M.M ハッピーエンドに花を添えて
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
6 | 8 | 6 | 77 | 1〜2 | 2019/3/7 |
作品ページ | サークルページ |
<ハッピーエンドが決まっている作品です。是非温かい目で彼らの恋愛模様をご覧頂ければ幸いです。>
この「ハッピーエンドに花を添えて」という作品は同人サークルである「(猫)milkcat」で制作されたビジュアルノベルです。(猫)milkcatさんの作品をプレイしたのは今作が初めてでした。切っ掛けはC95で同人ゲームの島サークルを周っている時です。花が咲いている緑の草原の上に寝転がって笑顔を向けている少女と猫の姿は、それだけで明るい印象を持たせてくれます。何よりもタイトルが素敵ですね。ハッピーエンドが約束されている、これ程プレイヤーにとって安心させてくれる事はありません。途中大変で辛い事があっても最後には報われる、そんな温かいシナリオを期待してプレイし始めました。
主人公である高沢正人はどこにでもいる普通のサラリーマンです。先輩である水野さんに面倒を見られながら、それなりに充実した社会人生活を送っております。ある日、いつもとは違った帰り道を歩いた時にとある花屋さんを通り掛りました。そして、気が付けばじょうろを持っている少女に謝られてました。どうやら間違ってじょうろの水を正人に掛けてしまったの事。必死に謝る少女に正人は気にしないと短く告げるだけでした。そう、短く告げるしか正人には出来なかったのです。何故なら、正人はその瞬間少女に一目惚れしてしまったのですから。これは、とあるサラリーマンと花屋さんでバイトをしている高校生の恋愛を描いたハートフルな物語です。
私がこの作品をプレイして直ぐに思った印象、それは大変丁寧であるという事でした。プレイ開始時にはウィンドウ画面の説明を表示してくれており、操作方法に迷う事はありません。また公式HP・パッケージ・Readmeのどれでも作品構成を説明してくれております。この作品は全部で4つの章で構成されており、それぞれで20〜30分のプレイ時間を想定しているそうです。このように説明されれば、プレイヤーとしてもどのようなスケジュール感でプレイすれば良いかの見通しが立ちます。非常にプレイヤー目線で作られたシステムであり説明だと思いました。作品の形態によっては敢えて全体構成を見せずに驚かせる手法もあると思います。ですが、この作品はそういったプレイヤーを驚かせる事が趣旨の作品ではありません。そうであるのなら、シナリオ以外の部分は出来るだけ情報を開示するのが良いなと思いました。
そしてシナリオですが、正直言ってもうタイトルがその結末を伝えてしまっております。このシナリオの終着点、それはハッピーエンドです。とある偶然の出会いで知り合ったサラリーマンと女子高生、その後どのように関係を作りどのようなイベントが行われるかは分かりません。ですが、最終的にハッピーエンドになります。もう、これだけ分かれば前情報としては十分なのではないでしょうか。個人的趣味ですが、恋愛シミュレーションの結末は主人公とヒロインが両方とも幸せになる物が好きです。勿論幸せの形は人それぞれですので、もしかしたらハッピーエンドではないエンドでも双方幸せならそれで構いません(後は僕が納得するだけです)。それでも、ハッピーエンドであるのならほぼ間違いなく主人公とヒロインは幸せになるのだろうと想像できます。この安心感が、自分のプレイする余裕にも繋がっていたりします。是非温かい目で彼らの恋愛模様をご覧頂ければ幸いです。
その他の点としてはBGMが大変お気に入りです。特別目立つものがある訳ではありませんが、作品の雰囲気にマッチしたピアノを中心としたものが多く雰囲気を作ってくれます。何曲かについては、シナリオとリンクしてちょっと泣きそうになる物もありました。私の場合、たとえ1曲でも素敵な作品があったら割と点数が高くなりがちです。今回もそんな一曲に出会う事が出来ました。今まで聞いた事が無い曲ばかりでしたので恐らくオリジナル曲なんだろうと思っております。是非他の作品の曲も聴いてみたいと素直に思いました。
