M.M INSIEME-インシエメ-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 8 7 80 1〜2 2017/11/24
作品ページ サークルページ(作品ページと同じ)



<異国の雰囲気を最大限活かした背景とBGMの上で、少女とおじさんという2人組の調査劇をお楽しみ下さい。>

 この「INSIEME-インシエメ-」という作品は同人サークルである「みちばたろーる」で制作されたビジュアルノベルです。みちばたろーるさんと初めて出会ったのはデジゲー博2017で島サークルを回っている時でした。デジゲー博2017には全部で100前後の同人ゲームサークルさんが参加されていたのですが、ビジュアルノベルのサークルさんは10前後という事で1つ1つじっくりと見る事が出来ました。その中でも一際目を引くパッケージだったのが今回レビューしている「INSIEME-インシエメ-」です。丁寧に描かれた人物と背景、そして見やすくセンスの良いタイトルロゴに惹かれました。デジゲー博という初めて行ったイベントで出会えた縁もあり、早めにプレイしようと思い今回のレビューに至っております。

 舞台は日本ではないどこか西洋の異国です。その国では貧富の差が明確にあり、貧民街では多くの浮浪者と孤児が暮らしております。ですが決して暗澹とした空気ではなく皆キラキラした笑顔を見せており、辛くも楽しみを見出しながら元気に暮らしております。主人公であるニカもまたそんな貧民街に暮らす孤児であり、日々街の情報をマフィアに売りながら生計を建てております。情報屋としての仕事に誇りを持っており、誰もが彼女の事を慕っておりました。そんなニカがある日いつものお気に入りの一角に行くと、そこには見知らぬ男が立っておりました。どこか裏がある雰囲気を感じ取ったニカがその場を離れた直後、黒ずくめの男に襲われてしまいます。それを助けたのは先程の見知らぬ男、名をラドと言います。こうして出会ったニカとラド、2人のとある事件を負った調査劇が幕を開けるのです。

 最大の魅力は何と言ってもニカとラドの2人です。ニカはまだまだ子供の女の子なのですが、快活な性格でありその元気さに自然と笑顔になってしまいます。またただ元気なだけではなく年齢以上に敏い部分があり、常に考えながら行動しております。彼女が子供ながら情報屋として生計を立てているのは紛れもなく彼女自身の実力によるものです。ニカが何故情報屋をしているのか、是非その心の奥底にあるものを探してみて下さい。一方ラドはまさにハードボイルドという言葉がピッタリ合うダンディなおじさまです。掴みどころが無い性格をしておりますが、女性への対応の仕方に慣れておりナチュラルに周りの人を惹きつける魅力を持っております。行動力もあり、常に先読みをしながら動いておりますので裏を取る事が出来ません。そんな余裕のあるラドと天真爛漫なニカの組み合わせは、女の子とおじさんという属性もあり大変マッチしております。是非彼女らの会話一つ一つ行動一つ一つに注目して欲しいですね。

 他にも背景やBGMは全てオリジナルでありどちらにも力が入っております。背景は実際の異国の雰囲気そのままで、路地裏の雰囲気やお店の内装などリアルに再現しております。ただ場面の景色を描いているだけではなく、光の書き方なども工夫が見られ臨場感を感じました。BGMは場面にあっているのは勿論ですが、全体的にオシャレであり喫茶店などでずっと流れていそうな雰囲気でした。これもまた異国という舞台を意識して作られたものだと思いました。またオープニングムービーはボーカル曲であり、ジャズピアノをメインとした曲調が素敵でした。プレイ中も一部ボーカル曲があり、とにかく雰囲気を大切にしていることが伝わりました。

