M.M ここスタ - KOKOKARA STARTLINE -
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
4 | 6 | 7 | 65 | 〜1 | 2021/6/6 |
作品ページ | サークルページ | DL版 ブラウザ版 |
<短いながらも、登場人物のキャラクターを魅力的に見せる要素が満載でした。>
この「ここスタ - KOKOKARA STARTLINE -」という作品は、同人ゲームサークルである「でじたるきゃっと」で制作されたビジュアルノベルです。でじたるきゃっとさんの作品は、これまでその殆どをプレイさせて頂きました。どの作品も登場人物のキャラクターが魅力的で、人物が物語を動かしていく様子が読んでいて印象的でした。特に、初めてプレイさせて頂いた「リトルウィッチ×コンチェルト」は特に印象に残っており、登場人物と合わせて背景やスチルの力というものを感じました。今回プレイさせて頂いた「ここスタ」は、どことなく「リトルウィッチ×コンチェルト」の様な雰囲気を感じました。何故なら、ヒロインの女の子が華やかだからです。勿論、ただ華やかで明るいだけのシナリオが待っているとは思っておりません。山あり谷ありの出来事を経て、より魅力的になっていく登場人物の姿が楽しみでプレイし始めました。
主人公である朝倉緋月は、アイドル事務所であるMyDOLの6期生として見事合格しました。彼女がアイドルの道へ進んだ理由は、昔見たライブで憧れの人と出会ったからです。名前は山内桃華、彼女はこのMyDOLの1期生アイドルでした。昔夢見た目標を叶えた緋月、そしていよいよ憧れの桃華と一緒のステージに立てる機会を得る事が出来たのです。ですが、緋月のアイドル活動は順風満帆とは行きませんでした。YeaTube(いわゆるYouTube)のチャンネル登録数、SNSでのバッシング、現実のアイドル活動にも通じる様々な問題や課題が降り注いできます。果たして緋月はアイドル活動を続ける事が出来るのでしょうか。そして憧れの存在である桃華とのライブはどうなるのでしょうか。山あり谷ありのアイドル活動が始まりました。
今回のでじたるきゃっとさんの作品には声があります。しかも基本の登場人物全員に割り当てられております。アイドル活動の物語ですし、ヒロインに声があると無いとで印象と言いますか愛着が全然変わりますね。喜怒哀楽がより強調されて伝わる気がしました。そしてそれ以上に驚いたのが、演出のリアルさでした。上でも少し書きましたが、この作品はアイドルのリアルな悩みや課題が表現されております。特にYeaTubeとSNSの表現は本当にリアルで、色々と試行錯誤されて作り込んだんだなという事が伝わりました。声も演出も、まさにビジュアルノベルだからこそ出来る仕掛けでありより登場人物を魅力的にしてくれました。これは是非自分の目で確認して頂きたいですね。
プレイ時間は私で30分くらいでした。選択肢は無く、一本道でエンディングにたどり着く事が出来ます。30分ですので、シナリオ的にはあっという間に終わってしまいます。それでも、1つのエピソードを通して一人の女の子の成長と言いますか人となりを見る事が出来ました。エンディングへの持って行き方も、個人的にかなり驚きでしたね。一番のネタバレ要素ですのでここでは言えませんが、これは凄いわ・・・って心から感嘆してしまいました。でじたるきゃっとさんの作品に触れた事が無い方は、もしかしたらこのここスタから触れてみるのが良いかも知れませんね。サークルさんの雰囲気(と自分が思っているもの)を一番に感じられると思いました。楽しかったです。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<アイドルに必要なのは誇り、そして自分に必要なのは本当にやりたい事を忘れない事。>
上でも書きましたが、本当に演出が見事だと思いました。特にYeaTubeの再現度やSNSのテキストのリアルさがお見事だと思いました。別に緋月は悪くないのに、あれだけ言われれば自信を無くするのも無理はないと思いました。それでも、好きな物に真っ直ぐに進んだ緋月は立派だと思いました。
作中でも言ってましたが、アイドルに必要なのはアイドルとしての誇りというものがありました。プライドとも言えるかも知れません。よく社会に属していると、プライドなんか捨てて素直になった方が良い仕事が出来ると言われます。ですけど、それは会社という組織に属している場合だと思うんです。アイドルは、自分がやりたい事そのものであり売り出すのは自分自身です。そこで自分に対するプライドもアイドルとしての誇りも失ったら、それはもはやアイドルではなくなってしまうと思うんです。だから、自分で克服しようと四苦八苦して頑張る緋月は立派だと思いました。それが、あの最後の3日間連続ライブに繋がったんだと思います。
アイドルになる事を目標にした理由、それは確かに桃華に憧れたからです。ですが、本当の理由はそれではありませんでした。アイドルを目指した理由は、好きな歌を思いっきり歌う事でした。桃華とのデュエットライブに水を差し、その後のYeaTube投票でも最下位となり、何もかも失ったと思っておりました。ですが、唯一失っていないものがありました。むしろ、色々と失敗したおかげでその唯一失っていないものを見つけ出す事が出来ました。それがハッキリしたからこそ、あの3日間連続ライブが出来たのだと思います。太陽の様に明るい緋月、フレアとしての緋月、そして歌う事が大好きな緋月、そんなありのままの緋月を見る事が出来たから、得票で1位になる事が出来たのだと思います。
まだまだアイドルになりたてですので、これからも色々と苦労する事はあると思います。SNSで悩み、人間関係で悩む事もしばしばだと思います。それでも、自分が一番大切にしている物を忘れなければ頑張れると思います。歌う事が大好き、そしてアイドルとしての誇りを忘れない、これこそが緋月が持つ最大の魅力です。そんな無限の可能性を、先輩の桃華も確かに感じておりました。いつか緋月の歌声が全国に届く日を夢見て、頑張って欲しいと思いました。ありがとうございました。