M.M こいあい −序章・一章−


<可愛らしいキャラクターの表情、そして学生らしいこそばゆい気持ちの取り交わしが印象的でした>

 この「こいあい −序章・一章−」という作品は同人サークルである「まよいせん」で制作されたビジュアルノベルです。C86で同人ゲームのエリアを回っている時に手に取った事がまよいせんさんを知った切っ掛けでして、クッキリして塗りの濃い女の子のパッケージに惹かれた事が記憶に残っております。幼なじみの男女の恋愛を描いた物語ということで、久しぶりに心温まるシナリオなのかなと思い今回のプレイに至っております。感想ですが、とにかく可愛らしいキャラクターの表情、そして学生らしいこそばゆい気持ちの取り交わしが印象的な作品でした。

 主人公である橘俊也は幼なじみである藤宮加奈と同じ高校に通っておりました。幼い頃から一緒に遊んでいた2人、その距離はとても近いものであり大変かけがえのない物でした。そんな2人は小学生の時に一つの約束をしました。それは「20歳になったら大人の”こいあい”をする」という事、この約束こそが2人ずっと仲良く過ごせてきた拠り所でした。ですがそれは逆に新しい関係に進むことへの恐れにもなっておりました。お互いを意識しだす年頃です。恋人としての関係へと進みたい気持ちは十分持っておりました。それでも幼馴染である今の関係が壊れることが怖く、一歩前に進めない葛藤が描かれております。そんな純粋で真っ直ぐな気持ちを楽しんで頂ければと思います。

 最大の魅力はもう言わずもがな、登場人物達の心理描写ですね。とにかく学生らしいこそばゆさに溢れており、プレイヤーの誰もが心を掻きむしりたくなるような衝動に襲われると思います。焦れったい、急ぎ過ぎ、そんな事を思いながら登場人物達の動向を見守って頂ければと思います。そしてそんな心理描写を魅力あふれる表情で描いております。この作品、立ち絵の表情差分が大変大きくダイレクトに心理描写を伝えてくれます。嬉しい表情、驚いた表情、寂しい表情などの描写がハッキリしており、私も思わず「おっ!」とクリックする手を止めてました。そんな魅力ある登場人物達をセリフ、行動、表情から読み取って頂ければと思います。

 加えてこの作品はボイス有りなのですが、珍しく男性キャラクターにもボイスがあります。よく女性キャラにだけボイスがある作品がありますが、その場合どうしても女性と男性でキャラクターに対する愛着にズレが生じてしまい温度差を感じておりました。ですがこの作品は男性女性両方にボイスがありますので同じく感情移入できます。恋愛は男女両方の悩みですのでこの方が自然ですね。そしてムービーがアニメーションでした。非常に拘りを感じました。立ち絵だけで十分魅力的だった登場人物達がさらに輝いて見えました。序章と一章でそれぞれアニメーションがありますので、それを楽しみにプレイするのも良いかも知れません。

 プレイ時間は私で1時間15分掛かりました。序章で30分、一章で45分といった感じです。場面転換のテンポも早いのでサクサク読み進める事が出来ます。それでも上で書きました立ち絵の表情差分やボイスとシナリオ以外の魅力にも溢れてますので、是非自分のペースで作品全体を堪能しながらプレイして頂ければと思います。そしてこの作品、各章での幕引きもうまいんですね。絶対次回作をプレイしたくなる演出になっておりました。私も早く二章をプレイしたいですね。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<俊也はもっと自分の気持ちに正直になって真っ直ぐに行動しても良いと思いますね>

 驚きました。まさかいきなり包丁で刺されて加奈が死ぬとは思いませんでした。パッケージに書かれている赤い髪の女の子の印象がガラっと変わった瞬間でした。ですが過去に戻り彼女の境遇や気持ちに触れていくうちに、本当は優しい女の子何だなということに気づきました。結果として再び千穂が加奈を刺すことはなく、あの惨劇の瞬間は回避する事が出来ました。ここからどのように物語が展開していくのか楽しみですね。

 ループものの魅力って、一周目では分からなかった登場人物達の裏側を垣間見れる事だと思っております。序章でも俊也は加奈が修一とどんな会話をしていたのか分かりませんでしたし、それが故に不安になって焦りとなってました。ですが過去に戻り千穂を経由して色々と情報を手に入れていくうちに誤解が解け、次の行動を考えられるようになりました。まあ正直一章については俊也は殆ど動くことはありませんでしたので、実質の主人公は千穂という印象でしたね。それでも最後の瞬間で千穂を止めたのは他ならぬ俊也でしたし、結果として千穂と修一は結ばれましたので結果オーライといった感じなのだと思っております。

 それにしても俊也はちょっと慎重すぎる印象ですね。謎の光から「過去の自分には絶対に会ってはならない」と言われているので仕方がない部分はありますが、結果として関わりを持ったのは千穂だけで加奈については見守るだけしか出来ませんでした。俊也が加奈の事を大切に思っていて好きであることは十二分に分かってはいるのですけど、それならばもっと考えて行動に移せても良かったのではないかと思っております。この慎重さは今後どこかで後悔につながる気がしてなりません。序章で幼馴染の関係から抜け出せた気概を発揮できたのですから、あまりプレイヤーを心配させない用に俊也は俊也の思うように行動してくれると安心しますね。

 そして現段階の最大の謎は加奈の裏の顔ですね。ムービーの中でもちょっと登場しておりましたが、本当にあの加奈に裏の顔があるのでしょうか。もしそれが本当だったら面白いですね。それとも俊也と同様に未来からやって来たのかも知れません。それならば何故未来からやってきたのでしょうか。何故印象が違うのでしょうか。これについては是非二章以降で明らかになってくれると嬉しいですね。一章の結末で一応目的は達成されたかに見えましたので、今後どのようにシナリオが展開していくのか楽しみです。最終的には末永く幸せに過ごす俊也と加奈の姿が見れることを祈って、今回のレビューとさせて頂きます。ありがとうございました。


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