M.M 君が望む永遠




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
9 7 8 90 40〜50 2006/5/17
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<徹底的な現実主義>

 この「君が望む永遠」、2001年に発売したタイトルで、おそらく最も話題性のあった作品だと思います。体験版が配布された時から異常なほどの人気がある本作、私としてもやらないわけにはいかずプレイしてみました。結果、さすが人気通りその圧倒的なクオリティに感動しました。

 まず、このゲームの特徴として言えると思うのは、BGMや背景、効果音から声に至るありとあらゆる要素が、まさに「ドラマ」を目指しているという事です。シナリオを読んでいく過程で、物語の転機になる部分や時間の経過を把握することは非常に重要なことです。そして、このシナリオというものにおいてもう一つ重要な事は、「ダラダラしない」という事だと思います。一般のゲームの場合、シナリオの基点になる部分以外は結構あっさりと展開して進む場合が多いですが、これはシナリオをテンポ良く進めていく上で重要なことであり、必然的なことだと思います。しかし、この「君が望む永遠」の特徴として、普通の何気ない日常をあっさり流すことなく非常に凝ってシナリオを展開していきます。これは、時としてシナリオが間延びしてプレイヤーを飽きさせる原因になりかねません。しかし、このゲームの場合、そういった本来ならば軽く流してしまうであろう部分に対する拘りが尋常じゃありません。学校でのガヤガヤとした雰囲気、駅のホームに電車が到着する雰囲気、自宅から出かけるもしくは帰ってくる様子など、本当に研究して描いています。そのため、本来ならば飽き飽きしてしまう日常部分でも全く飽きることなく文章を読み進めることが出来ました。この「徹底的に現実の世界を表現する」姿勢は、このゲーム業界にとって非常に貴重なものとなると思います。

 そしてシナリオですが、これもこういったゲームによくある「ご都合主義」な展開ではなく、人間の行動心理や心の中の葛藤というものをよく研究していると思いました。まず特徴として、主人公の心理描写を具体的に多くテキストに載せています。それによって、プレイヤーは如実に主人公の置かれている立場を理解することが出来ます。ここで、この主人公の心境を理解するということは、実はこういったテキストを読み進める上で大きな意味を持つことになります。プレイヤーはゲームの中の主人公を操作してシナリオを進めますが、実際シナリオの当事者はプレイヤーではなくあくまで主人公です。なので、シナリオを理解する上でプレイヤーは出来る限り主人公の心理に近付く必要があります。そういった意味で、このゲームはまさに最高の条件が揃っていると思います。そしてもう一つの特徴として、登場キャラに全く「甘やかせ」の要素が無いことです。これがこのゲームを一般に「鬱ゲー」として知らしめている原因だと思います。簡単に言いますと、キャラクターが主人公に「厳しい」のです。しかしこれは現実で考えれば当たり前の事です。そういった要素も踏まえて、非常に現実的なシナリオだったと思います。

 そういった要素も相まって、このゲームはかなりシナリオが長いです。普通に読み進めても7〜8時間は掛かるかと思います。しかし、それだけ時間をかける価値のあるシナリオであると思いますので、人生の経験の一つとして、プレイしてみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<水月エンド以外ありえない>

 一通りエンディングを見てみてまず思ったことは、このシナリオにおいてはやはり「水月エンド」しか認められないと思います。そもそも孝之があんなにも優柔不断になった原因は、遙が交通事故にあってしまって「大切な人を失う怖さ」を知ったからだと思います。だから孝之には今ある水月との生活も、遙との絆もどちらも失いたくなかったのだと思います。そしてこれは、孝之がどうしても超えなければいけない試練でもあります。現実では水月と遙を二人とも恋人にしておくことは出来ませんし、どちらを選んでも何かしらの悲しみは残ってしまいますが、それでも孝之は「覚悟」を決めることが必要なのです。

 そして、そんな状況で遙は孝之より早く「覚悟」を決める強さを持っていました。後半、三年の月日が経過しているという事実を聞いてから、遙は三年前に孝之と付き合っていたという事実を受け入れます。そして、自分が新しい一歩を進むために孝之とのさよならを決意できたのです。そんな遙を前にして、孝之の中で誰を最も失いたくはないかという答えは明白です。それは、自分の夢をあきらめてまで孝之の為に三年も付き添ってくれて、もし遙が目を覚ましたら自分達が付き合っているという事を話すと約束した水月です。自分の為に尽くしてくれた水月の為にも、なにより遙の気持ちを裏切らない為にも、孝之には水月を選ぶ道しかないと思いました。

 ちなみに、この二人以外のヒロインは自分の中では論外です。一つのシナリオとしては良いのかもしれませんが、全体のシナリオを考えるとやはり水月エンドか遙エンドに行かないことは許されないのではないかと思います。もし水月エンド以外を推奨される方が見たら喧嘩を売っているようにしか見えないレビューですが、そこはお許しくださいね。


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