M.M ことのはアムリラート




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 7 85 5〜7 2019/3/19
作品ページ ブランドページ



<この作品を切っ掛けに是非エスペラント語に触れ、そして純百合な物語を楽しんで下さい。>

 この「ことのはアムリラート」という作品は、美少女ゲームブランドである「SukeraSparo」で制作されたビジュアルノベルです。この作品をプレイする切っ掛け、それは私がHPで行っているキリ番企画によるものです。私のHPのMainページで所定のカウンター数字を踏むと、1つだけ何か好きなタイトルをプレイしレビューさせる事が出来る事が出来ます。そんなキリ番企画に参加頂いた方のリクエスト作品が、今回レビューしている「ことのはアムリラート」です。実はリクエストを頂いてから結構な日数を待たせてしまいました。リクエストを受けはするのに消化が間に合っていない現状がありますが、こうしてプレイしレビューを書く事が出来てホッとしております。

 主人公である高遠凛はどこにでもいる普通の女子高生です。元気いっぱいですが落ち着きがなく、思いついたら突進するような女の子です。そんな彼女は、いつものように地元の商店街で買い食いをしながら歩いていました。そしてとある路地裏を曲がった時にふと違和感を感じます。目を開けたらそこはいつもと同じ商店街、そのはずが空は何故かピンク色で何よりも街は見た事もない文字で埋め尽くされてました。勿論人の会話も分かりません。突然謎の世界に迷い込み途方に暮れている凛に、一人手を差し伸べる女の子がいました。彼女の名前はルカ、片言の日本語で凛とコミュニケーションを取ろうとしてくれました。彼女を頼りに暫く異世界で生活すると決めた凛、何もかもが初めての環境で期待と不安が入り混じった生活が幕を開けるのです。

 この作品の最大の特徴、それは何と言ってもエスペラント語を学べるという事です。凛が迷い込んだ異世界で使われているユリアーモ語はエスペラント語をベースとしております。これは日本エスペラント協会が監修しており、物語の登場人物のみならずプレイヤーもまたまっさらな状態で丁寧にエスペラント語を学べるという事です。プレイ開始時、凛は勿論ですが多くのプレイヤーの方々も同様に他の人が何を言っているのか分からないと思います。そうした不安感を主人公と共有できる、これは作品にのめり込むのに最高のスパイスだと思いました。その中で片言とは言え日本語を話せるルカの安心感、それに縋りながらも自立の道を歩む凛の姿に負けないようにプレイヤーの皆さんもしっかりと勉強していきましょう。

 実際、作中では分かりやすくエスペラント語の文法や単語を説明しております。それはルカやその他の登場人物をチューターとして展開されていきます。そして途中に何度か試験問題が用意されており、ゲーム感覚でありながら実戦さながらな実力確認を行う事が出来ます。基本的には、直前で学んだことを繰り返す問題ですので何も分からないという事は無いと思います。それでも覚えるものは覚えないと正解する事は勿論出来ませんので、是非この機会にじっくりと触れてみて下さい。エスペラント語が分からないのはプレイヤーだけではなく主人公である凛も同じです。凛も迷いながらエスペラント語に対する素直な気持ちを吐露しつつ学んでいきますので、そんな彼女とシンクロする事が出来ると思います。

 そしてこの作品は純百合ADVとなっております。何も知らない世界に迷い込んだ凛に手を差し伸べてくれた美少女、始め凛が持っていた感情は感謝の気持ちのみでしたがその後同じ屋根の下で生活していく中で少しずつ気持ちを交差し合います。元気いっぱいな凛に対してお淑やかなルカは一見相性が合わないそうです。ところが実際一緒に生活してみて遠くからでは見えない内面が見えた時、物語が動き出します。結果どのような結末になるのかは、皆さんの選択次第です。エスペラント語を学びながら、気が付いたら気持ちの距離も近づいていた、そんな甘酸っぱい姿も堪能してみて下さい。何よりも、凛は異世界に迷い込みましたので最終的には異世界に残るのか元の世界に帰るのか選択しなければいけません。そもそも元の世界に帰れるのかも分かりません。何れにしても、そこの判断材料にルカの存在が関係してくるのは間違いありません。いつか訪れる時に向けて、是非気持ちの交差を感じて下さい。

