M.M 久闊を女装する




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 6 - 63 2〜3 2016/3/22
作品ページ(R-18注意) サークルページ



<どこかに絶対に巧が気に入る瞬間が存在し、その瞬間にあなたも男の娘の虜になっていると思います。>

 この「久闊を女装する」は同人サークルである「の〜すとらいく」で制作されたビジュアルノベルです。の〜すとらいくさんを初めて知ったのは、COMITIA116にサークル部活動として参加するノベルゲーム部のメンバーとして名前をお見受けした事からでした。元々の〜すとらいくさんのシナリオライターである西田一氏は脳内彼女というフェチズムなHシーンを得意とする美少女ゲームブランドでメインシナリオを書かれている方であり、同ブランドの作品である女装山脈は男の娘をメインとした抜きゲーとして非常に話題になった事を覚えております。そんな西田一氏が所属するの〜すとらいくの処女作が今回レビューしている「久闊を女装する」です。実績のあるライターによる作品という事でプレイ前から期待度の高いタイトルでした。

 タイトルにある「久闊」とは久しく会わないこと、無沙汰という意味です。久しぶりに再会する友人との旧交を暖める際には「久闊を叙する」と言い、久闊であった時期を詫びてあいさつをするという意味も込められております。主人公である赤木拓海には伊地知巧という幼馴染がおりました。2人とも同じ「たくみ」という呼び名であり、苗字も「あ」と「い」という事で学校での席も近くいつも一緒に遊んでいる存在でした。ですが、家庭の都合で離ればなれになってしまい、巧と遊んだ日々を懐かしんでいる日々を送っておりました。そんな巧が数年ぶりに拓海の側に帰ってきました。2人にとって久闊を叙する時。ですが久しぶりにであった幼馴染はなんと女装ビッチになっていたのです。久闊の間に女装していた幼馴染。そんな巧に翻弄されるドタバタな学園生活が幕を開けるのです。

 私自身これまでも女装キャラクターが登場する作品は幾つかプレイしてきました。それは主人公であったり、主人公の友達であったりとそれなりの立ち位置と属性を持ったものでした。ですが、実はビッチキャラにはこれまで出会った事がありませんでした。私がイメージしてきた女装キャラと言えば、やんごとなき事情で女装をしなければいけなくなり常にバレるか怯えながら生活している姿でした。そしてヒロインとの仲が深まっていく中で正体がバレてしまい、それでも今までの友情と愛情で許し添い遂げるといった感じです。また友達キャラであった場合は基本本筋には関わって来ない高嶺の花のような存在であり、マスコットのような感じです。それが今回は始めから前面にフェチズムを出しまくっており、自分が男の娘である事を公言しながら世の中の男どもとHしまくるのです。この性癖をどう捉えればいいのか、初心者である私はまずそこから模索する事にしました。

 女装キャラが登場した時に一番注目するべきなのは、周りにいる人がどのように本人と折り合いをつけるかだと思っております。女装している本人は実際のところ納得してますので、自分のありのままの気持ちをぶつけてきます。ですが周りはそう簡単に割り切る事は出来ません。見た目は女の子だけどチンポ生えてるんだよな、男なんだけど可愛いんだよな、男にも穴はあるんだよな、でも男なんだよな、と卑猥な妄想が頭の中をかき乱します。主人公である拓海もまた巧のあっけらかんとした態度に戸惑い始めは振り回されますが、最後どこかで決着をつけなければいけません。果たして拓海は巧とどのような関係を築くのか。是非変化していく2人の心理描写に注目して欲しいですね。

 一番の見所はもちろんヒロインである男の娘の巧ですね。女装ビッチという事で性に対して奔放であり、チンポがあればところ構わず加えてしまいます。ですがその絶技は抗い難いものであり、世の中の男どもをどんどん蹂躙していきます。そしてそんな絶技を持っていながら特定のパートナーは決して造らず、まさに男の娘のカリスマとして頂点に君臨しているのです。そんな巧ですのでかつての幼馴染である拓海の事などそこらにいる男の1人くらいとしか思っておらず冷やかして朝驚かせに行くのですが、何と拓海のチンポは平均よりも遥かに大きな巨根でした。それから拓海に対する見方が代わり、S嬢だったりそうでなかったりと様々な顔を見せてくれます。どんな表情を見せてくれるかは是非皆さん1人1人の目で確認して欲しいですね。絶対に気に入る瞬間が存在し、その瞬間にあなたも男の娘の虜になっていると思います。

 プレイ時間は私で2時間10分程度掛かりました。選択肢は1つしかなく、それもメインのEDとサブEDを振り分けるだけのものですので基本的には一本のシナリオを読んでいくだけになります。その分2人の心の変化やすれ違いなどが読み取りやすくなっておりますので是非読み解いて欲しいですね。また抜きゲーですのでHシーンの数は当然多く、2時間程度のボリュームで10以上のシーンが存在します。是非全てのシーンを堪能し、女装ビッチという存在とは何ぞやという事について答えを出して欲しいですね。オススメです。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<男の娘って、妊娠しないからこそ男の娘だと思うんです。>

