M.M HALLOWEEN NIGHT PARTY




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 6 73 1〜2 2019/1/1
作品ページ(なし) サークルページ



<立ち絵やCGが一新され、ボイスも増えてより郷土学サークルのメンバーへの愛着が湧きました。>

 この「HALLOWEEN NIGHT PARTY」という作品は、同人サークルである「Forest*Leaf」で制作されたビジュアルノベルです。Forest*Leafさんの作品では、過去に「鱗姫伝説」「折紙憑き」「鬼魅の音」という作品をプレイさせて頂きました。Forest*Leafさんの作品は、その全てが「郷土学サークルシリーズ」と呼ばれるシリーズ物となっております。主人公である三石陣、ヒロインである真城江連・森咲若葉・森咲双葉・渚みるくの5人で結成されている郷土学サークル、本当はその名の通り郷土学を研究する真面目で正当なサークルなのですが、気が付けばありとあらゆる怪奇現象に巻き込まれてしまいます。それでも幽霊や妖怪なんかに負ける事無く、個性豊かなキャラクターが協力して解決していく様子がとてもお気に入りです。ビジュアルノベルだけではなく小説や漫画やドラマCDでも展開しており、そちらも手に取らせて頂いております。また郷土学サークルのメンバーに会えるのが楽しみで、C95で入手して一番にプレイさせて頂きました。

 今回の舞台は、主人公三石陣の友達である竜樹の親戚の曾祖父の屋敷が舞台となっております。曾祖父は少し前に亡くなってしまったそうですが、何故か誰もいない屋敷から物音がしたり人の気配がするそうなのです。そんなオカルト、陣くんだったら気にも留めずあしらうところですが、残念ながらサークル長である森咲双葉の耳に入ってしまったんですね。サークル長でありながら皆をまとめるところか積極的に危険で面白いものに首を突っ込みたい性格の双葉ですので、こんなおいしい話を放置するはずがありませんでした。かくして、5人はその謎の屋敷を目指して森の中へ足を踏み入れました。雨が降りしきる11月、行けども行けども屋敷は見つかりません。それなのに、突如目の前に現れた屋敷はまるでこの世とは思えない雰囲気でした。何よりも、5人を迎えいれてくれたのは猫耳が生えている女の子だったのです。彼女は何者なのでしょうか。そして、郷土学サークルの5人は無事この屋敷から脱出できるのでしょうか。

 これまでも郷土学サークルシリーズはプレイしてきましたのでその面白さは折り紙付きですが、今回立ち絵やCGが大幅に書き換えられておりました。個人的には、ものすごく可愛くなっていたのです。勿論今までも可愛かったですが、目の書き方や肌の書き方が艶やかで凄くドキドキします。そして、ボイスの数も増えている印象です。ヒロイン4人にボイスがあるのはこれまでも同じですが、今回はゲスト登場人物にも声が付いております。加えて郷土学サークルシリーズは特定のボイスを使いまわしているのですが、今回はセリフを読み上げるボイスの数が多い気がしました。これまでの作品と比べてより収録に時間を掛けている印象でした。

 プレイ時間は私で1時間20分程でした。郷土学サークルシリーズは選択肢とエンディングの多さも特徴です。下手な選択肢を選ぶと簡単にBADENDに行ってしまいます。ですが、BADENDはBADENDと分かるようになっておりますので親切です。是非選択肢でセーブし、全てのエンディングを見つけて欲しいですね。後は、郷土学サークルシリーズらしい不意打ちの怖さも注目です。基本ホラーですので、可愛い中にもしっかりと怖さを印象付ける演出も良かったです。BGMやCGを駆使して、目が離せない展開を見せてくれました。長さも調度良いですので、郷土学サークルシリーズが初めての方は勿論、これまでもプレイして来た方にもオススメです。是非お気に入りのヒロインとのイベントシーンやエンディングを楽しんで下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<自分を見てくれる存在がいればそれだけで安心できる。だから猫のユノは陣くんの傍にやってきた。>

 郷土学サークルシリーズは、本当最後にちょっと何とも言えない哀愁を残すのがズルいと思ってました。ですけど、今回の最後はちょっと安心してしまいましたね。大切なご主人を待っていてそのまま死んでしまった猫のユノ。その魂は浄化され、ちゃんと生まれ変わる事が出来ました。これからは、新しいご主人と友達に囲まれていつまでも幸せに過ごして欲しいと思いました。

 今回は郷土学サークルメンバーのお馴染みな様子と意外な一面の両方を見る事が出来た気がします。普段は何だかんだで強気な双葉でしたが、今回は最後まで怯えっぱなしで陣くんに縋っていました。オカルトには強い双葉も、リアルな恐怖には弱かったんですね。後はみるくの積極性と若葉の小悪魔性も自分的に新鮮でした。最後は殆ど恋人みたいに振る舞って、正直陣くんが羨ましいと思いました。そんな中で、江連はあまり印象は変わりませんでしたね。怖いものは怖い、そして食べ物にはめっぽう弱い、あの「ごはん!」のボイスを聴くたびに安心している自分が居ました。スパゲッティを食べているCGが一番のお気に入りだったりします。

 そして今回の事件の真相は、一匹の猫の勘違いとそれを正したいという奥様の気持ちでした。世の中から忌み嫌われていた曾祖父である源次郎、それでも彼にはユノという最愛の奥様がおりました。ユノさえいればもう誰も要らない、その想いは壁に掛けられたユノの自画像からも明らかでした。ですが、そんな旦那様を慕っていたのはユノだけではありませんでした。ユノの膝にいつも座っていた一匹の黒猫、彼女もまたご主人様とユノを大切に思っている存在でした。そんな彼女の事です、ユノに「ご主人様を守って欲しい」と言われれば、例え自分自身が妖怪となっても守り続けるのは当たり前ですね。そんな健気な姿が印象に残りました。

 ですけど、猫のユノは本当は寂しかったのだと思います。どれだけウサギを操っても、彼らは何も話をしてはくれません。沢山の物に囲まれていても、結局は一人だったのです。だからこそ、郷土学サークルの皆と雪合戦している様子はとても微笑ましく、こんな光景が続くのならずっとここに居てもいいと思ってしまう程でした。だからこそ、猫のユノは郷土学サークルの皆を信頼して、生まれ変わってあのいつもの神社の縁側に居たのかも知れません。屋敷を1人で守り抜いた、その健気さと無理している様子など微塵も感じない穏やかな表情。始めこそ陣くんはびっくりしていましたが、きっとそれから直ぐにでも一緒に雪合戦でもするんだろうなと思いました。

 今回も不意打ちの怖さが際立ちました。突然3人同時に登場するウサギメイドの立ち絵と擦り切れるようなBGM、テーブルの上に置かれた血だらけのウサギ、何よりも最後に登場した怪物の様な表情のユノ、分かっていたのに怖かったです。だからこそ、各ヒロイン達のCGやユノの最後のCGが印象に残ったのかも知れません。本当、陣くんは信頼されてますね。何だかんだで、今回も先頭を切って調査したり猫のユノから逃げ出す算段を打ったのは陣くんでした。でもまあ、特定の誰かと結ばれたら何となくその瞬間に郷土学サークルシリーズが終わってしまう気がします。それぞれのエンディングの先は、プレイヤー1人1人の想像にお任せですかね。これからも楽しい郷土学サークルシリーズを見せて欲しいと思いました。ありがとうございました。


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