M.M 最終試験くじら




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 9 8 74 25〜35 2006/5/17
作品ページ(R-18注意) ブランドページ 通販



<壮大過ぎた世界観>

 「水夏〜suika〜」「D.C.〜ダ・カーポ〜」と非常に良い作品を出してきたcircusが久々に世に送り出した大作が、この「最終試験くじら」です。発売前の宣伝の力の入れようや初回特典の素晴らしさと、前にプレイした「最終試験くじら〜progressive〜」が非常に良かった事で、必ずプレイしてみようということでやってみました。

 結果から言いますと、なかなかの良作です。ボリュームも大きく、世界観やキャラクターに対する作りこみも非常に凝っていました。また、ボーカル曲を始めとした音楽全般も綺麗な曲ばかりでしたし、背景も丁寧に描かれていました。こういった点においては、本当にcircusの作品は一流の力を持っていると思います。これでシナリオが素晴らしい出来であったら、間違いなく95点以上の点数を付けていたと思います。

 この「最終試験くじら」というゲームですが、まずその世界観に驚かされます。それは「空に浮かぶくじら」といったもので、今まで様々なギャルゲーをやって来てここまで特殊な設定の物はありませんでした。そして、circusの掲げるジャンルが「不条理アドベンチャー」というもの。嫌が応にも期待は高まりました。しかし、実際シナリオを読んでいきますと、残念ながら「もったいない」という感想が始めに出てきました。

 最終試験くじらのシナリオを簡単にまとめますと、説明不足という言葉が適当だと思います。まず、このタイトルや宣伝内容を見てプレイヤーが明らかに思う疑問は「最終試験とは何か?」「何故空にくじらが浮かんでいるのか?」「何が不条理なのか?」といった事だと思います。そして、これらの疑問の答えを探りながらシナリオを読み進めると思います。とりあえず、物語の展開が急だったり話が突拍子もないところに飛んだりしながらも、本編の中ではこれらの疑問に対する答えは提示してありました。しかし、その肝心な部分が説明不足であり、一部プレイヤーの想像に任せている様な部分が多々ありました。

 もしかしたら、これがcircusの狙いだったのかもしれませんし、私のシナリオの理解が足りないのかもしれませんが、私の中で一つの結論に達しました。それは、circusは「世界観に潰された」ということです。「空に浮かぶくじら」という設定は嫌が応にもプレイヤーの期待を高めます。それと同時に、circusの方でもこれらの期待に応えられるシナリオを用意する必要がありました。そこで考えた案が、「この世界観をシナリオで十分に表現出来ないから、その部分はプレイヤーの想像に任せる」ではないのかと思いました。そうすれば、この壮大な世界観をこのままの純度で昇華出来ますし、シナリオも形にすることが出来ます。しかし、私の中で残ったのは納得のいかないシナリオによる後味の悪さでした。

 そういった意味で、この作品は「もったいない」と思いました。前にも言いましたが、キャラクターや音楽、背景などに対する作りこみは本当に一流のものでした。これでシナリオが満足のいくものであったらまさに完璧だったと思いました。とはいえ、普通に楽しめる内容ですので、時間とお金に余裕があったらプレイしても良いと思いますよ。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<名雲さえシナリオ以外の必要性は?>

 全シナリオをプレイしてみて、とりあえず思ったことは「名雲さえシナリオ以外は要らないのでは?」ということでした。どのシナリオも何らかの形で「空に浮かぶくじら」に関係したものでしたが、どれもこれも蛇足だった気がします。私がそう思う原因としては、やはり「最終試験くじら〜progressive〜」が大きかったと思います。この「最終試験くじら〜progressive〜」が名雲さえの過去のシナリオという設定であり、ほとんど私はここで生まれた疑問を回収するために「最終試験くじら」をプレイしたようなものでした。そういう意味で、他のキャラにおける「空に浮かぶくじら」の設定が納得いきませんでした。

 ここで重要になってくるのが、名雲さえシナリオの後半で言っていた「3つの鍵」というものだと思います。私がこの「3つの鍵」の意味をしっかり理解していれば、もしかしたらまた違った感想になっていたのかもしれませんが、いまいちこれの意味が読み取れませんでした(これに関しては是非納得のいく説明が欲しいので、知っている方は御一報を)。

 そして、circusの掲げたこの「不条理アドベンチャー」というものについてですが、私の中ではまさにこの「シナリオの意味が理解出来ない」ということが「不条理」となってしまいました。もし時間があったら、この「不条理」を解決させるべく、もう一度じっくりとプレイしたいですね。

 ちなみに、所々に仕込まれているネタは私の中ではかなりツボでした。「ゆんゆん」とか「ディーゲル」とか「奴」はかなりお気に入りのキャラです。この当りを楽しむ上でも、もう一回プレイしたいですね。


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