M.M 碧落航路




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 - B 3〜4 2020/1/17
作品ページ(なし) サークルページ



<ミステリーは勿論、紫藤直樹と遠野高志の別な一面も堪能して初めて作品全体を楽しめると思います。>

 この「碧落航路」は同人サークルである「YUKIRINS」で制作されたビジュアルノベルです。YUKIRINSさんは「大正浪漫ミステリー」というシリーズ物を連載しており、これまで「石榴の時計」から全ての作品をプレイさせて頂いております。天真爛漫な女学生である香山理穂子と日本人とイギリス人のハーフである紫藤直樹を中心に数々の難事件に挑んでいくシナリオであり、本格的なミステリーと大正時代を丁寧に表現した描写が好きです。背景描写は全てオリジナルであり、BGMは使い方が上手で場面を彩ってくれます。そんな大正浪漫ミステリーシリーズのC97での新作が今回レビューしている「碧落航路」です。いつも通りの雰囲気できっと楽しませてくれる核心と共にプレイし始めました。

 今回レビューしている「碧落航路」は、大正浪漫シリーズにおける3つ目の番外編となっております。時間軸はこれまでの最新作である「万華鏡の柩」の後日に当たりますが、実際に事件が起きたのはまだヒロイン香山理穂子が許嫁である遠野高志と会ったばかりの頃です。勿論香山理穂子もみんな大好き七瀬八重も登場しません。紫藤直樹と遠野高志、そして高志と同じ海軍に所属している同僚達が今回の事件の主役になります。これまでのシリーズをプレイされた方であれば、今まで見たことが無い紫藤直樹と遠野高志の姿を見る事が出来るかも知れません。初めてシリーズに触れる方は、まずはメイン作品からプレイするのが良いですね。

 番外編となってはおりますが、そのボリュームは中々のものでした。最も、ここ最近の大正浪漫シリーズはメイン作品でもトータルプレイ時間が15時間に迫ってきており、メイン作品との相対的な時間は変わりません。とりあえず、番外編とは言え十分本格的なミステリーを楽しむ事が出来ました。選択肢の数などは少なくなっておりますので、万が一犯人が分からなくても総当たりでエンディングにたどり着くことは出来ます。ですが折角ですので是非一発で犯人を当てて欲しいですね。本格的なミステリーになっているとはいえ番外編ですのでそこまで長大で凝った中身ではありません。1つの事件に対して丁寧に場面を説明しておりますのできっと当てる事が出来ると思います。

 プレイ時間は私で3時間45分程度掛かりました。導入部分とエピローグは直接事件とは時間軸が違っておりますので、実際に事件部分については3時間未満といった感じでしょうか。その中で新しい登場人物が複数人登場し、彼らの人間関係や背景を説明しながら事件が起こりますのであっという間という印象でした。選択肢もそれなりにありますので、途中途中で自分がどれだけ理解出来ているかをテストする感覚で選ぶと良いと思います。最終的に犯人を当てる事になりますので、時にメモを取りながらプレイするのが良いかも知れません。この作品をプレイされている方の多くはシリーズを理解されている方だと思いますので、ミステリーと合わせて是非紫藤直樹と遠野高志の行動や表情にも注目して欲しいです。両方楽しんで、きっと作品全体を堪能出来ると思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<この番外編は、改めて紫藤直樹と遠野高志の友情を確認するものだったのかなと思っております。>

 今回の番外編は、遠野高志を中心とした軍人たちの関係性がメインだと思いました。基本的には軍人ですので曲がった事が嫌いです。それでもそれぞれが個性を持っておりますので、意見のぶつかり合いや衝突が起きるのは当たり前です。ましてや、そこに女性が絡むとなればもう泥沼になるのは必然だったのかも知れません。

 最後まで読んでみて、きっとこの事件は稲里小夜子がいなかったら起きなかったんだなと思いました。小夜子の小悪魔的な魅力に、結局のところ誰もが絆されてましたもの。小夜子と付き合っていた菊浦、それでも自分の自由の為に菊浦との付き合いを続けつつも賀来田と契約しました。その裏で美人局として瑞尾を巻き込み、阿片の媒介人として今浜も関わっておりました。たった1人の女性がこの短時間に4人もの男を手籠めにする、さぞ魅力的であり可愛らしい女性だったんだろうなと思いました。男性陣も馬鹿ばかりではありませんでしたからね。軍人ですのでそれなりの良識がありましたが、そんなものすら吹き飛ばす何かが小夜子にはあったのだと思います。結果として、そんな小夜子も三流のペテン師に殺されてしまいました。

 紫藤直樹にとって、この時間は詰まらない物だったみたいです。殺人事件は起こりましたが、犯人である瑞尾の行動は短絡的であり証拠も残っておりとても難事件にはなりそうにありませんでした。しかも、証拠を突き付けても論理も何もない言い訳ばかり繰り返してもう張り合いも何もあったものではありません。本当にお粗末な時間でした。それでも傑出した図々しさは一流の様ですので、もしかしたらいつかどこかの場面で紫藤直樹にリベンジしてくるかも知れませんね。まあ、紫藤直樹の敵ではありませんのでまた返り討ちしてくれるだろうと思っております。

 後は、やはり紫藤直樹と遠野高志の友情関係は素敵でしたね。基本的に外野の存在であった紫藤直樹でしたので、遠野高志がいなければこの事件は事件として表に出なかったのだろうと思います。しかし、この二人の友情についてはこんなお粗末な事件で語る訳ではありません。遠野高志が香山男爵の御令嬢と結婚するという事実を聴いた紫藤直樹は、日本の風習に不慣れでありながら真剣に遠野高志の将来を心配しておりました。そんな男爵の様な上の立場の娘と結婚しても碌なことにはならない、それで高志は良いのかという事を真剣に考えておりました。後半ベランダで紫藤直樹と遠野高志の2人が佇んでいる場面は必見ですね。この作品は、改めて紫藤直樹と遠野高志の友情を確かめる物だったのかなと思っております。

 何れにしても、香山理穂子の許嫁として遠野高志はやはりお似合いだなと思いました。天真爛漫で直情的な香山理穂子ですが、それを抑えられるのは同じかそれ以上に素直である遠野高志しかいないのかも知れません。基本的に真面目ですからね。後は遠野高志の初心な仕草や表情も魅力でした。だからこそ、信頼できるんだなとも思いました。素直で真っ直ぐな遠野高志と抜け目なく油断ならない紫藤直樹の組み合わせ、この大正浪漫ミステリーシリーズにおいて一二を争う組み合わせなのではないかと思いました。ちなみに、個人的に一番の組み合わせは香山理穂子と八重さんですけどね!八重さんの「にゃー」は犯罪的だと思いました!ありがとうございました!


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