M.M 君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 - B 3〜4 2015/1/6
作品ページ サークルページ



<「石榴の時計」と「蝶々髑髏」の幕間の物語。是非三者三様の魅力を楽しんで頂きたいですね。>

 この「君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ」という作品は同人サークルである「YUKIRINS」で制作されたビジュアルノベルです。YUKIRINSさんの作品では過去に「石榴の時計」や「蝶々髑髏」をプレイさせて頂き、大正時代を舞台とした本格的なミステリーに毎回楽しませて頂いております。これまでプレイしたYUKIRINSさんの作品は全て大正浪漫ミステリーというシリーズものでして、舞台や主要な登場人物は共通です。今回プレイした「君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ」は過去にプレイした「石榴の時計」と「蝶々髑髏」の幕間の物語、ちょっとした盤外篇となっております。

 主人公である香山理穂子は香山家男爵の一人娘です。理穂子には許嫁となっている遠野高志がおり、彼と夫婦となる為に女学校に通いながら日々勉強を行っております。許嫁である遠野高志には1人の友人がいました。それが毎回見事な推理を披露してくれる日本人とイギリス人のハーフである紫藤直樹です。理穂子の周りでは毎回奇妙な事件が発生します。そして時には殺人という大きなものもあります。天真爛漫な理穂子はその真相が知りたくて仕方がありません。そこで直樹と共に探偵見習いとして事件に首を突っ込んでいきます。理穂子と直樹、そして理穂子の女中である七瀬八重の3人を中心として、決して穏やかではない事件を解決していくシリーズです。

 上でも書きましたが今回プレイした「君想う影、嵐と吹鳴に消ゆ」は過去にプレイした「石榴の時計」と「蝶々髑髏」の幕間の物語です。その為2つ両方をやる必要はありませんが出来れば過去作である「石榴の時計」はプレイして頂きたいですね。今回は盤外篇という事で、香山理穂子・紫藤直樹・七瀬八重の3人にスポットが当たった3つの物語を読むことが出来ます。その中でも香山理穂子の物語は完全に「石榴の時計」となっております。その為初めて大正浪漫ミステリーをプレイする方は香山理穂子の物語はプレイしてはいけませんね。何よりも盤外篇ですので過去の作品をプレイされた方向けです。是非三者三様の魅力を楽しんで頂きたいですね。

 プレイ時間は私で3時間30分掛かりました。ちなみにメインシナリオは紫藤篇です。紫藤篇は完全オリジナルのミステリーで、紫藤がまだ理穂子と会う前に起きた事件の物語です。これだけで2時間掛かりました。2時間ですのでこれまでの大正浪漫ミステリーシリーズの中では短い方ですが、映画一本分くらいの十分楽しいミステリーを味わうことが出来ます。是非プレイヤーの皆さんには一発で犯人を当てて欲しいですね(ちなみに私は外しました)。本格的なミステリーに加えて魅力あるキャラクター、過去作品を含め是非多くの方にプレイして頂きたいですね。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<先入観を出来るだけ取り除いて状況を客観的に分析する事の大切さ>

 私、実は始めからキャリーは犯人ではないと決めつけていました。あの天真爛漫で純粋無垢な姿に魅せられて、すっかりその毒牙に掛けられてしまいました。今思い返せば、キャリーはどのタイミングでクレアが死んだ事を知ったのかが疑問でした。ですがそんな疑問すら気にならなくなるくらいキャリーの毒牙は強烈でした。久しぶりに「やられた!」と思った瞬間でした。

 今作も相変わらずの魅力あるキャラクターでした。理穂子篇ではいつも通りの天真爛漫な理穂子、気だるそうで人をからかうような姿勢の紫藤、そして我らが最強の女中である八重さん、それぞれの性格がよく見えるシナリオでした。ミステリー要素は殆どありませんでした。唯3人が樋川家の別荘に呼ばれて、理穂子がずっと勘違いしながら事が進んでいく様子を描いただけでした。理穂子は本当に真っ直ぐな女の子ですね。本当その性格は好きなのですけど真っ直ぐ過ぎて危ういですね。いい加減高志は理穂子の首に紐でもつけて目を離さないようにするべきですね(無理ですけど)。シナリオは駆け落ちする男女の話でした。毎回愛憎溢れるミステリーでしたので、こういう純愛も素敵ですね。

 そしてメインである紫藤篇ですが、これはもう上で書いたとおりです。絶対にモーリスかメアリーのどちらかだと思ってました。何故ならキャリーにクレアを殺す理由が見い出せなかったからです。恨みにせよ自分の欲望にせよ、殺人にはそれなりの動機があると思っております。ですがキャリーの場合はそんな人間が持つ当たり前の感情すら超越しておりました。文字通り天才なんだと思います。天才で敏く、それでいて理性がありませんので出来ると判断したことは何でもしてしまいます。これはとても恐ろしい事、紫藤も彼女の未来について心配というよりも恐怖しておりました。まともに相手なんて出来ません。恐らくモーリスもメアリーも、決してキャリーの事を改心させることは出来ないのだと思いました。

 いやいや、先入観って本当に恐ろしいですね。否応なしに思考停止になってしまいますからね。これは割と現実世界でも起こる事だと思います。何かトラブルがあったとき、状況から一つずつ可能性を消していき答えにたどり着くと思います。もしその可能性の消去で間違いがあったとき、それに気づくのは大変な事です。何故なら一度自分の意思で消したのですから。それほ再び同じ舞台に呼び戻すのは非常にエネルギーが必要です。先入観を出来るだけ取り除いて状況を客観的に分析する、紫藤は本物の探偵だなと思いました。

 最後の八重篇は完全にオマケですね。とりあえず最強の八重さんを見ることが出来て感無量です。是非次回はしどうくんエンドではないいつもの大正浪漫ミステリー調で、八重さんメインのシナリオを読みたいですね。全体的にいつもの大正浪漫ミステリーで楽しかったです。次回作も楽しみにしております。


→Game Review
→Main