M.M レウキア滞在記 -後編その2マキ-


 この「レウキア滞在記 -後編その2マキ-」は前作である「レウキア滞在記 -前編-」「レウキア滞在記 -後編その1リザ-」の続編となっております。その為レビューには「レウキア滞在記 -前編-」「レウキア滞在記 -後編その1リザ-」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「レウキア滞在記 -前編-」のレビューはこちら
・「レウキア滞在記 -後編その1リザ-」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。























































































シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 4 - 79 3〜4 2016/11/8
作品ページ サークルページ(作品ページと同じ)



<目の前の人が幸せであればそれで良い。これ程単純で分かり易い考えに何故人々はたどり着けないでしょうね。>

 かつて戦争を行った西の大国であるオクスと東の連合国であるレウキアの人物と文化が交錯する物語である「レウキア滞在記」の続編その2です。レウキア滞在記に初めて触れてからかれこれ3年経過しようとしております。現実の日本と西アジアを彷彿とさせつつ架空の設定でありながら、歴史や文化や人間模様について綿密に練られておりテキストの隅々に十分な考察を伺えることが出来ます。ですがこの作品の魅力はそうした設定だけではなく主人公クルを中心とした人間模様です。特にクルの真っ直ぐすぎる性格は周りにいる多くの人間を巻き込み、プレイヤーすらも不安にさせます。それでもそんなクルだからこそ目が離せず、それが故にヒロインを始めみんなに愛されるのだろうと思っております。そんなクルと今作で添い遂げるのはクルの後輩であり同僚であるマキです。この子も一癖も二癖もある性格ですので非常に揉めそうでしたが、蓋を開けてみれば難の事はない素直な恋愛物に仕上がっておりました。

 かつて自分が本気で愛した人が去っていった過去を持つクル。元々人とコミュニケーションを取るのが苦手だったクルにとってこの経験は自分自身を過小評価するのに十分すぎる理由でした。自分はそもそも評価されるに値する人間ではない、ましてや人に認められたいと思うことすらおこがましい、そんな性格だからこそ今回の写本の事件についても1人でこっそりと調査をしておりました。たとえ成果を上げる事が出来ても仕事のやり方が良くないですね。そりゃラギも怒鳴るというものです。元々よく思われていないオクスの調査団です。目立つ行動と言いますか、団体行動が出来ない人は能力があっても切られてしまうのは当たり前です。普通であればあの時クルはオクスに強制帰国されてもおかしくありませんでした。

 ですがそんなクルの事をちゃんと見ている存在がいました。それが今作のヒロインであるマキです。彼女もちょっと面倒くさい性格でしたね。クルの事が好きなのはバレバレなのに、調査とはいえ折角2人で出かける機会があったのに昔の女の話題なんか出して、マキもクルに負けず劣らずの素直な性格のようです。だからこそあの時あの場で声を出してくれたんですね。今自分がクルを支えなければもう二度と一緒にはいられない。そう思えば素直な彼女ですので後はなるようになりました。その後もオンにきっぱりとクルと二人きりで話したいから席を外して欲しいとハッキリ声に出して言いました。この瞬間クルとマキの恋は成就されました。その後はもうところ構わずイチャイチャでしたね。レウキアの館さんらしい細かに動くCGと貧乳な体全体で精一杯感じる姿はもう愛しさしか抱けません。素直な2人ですので時に衝突する事もあるでしょうけど、最終的には元鞘に収まって何だかんだで幸せに過ごすのだと思います。

 幸せ、今作のテーマは間違いなくこの言葉の意味を考える事だと思います。今回のシナリオ、あらすじだけ書き出せば実は何ともあっさりとしております。クルとマキが結ばれ、写本は紆余曲折を経て元通り、誰も損もしませんし得もしませんでした。私も実際クルとマキが結ばれて写本が戻ってもう終わりかなと思いましたからね。ですがそこからがこのシナリオの本質でした。今回の写本を巡る事件、多くの人が「犯人は誰だ?」「責任はどうするんだ?」「軍は動くのか?」「大使館はどうするのか?」「大学はどうするのか?」といった具合に事実関係の真実と責任の所在を気にしておりました。ですが唯一それを気にしていない存在がいました。それがクルです。彼にとって写本が戻ればはい終わり。それ以外の事は正直道でも良かったみたいです。クルは能天気なのでしょうか?そうではありませんでした。クルは善悪について、もっと言えば幸せというものについて確固たる信念を持っていたのです。

 物語後半、クルは「良い人が幸せになって欲しいと、そうは思いませんか」と言っておりました。そして「世の中には敵がいるのではなく味方がないというだけのこと」とも言ってました。両親が離婚し父親が他界するという人並みとは言えない半生を送っていたクル。彼にとって人間関係は運であり自分の力だけでは如何にもできないと思ってました。ですがそんな中でも多くの人に出会い、それによる繋がりが出来ております。大切なのは目の前にいる人を味方にする事だと言ってました。敵がいると決め付けるのは言い換えれば目の前の人の不幸を願うという事。そんなことは無意味だと言っているのです。これは非常に崇高な考えだと思いますね。博愛主義にも程があります。でもその事を信じて疑わないクルだからこそ、何者も恐れず虎穴に入り写本という虎徹を手に入れられたんですね。

 クルはマキという最愛の人を見つけました。そして彼女と添い遂げる未来を掴みました。幸せになれたんですね。それで十分なんです。誰かを責めたいとか責任をハッキリさせたいとか、そんな事はどうでも良かったんです。大切なのは自分の目に映る人の幸せ。そんなクルだからこそ問うのだと思います。「幸せになれましたか?」と。そしてクルは答えるのです。「俺は、幸せです。」と。オクスとレウキアという忌み嫌い合う国同士で稀有な存在であるクル。皆が彼のような考えを持てば、それこそが2国の蟠りが無くなる一番の近道なのかも知れません。ありがとうございました。


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