 プレイ時間は私で1時間30分程度でした。この作品は選択肢があり、それによって全部で3つのエンディングに分岐しました。選択誌の数は少ないので総当りで全てのエンディングにたどり着けると思いますが、ここで注意が必要です。既読スキップがあるのですが、既読なのにスキップしなかったり未読なのにスキップしたりと上手く機能しません。エンジンがティラノスクリプトですのでまあこの程度のバグは致し方がないかなと思いますが、繰り返しプレイする時はご注意を。あとこれもティラノスクリプトの特徴ですが、バックログが雀の涙程しかありません。うっかりENTERキーを押しっぱなしにしてしまってテキストを送ってしまったら、読み返すのは難しいでしょう。これも慎重に進める事ですね。システム以外は非常に完成度の高いものとなっております。是非異国の世界観を味わい魅力的な人物を感じてください。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<どんなに距離が離れても心は一緒。それはニカもラドも未来を見据えているからだと思いました。>

 一通りエンディングを確認してから改めて分岐の確認をしたのですが、これニカの性格と言いますか性質を理解していれば簡単にED3にたどり着けるんですね。ニカの特徴は年齢と比べて敏いところです。そうであるならば、危険なところに首を突っ込むような、不用意なところに情報を漏らすような短絡的な選択をしてはいけないんですね。そこを守れば、簡単にED3にたどり着くことが出来ました。逆に短絡的な選択をすれば、それを一部始終見ていたラドが「この子はこれ以上事件に関わらせると危険だ。」と思ってしまうんですね。とても納得しました。よく考えられている選択肢だと思いました。

 ネタバレ無しでも書きましたが、とにかくニカとラドの魅力が印象的な作品でした。天真爛漫でハツラツとした様子が魅力のニカですが、自分の事を可愛いと言われて照れる様子、普段着る事が出来ないドレスを着て自分に見蕩れる様子、美味しいケーキを食べて言葉を失う様子は普通の女の子らしくてとても可愛かったです。そしてそれ以上にニカが輝いて見えたのは、学校に行って勉強して自分の力で未来を切り開くとう信念を買えなかった事です。どのエンディングに行ってもこの信念は変わりませんでした。自分の力でラドに追いつきたい、きっとニカなら達成出来ると思いますね。間違いなく素敵なレディになれると思います。

 そしてラドのハードボイルドはかっこよかったですね。仕草の一つ一つにスキがないのは勿論ですが、さりげない雑談で相手の気を引いてそのスキに目的を達成するテクニックは流石特殊刑事という感じでした。何よりも女の子の扱いがとても上手かったです。娼婦をサラリと交わす様子、ニカにドレスを着せる時にさり気なくスリーサイズを把握している様子、ニカが好きそうなロールケーキを選択した様子、その全てがちゃんと計算されていて、ちゃんと相手の事を考えている証拠でした。そして最後、ニカを誘拐したオルランドに対して真剣に怒ってました。ラドは唯のハードボイルドではない、情熱と信念を持った立派な刑事でした。

 こんな2人ですので、どのエンディングでもカッコよさは失われなかったですね。ED1では、ニカを連れ回すのは危険だと察知したラドがニカの為に施設と学校の全てを用意して消え去ります。これだけでも十分ラドはカッコ良いですが、それ以上にニカの決意がなおカッコ良かったです。ED2では事件を解決して離れ離れになるニカとラドを描いてましたが、そこに悲壮感はなくいつか必ず再会してやる・そうなら追いついてみろという希望に満ちた終わり方でした。ED3は事実上のハッピーエンドなんだと思います。ラドの過酷な仕事に意地でもついていくと決意したニカです。最高のパートナーとしてこれから幾つもの事件に関わっていくのだと思います。どのエンディングでも爽やか、結果に一喜一憂するのは一瞬で、そこからすぐに未来を見据える力強さは私も見習いたいと思いました。

 タイトルになっている「INSIEME」とはイタリア語で「一緒」という意味だそうです。その名の通り、ニカとラドが一緒になる事で事件を解決に導く事が出来ました。そして、2人の気持ちはこれからもずっと一緒なのだと思います。離れ離れになるエンディングでも目指すものは一緒、共に歩むエンディングでは距離感が一緒、1人ではなく2人で一緒にいることの大切さを感じる事が出来ました。仄かな恋愛要素もあり、可愛らしさもあり、カッコよさもあり、異国の雰囲気も精一杯感じる事が出来、非常にまとまりのよい作品だったと思っております。是非これからもこのような素敵な作品が読めればと思いました。ありがとうございました。


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