M.M 君が祈った宙の果て




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 6 - 68 1〜2 2018/10/13
作品ページ サークルページ



<かわいい女の子と作る、ひと夏の思い出を堪能してみて下さい。>

 この「君が祈った宙の果て」という作品は同人サークルである「みるみるそふと」で制作されたビジュアルノベルです。みるみるそふとさんの作品も「君と歩んだ最後の一歩」「夢の中の私」「悪魔がくれたモノ」「Psyche Girls」「非実在系カノジョと過ごす日常」とかなり沢山のタイトルをプレイさせて頂いております。初めてプレイした「悪魔がくれたモノ」が2017年1月27日ですので、今回の「君が祈った宙の果て」を加えれば1年半で7タイトルにもなるんですね。始めみるみるそふとさんに惹かれたのは、とにかく可愛くて角砂糖の様な甘酸っぱさを感じる女の子のデザインでした。そして、タイトルを重ねていく中で学生・悪魔・魔法少女と様々な属性の女の子を見てきました。プレイ時間も比較的短く、手軽な美少女ゲームを制作されるサークルさんという印象を持っております。今回もパッケージに3人の可愛らしい女の子が描かれております。舞台は夏でしょうか、単純にキャラクターを楽しもうという気持ちでプレイ始めました。

 主人公の海斗はどこにでもいる普通の大学生です。今は夏休み真っ盛り、エアコンが壊れた自分の部屋でグダグダと過ごす日常を過ごしてました。すると、仲の良い女友達である鈴葉が2人っきりの離島への旅行を持ちかけてきたのです。聞けば、なんと旅行雑誌に書かれていた男女ペアチケットの抽選に当選したとの事。何もすることが無い海斗ですので、2人っきりというシチュエーションに少し戸惑いつつも特に断る理由はないので行く事にしました。ですが当日集合場所の港には海斗と鈴葉の2人だけ、他の当選者は誰もいません。港にやってきた豪華客船の案内人である天利玲に導かれて、目的の離島にたどり着きました。そこにはポツンと佇む洋館、中には唄代華という名のお嬢様1人。主人公と女の子3人という、ちょっと不思議な夏休みが幕を開けるのです。

 冒頭でも書いておりますが、みるみるそふとさんの作品の特徴は可愛らしい女の子です。今作も、性格の違う3人の女の子が登場します。気さくで遠慮の要らない友達の鈴葉、快活で元気の良いお嬢様の華、その華に使える律儀なメイドの玲、この3人とどのような離島生活を送るのか楽しみにしてみて下さい。そして、海斗は常識を持ち合わせていながらも割と突発的なシチュエーションに強いです。急な離島生活にも気が付けば順応し、それなりに楽しむ素質を持っております。そんな主人公補正十分な海斗になり切り、女の子たちの秘密と離島の正体を探ってみて下さい。基本的には軽い心構えでプレイする事が出来ます。単純に離島生活を楽しめば良いという事ですね。

 その他、BGMや背景はフリー素材をメインに使用しております。システムも基本的なものは全て揃ってますのでストレスなく読み進める事が出来ると思います。みるみるそふとさんは、個人的にも他のサークルさんと比較し非常にハイペースで作品を作っている印象があります。必ず年1本以上はコミケでは新作を出してますからね。そういう意味で、パッケージ化され非常にコンパクトにまとまった作品と言えるかも知れません。少なくとも、パッケージの女の子に少しでも惹かれたのであれば間違いなく当たりだと思います。美少女ゲームらしい展開を素直に堪能し、休日のちょっとした時間を満喫して頂ければと思います。

 プレイ時間は私で1時間50分程度でした。選択肢は殆どなく、分岐を気にする事無くプレイする事が出来ます。シナリオも割とスイスイと進む印象でした。途中のシチュエーションでエピソードを描く、点と点をどんどん結んでいくように物語は進んでいきます。夏休みは長いです。ですがその長さは有限です。いつまでも終わらないと思っていた夏休みが気が付けばもう終わりが見えてしまう、そんな一抹の寂しさも味わえるかも知れません。プレイ中は特に感じなかった何か、それがプレイ後に1つでも湧くものがあれば、きっとそれがサークルさんの狙いですね。ひと夏の思い出を、是非堪能してみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<2人が願った祈り、それは確かに宙に届いてくれたんですね。>

 最後までプレイして、みんな本当に優しい性格だなと思いました。華は家族と家の事を考えて島に残り続け、玲はそんな華に外の世界を見て欲しいと願い続け、海斗と鈴葉はそんな華と玲を受け入れる覚悟を決めました。それぞれが自分以外の何かを優先して行動する、そんな尊い気持ちがこの優しい世界を作り上げたのだと思っております。

 私自身、海斗の考えに割と共感できるなと思っておりました。それは、このまま離島での変わらない日常を過ごしても良いのではないかという事です。玲と慎ましくも楽しい日常を過ごせる、時々訪問者がいて期間限定で同じ釜の飯を食う、それはそれで十分満たされた生活だと思いました。そして、そんな生活を送る華にとって島から出るという事は完全に手の届かない生活であると言えます。勿論実際は本人の気持ち一つですのでそんな事は無いのですが、島から出れないと思い込めばそれ以外の選択肢は必然的に消えてしまいます。まるで、夜空に瞬く星を眺めるだけで手に取れない様です。ですが、もしその夜空の星が掴めると知ったら、皆さんはどうするでしょうか。

 この作品では定期的に星の巡り合わせという言葉が出てきました。空に浮かぶ星は基本的にその姿を変える事はありません。ですが、時々流れ星として一瞬違った景色を見せてくれます。それを、玲は訪問者になぞらえて星に例えていました。そして、その星は自分の意思があれば掴むことが出来るのです。後は本人の気持ち次第、誰も何も制約などしていないのですから、手を伸ばすか伸ばさないかは本人が決める事でした。そして、ついに最高の星の巡り合わせがやってきました。何しろその星は、自分から手を差し伸べてくれたのですから。

 結局のところ、最後まで玲が抱える何かは語られる事はありませんでした。これは想像ですが、玲は本当に華の母親だったのではないでしょうか。玲が生活している部屋の肖像画が玲にそっくりな事、洋館には女の子の幽霊が存在している事、これらの事実から、死んだ母親が玲として蘇ったのではないかと想像します。そうだとすれば、いつまでも玲と華が一緒にいる事は出来ませんね。死んだ人はどうしてもその土地に縛られてしまいますが、生きている人は自由に歩く事が出来ます。何よりも、玲自身が華を拠り所にしすぎると成仏できなくなる気がしてなりません。そんな、母親と娘の愛情あふれる物語に思えました。

 最後、島を飛び出して新しい道を歩み始めた玲。大変な事が多いでしょうがきっと上手くやっていけると思います。何故なら、隣には自分で掴んだお星さまがいるのですから。そして、玲はこれで晴れて自由の身となりました。後は、誰もいない洋館を掃除してひっそりと居なくなるだけですね。それでも、大切な娘が未来への一歩を歩んだのですから、悔いのない人生だったのだろうと思います。玲は目的を達成し宙の果てへ、華は宙の果てから降ってきたお星さまと共に、そんなひと夏の切なくもハッピーエンドな物語を堪能させて頂きました。ありがとうございました。


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