくる墓守を荒らす行為は重罪であり、罪を犯した者は名前を奪われ村を追放されてしまいます。かつて、ハカモリの家族は墓守を荒らした罪で名前を奪われてしまいました。ですが、それが真実ではない事をキリオは知っていました。知っていたのに声を出せなかった、その懺悔でずっとハカモリの元へ足を運んでいるのです。そんなキリオとハカモリの平行線な関係に、ジャックと名乗る化け物が現れる事で変化が訪れます。2人の関係は改善されるのでしょうか、ジャックの目的は何なのでしょうか、人間の善悪や友情を考えさせられる物語が幕を開けます。

 この作品の魅力は、独自の世界観とそこで生きる人間模様にあります。化け物が登場したりと現実ではないファンタジーな世界観ではありますが、扱っている物は決して突飛なものではありません。村という共同体があり、そこで生きる者同士でルールがあり、それを破れば罰が下るのは現実でも同様です。世界観を楽しみにつつ必ずやプレイヤーの皆さんの中で共感出来るものがあると思います。そして、悪い事をしてしまった後悔を抱えるのはとても辛い事だと思います。さっさと謝ってしまえばいいとは簡単に言えますが、それが出来ないから苦労する訳です。謝っても許してくれなかったらどうしよう?そもそも話を聴いてくれなかったらどうしよう?本当に自分が悪いのか?相手にも非はあったのではないか?そんな色々な事を考えながら人は謝るのです。そんな生きる上での辛さも感じる事が出来ます。ジャンル名が「胸糞系ファンタジーADV」ですのでハッピーエンドで終わるエンディングは少ないかも知れません。それでも、何か決着がつきますのでその在り方を見届けてみて下さい。

 その他の特徴として、背景描写とBGMがあります。ファンタジーという事で、文字だけでは説明しきれない世界観を絵と音で表現してくれております。文明レベル、村の雰囲気、来ている服、化け物の姿など表現しておりますのでイメージが固まると思います。BGMもどこか牧歌的な雰囲気を感じる物が多く、まさに田舎の村という印象を与えてくれます。しっかりとサークルさんの中で世界観のイメージが出来ており、Lost Friendsシリーズの形を伝えてくれました。またエンジンはLight.vnを使っているのですが、基本的な機能を備えているのは勿論サクサク動きますのでストレスを感じる事無く進める事が出来ます。総じて読む事を阻害する要素を排除し、プレイヤー目線で作られていると感じました。

 プレイ時間は私で1時間30分くらいでした。この作品には幾つかの選択肢が存在し、全部で5つのエンディングがあります。選択肢の数は決して多くはありませんので、ローラー作戦で全てのエンディングを見る事は難しくないと思います。ですが、とりあえず初回プレイは自分が本能のままに感じた選択肢を選んでプレイしてみて欲しいです。繰り返しですが、ジャンル名が「胸糞系ファンタジーADV」ですのでそれなりに理不尽な出来事が発生します。時にはこうなって欲しいという想いとは裏腹に登場人物が行動してしまう場面もあると思います。だからこそ、自分の選択だとこうなるのかという納得感を味わってみて欲しいです。その後別の選択肢を選びながら、登場人物達の心の内と世界観の真実を確認してみて下さい。必ずや楽しめる部分はあると思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<理不尽なものはどうしても起きてしまう。そんな時、どれだけ素直になり真心を持てるかが大事かも知れません。>

 正直なところ、私はキリオの事をそこまで情けない奴だとは思ってません。むしろ、いつまでもキリオを許さずむしろ何度も謝って来る様子を楽しんでいる節すらあるハカモリの方が酷いと思いました。何れにしても、ジャックが「人間っていうのは何考えてるか分からないなぁ」と言ってましたが本当その通りだと思います。ホントめんどくさくて面白いです。

 キリオの様な気持ちは、誰もが持っているのではないでしょうか。許しを請えばいつか必ず許してくれる、そう思っているから謝り続ける人はいると思います。ですけど、それは実に自分勝手な考えである事をキリオは思い知らされました。絶対に許さない、二度と許さない、一生謝り続けろ、そんな事を言われたらあなたはそれでも謝り続けるでしょうか。私だったら諦めるかも知れません、何故なら徒労だからです。無駄な事はしたくないと、正直思ってしまいます。ですけど、それなら何故謝るんでしょうね。本当に自分が悪かったという気持ちがあるのであれば、どんなに辛辣な言葉を向けられても謝り続けるのではないでしょうか。キリオとハカモリを見て、純粋で清廉な人間になる事はどれだけ難しい事かと思いました。どうしても理不尽な事はありますし、上手くいかない事はあります。そして、それで心が折れてしまう事はしょっちゅうだと思います。だから思うんです、キリオのような一見情けない立ち振る舞いこそが人間らしさなんだと。

 実際のところ、こういう場合ハカモリの立場って最強だと思っております。何故なら、冤罪を吹っ掛けられて実際に罰を受けてしまっているからです。勿論本人が一番苦労してます。ですけど、だからこそ相手を一生許さずむしろそんな贖罪している姿を楽しむ権利があるのかと言ったら疑問です。良いんですよ、ハカモリの行動や言動は一般論では正しいです。絶対にいつか許してもらえると腹の内にある人間に対して簡単に許していいとは思っておりません。ですけど、その逆で絶対に許さないと言い切ってしまうのもどうかと思いました。改めて思いましたが、ハカモリは白と黒しかないのかも知れませんね。許すか許さないか、善か悪か、敵か味方か、ですけど人生はそうハッキリと答えが分かる事ばかりではありませんからね。

 そんな感じで、どこか人より甘えが強いキリオとどこか人より白黒付けたがるハカモリですので中々和解する事は出来ませんでした。ほとんどのエンディングでキリオとハカモリは死別してしまいました。まあ、それはそもそもウルクの風習が凝り固まっている事とヨルマの邪心があったからというのもありますけどね。この作品を胸糞悪くしているのは、キリオとハカモリの歯がゆい行動だけではなくそもそも2人を取り巻く環境が理不尽だからだと思っております。結局のところ、2人だけの問題ではありませんでしたからね。だからこそ、ED05帰還と生誕はスカッとしました。あんな村、無くしてしまえば良いんですよ!……少し脱線してしまいましたが、2人が本当の意味で真心を持てなかったエンディングは全て死別でした。何を、そんなに許せなかったのでしょうね。長い年月が、2人がお互いを想う気持ちすら見失わせてしまったのかも知れません。

 全てのエンディングを見て、タイトルにもなっているED01ロストフレンズが一番好きです。実は私が一番始めにたどり着いたエンディングがこれなのですが、素直に良かったと思っております。素直になった2人にとって、悪習残るウルクの村を離れるのがやはり一番の選択だったと思っております。ここまでこじれれば、少なくともキリオ・ハカモリ・ウルクの村の3者が和解する事はほぼ不可能でしょうしね。後は何を選び取るか、その為にどれだけ努力するかなのかも知れません。胸糞悪いシナリオが大半でしたが、それでも少しでも自分らしく素直に生きれた姿が見れて良かったです。この作品はタイトルに1とあります通り、連作となっております。この先2や3でどのようなシナリオが展開されるのか楽しみになりました。次回作以降でも、せめて1つくらいは登場人物が素直になり理不尽な目に合わないシナリオが読めたらと思っております。ありがとうございました。


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