プレイ時間は私で1時間20分程度でした。上でも書きました通り、この作品は4つの章で構成されておりそれぞれ20〜30分でプレイする事が想定されております。私の場合はややペースが早かったみたいでそれぞれ調度20分程度でプレイしました。選択肢はなく、順番に各章をプレイする事が出来ます。またこの作品はヒロインフルボイスです。ヒロインの高校生らしい声色と会社先輩のちょっと大人を意識した声色が印象的でした。短めの作品ですので、時間があれば是非オートプレイで全てのボイスを聴くのも良いと思います。急ぐ必要はありませんね、何しろ結末は決まっているのですから。恋に焦りは禁物であるように、ビジュアルノベルにも焦りは禁物ですね。是非自分の体験と比較しながら楽しんで頂ければと思います。オススメです。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<恋は苦しいけど素敵な物、そんな大切な事を思い出させてくれました。>
最後までプレイして、少しずつお互いを理解し合って気持ちを繋げていく様子がとても微笑ましくまた応援したくなりました。お互いを大切に思っているからこそあと一歩踏み出せない、それでもきっとあなただったら踏み出しても受け止めてくれる、そんな信頼関係が出来上がるまでの一年間だったのかなと思っております。
正直に言いまして、正人の気持ちが非常によく理解出来ました。好きだからこそどうしても否定から入る思考に陥ってしまう、何か出来事があった時に後から意外なほどショックだったという事に気付く、気持ちばかりが焦って早とちりしてしまう、これは片想いあるあるだと思いました。本当、相手の気持ちが見えたら良いのにって思いますね。それでも、ちゃんと自分の気持ちを言葉にして小夜に伝えたのは立派でした。唯の良い人で終わらせずに自分の気持ちを伝える、これってすごく怖いんですよね。今までの良好な関係はどちらにせよ絶対に変わってしまうんですもの。本当、2人が無事に交際が始まって良かったと思いました。
逆に、そんな良好な関係が変わる事が怖くて告白出来なかったのが夕香でした。元々武術をやっていたのに第二次性徴が切っ掛けでそれを止めてしまいました。その後彼氏が出来たのにあろう事か浮気され、そこから誰も信じられるキャリアウーマンとしての道を歩むと決意しました。それなのに、今目の前にいる後輩が気になって仕方が無いのです。普通に話をしてくれますし飲みにも付き合ってくれます。何よりも、近くにいて不快じゃないんです。それでも、裏切られるのが怖くて告白できませんでした。その後に正人が妹の事が気になっている事が分かり、妹への嫉妬を隠す事で必死でした。良い姉を演じてきた夕香、その気持ちも痛いほど分かりました。温泉旅行でやっと自分の気持ちを口に出せた夕香、それだけで立派だと思いました。正人も逃げる事無くちゃんと向き合って返事をしてくれました。そんな正人だからこそ、皆が惚れるのだと思います。
そして、この恋愛がある程度の年の差であるという事も大切な要素だと思いました。お互いがお互いを大切にしている事は十二分に分かっております。ですけど、小夜は高校生であり正人は社会人です。どうしても時間は合わず、その分相手に尽くそうと大切にし過ぎてしまってました。その辺の気持ちのすれ違いがとても印象的でした。大人と子供の隙間、あなたがくれた分だけあなたに返したいけどそれが出来ないもどかしさ、そんな気持ちがあふれ出たロッジでの一幕だったのかなと思います。実際、年齢差って社会人同士だとそんなに変わらなかったりするんですよね。高校生という多感で勉強している時期だからこそ、社会人の方々が立派に見えるんだと思います。
この作品を読んで、改めて恋に年齢は関係ないと思いました。人が人を好きになるのは、本当に偶然でありタイミングだと思います。気が付いたらあの人のことばかり考えている、あの人の事を考えると落ち着かない、例えその相手が10歳年下とかでもそれは仕方がないのかなと思います。何故なら、恋してしまったからです。そして、その恋が果たして愛や幸せに繋がるかもまた偶然でありタイミングなのだろうと思います。あの人のどこが好きなのか、例えば結婚したとして愛し続けられるのか、唯の先輩後半の関係で充分なんじゃないか、何があの人にとっての幸せなんだろう、そんな事を頭の中でぐるぐる考えながら一進一退して関係を続けていくのだと思います。このハッピーエンドに花を添えての様に、お互いが一目惚れしててお互いがお互いを気遣ってお互いがお互いの幸せを願っている、そんな人に出会えるなんて本当奇跡の様な確率だと思います。だからこそのハッピーエンドであり、素直に嬉しい気持ちになりました。二人の関係がこのまま続いていく事を祈念すると共に、改めて恋をする事の大切さを噛み締めて今回のレビューとしたいと思います。ありがとうございました。