 プレイ時間は私で5時間50分でした。これは全てのCGを確認するまでの時間です。選択肢の数はそれなりに多く、エンディングも幾つかありますので何周かはすると思います。それでもこの程度の時間で終わりましたので体感としては短いかも知れません。後は、どれだけエスペラント語を学ぶかですね。この作品は勉強モードという物が搭載されており、シナリオの中で実際に味わった試験問題を何度も行う事が出来ます。この作品で取り扱ってるエスペラント語をマスターしようと思えば、もっともっとプレイ時間は掛かるでしょう。エスペラント語に対するスタンスは皆さん次第ですが、個人的には何となく法則性が分かってきて面白いなって思いました。新しい言語を学ぶ感覚、そしてその言語で人とコミュニケーションが取れる感覚、これが分かっただけで良かったと思っております。是非本物の教材として、そして百合作品としてプレイしてみて下さい。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<リンが異世界で見つけたのは、相手のことのはを聴いてちゃんと相手を理解する事の大切さでした。>

 最後までプレイして、とても丁寧に作られている作品だと思いました。右も左も分からない状態でも元気に振る舞うリンの姿、それでも中々ユリアーモ語が通じなくて落ち込む姿、そんなリンを陰ながら支えるルカとレイの姿とその心の変化、全てのテキストに無駄がなく積み木を積み上げる様にステップアップしていく様子が印象的でした。

 まずはエスペラント語について本当に丁寧に作られている事が伝わりました。物語開始時は文字も分かりませんので宛がったカタカナでしか表記されず、勿論その意味も分かりません。それが、少しずつ単語や文法を取得していく中で徐々に分かる言葉が増えていき、自然とエスペラント語に慣れていく自分がいる事に気が付きました。まさにリンが体験している事をそのままトレースする事が出来、本当にプレイヤーにエスペラント語を学んでほしいという気持ちが込められている事が伝わりました。リンが完全な初心者だからこそリンの気持ちに共感出来ましたし、それがますますエスペラント語の理解に繋がったと思っております。

 試験問題も簡単な挨拶から始まり、エスペラント語独特の文法、数字、単語と分野別に展開されていくのが上手いと思いました。この作品は美少女ゲームでありますのでプレイする年齢層は恐らく10代後半以降だと思いますが、全然中学生や場合によっては小学生でも理解できるものだと思いました。何よりも、声優さんの発音が良くてそれが何度も聴けるのが一番でした。エスペラント語にネイティブがあるのかどうか分かりませんが、少なくとも日本エスペラント協会が監修しておりますので間違いないのだと思います。自分達以上に声優さんがエスペラント語を理解し、それを伝えようという意思があったからこその発音だったのかなと思っております。

 そして物語ですが、プロットとしてはそこまで大きくはなく異世界で偶然出会った2人が想いを交差させていく正当な百合物語だと思いました。リンは元気いっぱいでルカはお淑やか、それでもお互い意志はしっかりしていて言うべきところは言いますし譲らない所は譲らない、このバランスが素敵でした。気が付いたら相手の事が好きになっている、恋愛ものの醍醐味はやはりここに集約されていると思います。気付いたら目で追っている、気付いたら触れ合いたくなっている、気付いたらキスしている、気付いたら離れたくないと思っている、そんな自分でも制御できない気持ちの変化を堪能させて頂きました。

 何よりも、3人3様のヴィズィタントとしての想いが心に残りました。特にレイは他の2人よりも先にヴィズィタントになり、その上てAさん・Bさんの境遇も見ておりとても複雑な想いを持っておりました。この異世界で生きていくのが正解なのか、いつか戻れる日が来ることを信じて待ち続けるのか。様々な人たちの生き方を見て、せめてこれから来る人には後悔しない選択をして欲しいと思っておりました。だからこそ、リンのはやや厳しめとも思える指導だったのかなと思っております。コレスポンダントになる道もエスペラントになる道もどちらも示してあげる。それがこれからのレイの生きる目的なのかも知れません。

 最終的にリンとルカの想いによって3つのエンディングとなりました。個人的には、やはり2人で元の世界へ戻り再会するエンディングが一番美しいし良かったと思います。リンが異世界で見つけたのは、相手のことのはを聴いてちゃんと相手を理解する事の大切さでした。そして、その結果お互い愛し合える関係を作る事が出来ました。まるで夢のような日々の生活でしたが、その中で確かに成長し絆を得る事が出来たのかなと思っております。この作品はエスペラント語の習得と純百合という設定が上手く絡み合い、短いながらもまとまったシナリオとハッピーエンドが気持ち良い作品でした。今後もこうした意欲作であり普遍的な作品が読めればと思いました。ありがとうございました。


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