M.M 冠を持つ神の手




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 7 82 23〜 2019/9/29
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<選択の数だけエンディングがある。本当に人生を歩いているかの様な幅の広さに脱帽でした。>

 この「冠を持つ神の手」は同人サークルである「小麦畑」で制作されたビジュアルノベルです。小麦畑さんの作品をプレイしたのは今作が初めてです。プレイした切っ掛けは、私がたまに行っている「私がプレイするタイトルを当てたら好きな作品をプレイさせる事が出来る権利」企画で正解された方からのリクエストです。正直な話、サークルさんの名前も作品名も初めて聴きました。ですが、お知り合いの同人ゲームプレイヤーの方に訊いてみると結構有名なタイトルみたいで、今回知る事が出来て良かったと思っております。プレイ開始の告知をTwitterでした時も割と反応が多かったので、確かに有名なんだなと確信しました。

 そして、この作品をプレイするに当たってリクエストされた方から注意点がありました。それは「メチャメチャ難しい」という事です。この作品は厳密に言えばビジュアルノベルではありません。育成シミュレーションと言った方が良いかも知れません。プレイヤーは主人公に一週間の行動を指示し、それに応じてランダムで指示した行動の結果が得られます。そしてその中で登場人物との好感度を高めたり低めたりする事でそれぞれのエンディングに分岐していきます。この登場人物の数とエンディングの数が非常に多いのです。登場人物の数は11人、エンディングの数は5つ、つまり5×11=55エンディング存在する事になります。これは骨が折れるなと分かっておりましたが、実際にプレイして自分の想像以上に労力が掛かる事を思い知りました。

 主人公はとある田舎に住む若者です。ここで若者と言ったのは、この世界では特定の年齢になるまで自分の性別が定まっていないからです。そして、主人公の額には選定印と呼ばれる王位継承の資格を持つ印が刻まれておりました。選定印は神がもたらした正当なもの、主人公は王位継承の為に王城へと導かれて1年を過ごす事になります。主人公が王になるのかなれないのかは、プレイヤーであるあなた次第です。そして、特定の男女と添い遂げるかどうかもあなた次第です。選択の数だけエンディングがあると言っても良い、とても自由度の高い1年間が幕を開けるのです。

 この世界では、1年=6ヶ月であり1ヶ月=6週間であり1週間=10日です。そして、プレイヤーは1週間の行動を選択し主人公を訓練させる事が出来ます。また、途中5日目と10日目は訓練日ではなく中日であり休日です。能力値や好感度によってイベントが起きたり各地点に移動してイベントを起こしたりする事が出来ます。これらのルーティンをこなす事でそれぞれのエンディングにたどり着くのです。主人公が成人するのは1年後ですので、全部で6週間×6ヶ月=36回の選択があります。そして、その選択のどれも疎かにしてはいけないのです。

 主人公には対象人物に対して印象度を設定する事が出来ます。それは愛情と友情であり、イベントの度に少しずつ調整する事が出来ます。また、逆に対象人物から主人公に対して好感度が設定されております。これはイベントでの選択肢やその他の要素によってやはり前後します。基本的に主人公にはこの好感度は見えません。唯一分かるのは、印象度と好感度の乖離具合で背景の色が黄→緑→青と変わっていくのです。そして、この印象度や好感度によってイベントや選択肢が制限されエンディングの方向性も自ずと決まってくることになります。これもまた、一つひとつの選択を疎かにしてはいけません。

 例えば、対象人物とのイベント中に選択肢が出るのですが、主人公の能力値が一定以上でないと対象人物の好感度が上がるどころか下がったりします。そもそも、主人公が対象人物をどう思っているかで選べる選択肢そのものが制限されてしまうのです。そして、イベントをこなす事で新たなイベントが出現していき、それぞれ目的の好感度を得る為に奮闘する事になります。始めからどの人物のどのエンディングを狙うかを定めて始めからプレイしなければいけないという事です。加えて、日々の訓練の結果は完全にランダムです。例えば武術の項目を選んでも、結果次第で伸びが良ければ悪くもなりますし、あまり体力を使わなかったり使ったりと幅が大きいです。つまり、この選択をすれば確実にエンディングを迎える事が出来るという事が保証されていないのです。

 その為、私は毎週毎週セーブを取って訓練の結果が良くなければロードしてやり直してましたね。ある程度の妥協もありましたが、そうやって毎回毎回吟味していかないといざ特定のイベントの時に主人公が活動できないのです。幸いこの作品のセーブスロットは300個あります。完全にセーブ&ロードする事を分かって用意されてますね。とりあえず何度かリセットしながらもそれなりの数のエンディングを迎える事が出来ました。何とか物語上の目的である王になる事も出来ました。ですけど、途中から完全に作業になってしまい物語を読んでいる感覚が無くなってしまっていました。

 この作品は恐らく一周するのに2時間程度掛かります。つまり、全ての選択や訓練の結果が良くても2×55=110時間掛かる事になります。勿論そんなに上手く事が運ぶはずがありません。自然と全てのテキストをスキップして結果のみ気にしている自分がいました。ああ、これじゃダメだなと思い一旦ここでプレイを終了して今回のレビューとさせて頂いております。全てのエンディングどころか半分のエンディングも迎えておりませんのでネタバレ有りのレビューは書けません。せめて全ての登場人物のエンディングを1つ以上埋めた後でないとネタバレ有りのレビューは書けないですね。それまでは、しばし休憩します。

 プレイ時間ですが、このネタバレ無しのレビューの段階で23時間20分程度費やしてました。たどり着いたエンディングは全部で11個でした。まずは表向きの目的である王になる事が出来ましたし、全体的な流れや凄まじさを理解する事が出来ましたのでそこは良かったかなと思っております。いやーすごい作品ですね。これは沢山のファンが出来るのも納得でした。育成シミュレーションというのは、総じてこの位のボリュームなのでしょうか?全てのエンディングを迎えた方、本当に尊敬します。様々な登場人物の顔が見れて良かったです。楽しかったです、ありがとうございました。(個人的には、女の子になったヴァイルが可愛くて悶えてました)


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現在ネタバレのレビューはありません。見たい方も見たくない方も避難して下さい。