 最後の最後でまさか巧が妊娠するとは思いませんでしたね。私、男の娘とのセックスの強みってどんなに中出ししても妊娠しないことだと思ってるんです。妊娠しないからこそ男は好きなことをぶつけられるし、男の娘の方も男の気持ちいい事全て知っているから何でも受け入れて満足させてあげられるんです。まさに究極の性処理道具。ですがそれが妊娠してしまえば話は別です。その瞬間、巧は性処理道具から愛するべきパートナーになったんですね。そんな愛のあるもないも合わせて、全てを包括して巧の魅力でした。

 最後までプレイして改めて考えてみます、女の子に対して男の娘の強みとは何でしょうか。まずは上でも書いた妊娠しない事ですね。妊娠しないからどんな性的な事をしても最悪の事態にはなりません。安心して中出し出来るのです。他には男の気持ちを完全に理解しているという事です。見た目は女の子でも男の娘ですので当然チンポはついてますので射精の気持ちよさを知っています。だからこそ男の気持ちいいところを全て知っているので基本男の娘が上位になって男を責め立てることが出来ます。男はその絶技に身を任せればそれでいいのです。そして個人的にはこれが一番大事なのですが、男の娘はイった時に射精するんです。私も男ですので女性がイった時の気持ちは分かりません。ですが代わりに射精の気持ちよさなら知っています。だからこそ、可愛い男の娘がイった時にどんな気持ちになっているのか手に取るように分かるのです。これは地味にHシーンにとって大きなアドバンテージ。同性だからこそ理解し合える部分があります。

 以上書いたことが私の中での男の娘の強みです。こうして書いてみると愛の欠片もない事ばかりですね。完全に性処理道具としか考えていないような内容ばかり。そりゃ巧もビッチになりますし恋人なんて欲しがる訳がありません。ただ自分が気持ちよくなればいいし相手も自分を使って満足してくれればいいんです。男が使うのは男の娘のケツ穴だけですし、おっぱいは無いですけど見た目美少女なので後はチンポの気持ちよさに身を委ねればいいんです。性欲を吐き出す事を考えれば、間違いなく男の娘は女の子よりも都合が良いです。そんな都合の良い存在、三次元に存在するはずがありませんね。

 ですがこれに愛が絡んでくると全く話は変わってきます。例え男の娘の事を愛し男の娘の方も男の事を愛したとしても、子供が作れないんです。愛の結晶が子供だと言い切るつもりはありません。ですが相手に中出しをするという事は子供が出来るという事に責任を持つという事。中出しはお互いがお互いを信頼し愛していないと出来る事はないんです。本来中出しには覚悟が求められるんです。ですが男と男の娘の間にその覚悟は必要ありません。どれだけ肉欲に溺れても許される、これは愛の前では小さい様に見えても意外と効いてくると思います。どんなに変態的なセックスをしても、どんなにSMプレイをしても、どんなに隠語を使ってもいいんです。そこに愛が有り相手を大切に想い将来を見据えているのであれば、最後の一線は絶対に超えないのです。

 こういう事を言うと「不妊治療をしている女性に対する差別だ!」とか言われかねませんね。無精子症の男性に対する偏見にも見えるかも知れません。子供を作りたくても作れない人もいるんだ!そんな声が聞こえてきそうです。ですがそれとこれとは全く次元の違う事だと断っておきます。これはビジュアルノベルであり抜きゲーです。現実には存在しない男の娘という特殊なフェチズムを楽しむ娯楽です。娯楽だからこそ、男の娘というものが持つ属性を検討するのは大切なのです。男の娘が妊娠するか否かは欠く事が出来ない要素。それを議論するのは非常に意味のあることだと断っておきます。

 私、この作品の中のセリフで一番好きなのが、

「こんな思いをするくらいなら、花や草に生まれたかった!」

なんです。作中ではビッチであるはずの巧が唯一人を選んで添い遂げた事に対する嫉妬として語られてました。ですがあのクラスメイトももう二度と巧の体を味わえない程度でまさか巧が妊娠するなんて思ってはいないと思います。EDで巧が妊娠しての結婚式を迎えていましたが、その事実を知ったクラスメイトは同じような反応をするでしょうか?たぶんしないと思います。おそらく絶句すると思います。「妊娠するって、それってほんとにおまえ男?」そう思うと思います。全体として男の娘である巧の魅力に溢れた作品。ドSな姿も奉仕する姿も全て魅力的でした。ただ、最後に妊娠することで、男の娘と女の子の境界がちょっと曖昧になってしまったというのが正直な感想でした。もしかしたら、最近の男の娘はみんな妊娠するのが当たり前なのでしょうか?だとすれば私の見識のなんと狭いこと!でもまあ、妊娠する男というのはそれだけで何か背徳的なものを感じますね。ああ、きっとこれがこの作品で言いたいかったことかも知れませんね。ありがとうございました。


→Game Review
→Main