M.M 華焔櫻 -漸篇-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 7 - 76 3〜4 2015/8/25
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<いつも通りの大正浪漫ミステリーシリーズで本当に安心感を覚えます。>

 この「華焔櫻 -漸篇-」は同人サークルである「YUKIRINS」で制作されたビジュアルノベルです。「YUKIRINS」さんの作品では過去に「石榴の時計」「蝶々髑髏」の方をプレイした事があります。これらの作品は全て「大正浪漫ミステリーシリーズ」というシリーズものであり、主要な登場人物や舞台は全て共通となっております。今回レビューしている「華焔櫻(読み方はかえんざくら)」もこの大正浪漫ミステリーシリーズのタイトルであり、過去にプレイした2作の続編となっております。

 舞台は大正時代、主人公である香山理穂子は貴族である香山家の一人娘です。貴族の娘らしく女学校に通っており、将来は軍人である遠野高志と結婚することが約束されております。そんな理穂子ですがその性格は天真爛漫そのもので、気になったものはとことん調べないと気がすみません。そんな性格ですので、許嫁の遠野高志はもちろん女中である八重も心配で気が気ではありません。ですがその性格こそが理穂子の魅力。その天真爛漫さですっかり周りの雰囲気を明るくしてしまいます。そんな理穂子の周囲で起こる奇妙な事件。それを探偵である紫藤直樹と共に解決していくのが今シリーズであり、理穂子を始め登場人物たちの魅力に溢れた様子がお気に入りです。

 本シリーズも3作目(番外編を含めれば4作目)という事で、冒頭の理穂子と直樹と八重のやり取りを見るともう安心感すら感じます。この会話のテンポこそ大正浪漫ミステリーシリーズですね。それでも過去作と比べて幾つか改良されている点がありました。一つは立ち絵の増加です。今作は季節が冬という事でオールオーバー姿の理穂子を拝む事が出来ます。正直これだけで感無量ですね。前作である「蝶々髑髏」ではウェディングドレス姿も見る事が出来ましたし、こういったサービスは本当に嬉しいです。そして立ち絵の種類が増えているのは勿論ですが、同じ立ち絵でも距離感の違う差分が用意されております。その為各場面でよりお互いの距離感を掴む事が出来ます。

 プレイ時間は私で3時間30分程度掛かりました。タイトルにあります通りまだ前編ですので、事件は始まったばかりです。怪しい登場人物は沢山いるのですが誰が犯人なのか皆目見当がつきません。このシリーズ、本当に誰が犯人でも不思議ではない人物描写があります。誰が本当の事を言っているのか、今見せているその表情は本心なのか、恐らくこうした擬人暗記こそが事件をより大きなものにしているのかなと思っております。果たして今回も紫藤直樹は事件を解決できるのか、理穂子はどのような目に遭ってしまうのか。早く後編がプレイしたいですね。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<久しぶりに理穂子の魅力が全面に出ていたシナリオだと思いました。>

 今作は久しぶりに理穂子の素直さと言いますか可愛さが際立っていた気がしました。冒頭まさかの紫藤直樹のダウン、そしてそんな紫藤直樹を心配し案ずる理穂子。途中涙を流してしまいますけどそれを見せて心配させまいと気丈に振る舞う様子は理穂子らしいですね。いつまでも落ち込んでおらず持ち前の天真爛漫さで事件解決に走り回る様子も見ることが出来、どんどん後半に向けて加速していきました。

 思えば理穂子が主体となって謎を発見し解き明かそうとするのは今作が初めてなのではないかと思います。今までも事件に対して理穂子が首を突っ込みそこから糸口が見つかるケースはありましたが、それはあくまで紫藤直樹が推理を進めていく過程での話でした。ですが今回はその紫藤直樹が風邪でダウンしているので、現場検証も聞き込みも全て理穂子がしなければいけないのです。紫藤さんのように上手く進める事が出来ない理穂子のもどかしさ、現場に行くことができず安楽椅子探偵を余儀なくされる紫藤さんの歯がゆさ、メインキャラクターの今まで見る事が出来なかった色々な顔が見れました。

 後は今作でメインキャラクターについて色々と過去を知る事が出来ました。具体的には紫藤直樹の母がスペイン風邪で亡くなった事や理穂子が早くに母を亡くし由梨江さんに育てて貰った事です。もしかしたらそのような境遇だからこそ、理穂子と紫藤直樹の相性は良かったのかも知れません。どこか人の死に対して敏感である印象は持ってましたが、最愛の人物を亡くしているからなんですねきっと。紫藤直樹が探偵になるのは必然であり、理穂子がそんな紫藤直樹の助手をやるのは予定調和だったのかも知れません。

 そしてそんな厳しくも優しい由梨江さんはもうこの世にはいません。皮肉ですよね、由梨江さんの死体の第一発見者がまさか理穂子だったなんて。ですが由梨江さんの死体を見つける事が出来たのは理穂子の観察力のおかげでした。誰も使用されていない一等号室。もし理穂子が見つけていなければもっと発見が遅れていたかも知れません。確実に探偵としての能力は上がっておりました。理穂子もいつまでも悲嘆に暮れている訳にはいきませんね。持ち前の明るさ、完全回復直前の紫藤さん、そして我らが最強女中の八重さんと共に是非事件を解決して欲しいですね。果たして燃え盛る桜に括られていたのは誰なのか。まだまだ凄惨な殺人は続くのか、後半を待つことにしましょう。


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