M.M 薄幸の少女




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 6 - 61 1〜2 2016/4/27
作品ページ(R-18注意) サークルページ



<いわゆる一般的な寝取られとは少し違う、幸薄い少女だからこその展開に注目です>

 この「薄幸の少女」は同人サークルである「ラスターカプセル」で制作されたビジュアルノベルです。ラスターカプセルさんの作品をプレイするのは今作が初めてでして、もうタイトルの通り絶対に幸せなENDにはならない雰囲気を漂わせております。幸薄い少女がいつの間にが雁字搦めにされ、周りの都合に振り回されて後戻りできないところまで行ってしまう。そんなシナリオを予測しながらプレイし現在のレビューに至っております。

 主人公である海守隆志は市立学校に通う普通の男子学生です。実家は米屋を営んでおり、昼間は学校に行って帰ってきてからは米屋の手伝いをする真面目な学生でした。隆志には幼馴染がおりました。それが今作のヒロインである霧山麻衣子です。海守家と霧山家は父親同士親交があるという事で幼い時から知った中でした。いつも明るい笑顔を向けてくれる麻衣子。そんな姿を見て自然と笑顔になってしまう隆志。慎ましくも幸せな日常の姿がありました。やがて時が経ち思春期特有の恥ずかしさ故に自然と会話が減っていく2人。それでも心の底で通じている関係であり、隆志にとって麻衣子たまに会うときに会話するのが嬉しくて仕方がありませんでした。ですがそんな麻衣子ですがある時から笑顔を見せなくなり、明らかに無理をしている様になります。麻衣子に何が起きているのか分からない。それでも何か力になりたい。そんな壁を作る麻衣子に隆志はどこまで関わっていけるのかが見所ですね。

 タイトルや公式HPからお察しの通り、この作品はヒロインである麻衣子が自分のどうしようもない運命に流されて気が付けば周りの大人に食い散らかされるシナリオです。主人公の知らないところで体を開発され薬漬けにされ関係を重ねていく、いわゆる寝取られと呼ばれるジャンルになります。しかしこの作品はいわゆる一般的な寝取られとは多少趣が違っている印象でした。寝取られに特徴的な要素として、ヒロインが好きな人を裏切りながらもその背徳の感覚に酔いしれて寝盗り男と関係を続ける姿があると思います。そこには少なからずヒロインの意思が介在し、それに対して裏切られた、負けたとプレイヤーが思うからこそ興奮するのだと思います。ですがこの作品のヒロインにはそこまでの意思はありませんでした。全ては自分自身と周りの不幸によるもの、必然的な流れでした。薄幸の少女というタイトルに偽りのないシナリオだとプレイ後にまじまじと実感しております。寝取られですが唯の寝取られではない、どこか奥歯に引っかかったような読後感を味わう事が出来ると思います。是非皆さんにもプレイして頂き、この何とも言えない後味を楽しんでもらいたいですね。

 そして寝取られという事で勿論Hシーンは豊富にあります。加えてモーションにとても力を入れており、おっぱいが揺れる姿やチンポを挿入している様子がヌルヌル動いて表現されます。最大の特徴はそんなモーションを自分のタイミングで好きに止めたり再開したり出来る事ですね。抜きに大変特化しており、絵柄が好みであればどストライクだと思います。個人的に麻衣子は決して美人ではなくどこか芋っぽいと思っているのですが、体の書き方や色使いがストレートでこういった背徳的なシチュエーションに良く合っていると思います。そういう意味でパッケージを見てピンときた方であればかねがね満足して頂けるのではないかと思っております。

 プレイ時間ですが私で1時間50分程度掛かりました。この作品には大きく2つのEDがありまして、主人公に焦点を置いたものと寝盗り男に焦点を置いたものです。全ては麻衣子に対して周りがどのように接したかで結末が決まります。主人公にどう動いて欲しいかというよりも、麻衣子にどういう結末になって欲しいのかという視点で選ぶと割と満足できるのかなと思っております。基本的に幸せな結末が予測できないからこそ、どんな堕ち方をするのか見届けてくれればと思います。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<麻衣子が薄幸だと思っていたのはプレイヤーだけだったのでしょうか。>

 最後までプレイして率直に思ったのは「哀れ」でしたね。幸薄かったのは麻衣子ではなく、その周りにいる大人達でした。結果として不幸な目にあった麻衣子ですが、彼女は常に前向きで現状を打破しようとしていたのです。周りの大人達に降りかかった大きな不幸、それが伝播して結果麻衣子もあんな目にあってしまいました。ああ、それが薄幸という事なのでしょうか。

 私、寝取られって堕とされたヒロインに対する興奮と寝盗り男に対する嫉妬と怒りが重要だと思うんです。ですがこの作品の寝盗り男である猟一ですが、とてもとても嫉妬とか怒りなどという気持ちは湧いてきませんでした。元は真面目で研究熱心な猟一でしたが、お見合いで結婚しその妻も数年前に他界、自身も会社に相手にされず孤独な生活を送っておりました。それでも自分の研究は間違っていない、いつか日の目を見ると信じて努力しておりました。結果としてその努力が歪んだ形で表面化してしまいましたが、悪人ではない事は痛いほど伝わりましたので恨めなくなってましたね。最終的に麻衣子と添い遂げる結末を見ても、まあ有りかなと思ってしまいました。殺された時は可哀想と思いました。まさに不幸の象徴。真に救われるべきはこの人だったのかも知れません。

 父親もまた苦労しておりました。元から夜勤など体に負担のかかる仕事を行っており、そんな中で母親が入院してしまいます。自分の悩みを実の娘に打ち明ける事など出来ず、ブラリと立ち寄ったバーのお姉さんに惚れ込んで投資する姿は痛々しく見えました。「俺も男なんだ、分かってくれ」こんなセリフは勿論許されません。麻衣子にとって最大限の裏切りです。でも目の前で首を括って死のうとしている人の前で裏切り者などと言えるでしょうか。無理をしながらも自分の事を育ててくれた父親です。父親としては最低ですが実に人間味のある姿に、唯々不幸だと思いましたね。

 そんな身近な人が不幸になっているにも関わらず、実は麻衣子は自分の事を一度も不幸だと言ってないんですよね。お金がないならバイトを増やさないと!お父さんが倒れて借金もあるのならもう叔父さんに電話しないと!自分の体の事など顧みず唯々元の平穏な生活を夢見て必死に走ってました。もしかしたら、必死に走っていたから振り返る余裕がなくて自分が不幸だと気付かなかったのかも知れませんね。本当は不幸なのに不幸だと気付かない、これって実は幸福なことなのかも知れません。猟一に開発されて2人で生きる道を選んだENDも幼馴染の隆志と結ばれるENDも、考えてみたら麻衣子にとってはどちらも幸せな結末ですね。麻衣子の事を薄幸だと思っていたのは、もしかしたらプレイヤーだけだったのでしょうか。

 恐らくこの辺りのプレイヤーと登場人物たちの気持ちのギャップが、何とも言えない読後感の原因なのだと思っております。本人たちは納得してるけど……でもなぁ……みたいな感じですね。後は私たちプレイヤーが彼ら彼女らの気持ちを受け入れる事ですね。そうする事でようやくこの作品を消化できるのだと思います。せめて願うのは、これ以上不幸な目に遭って欲しくないという事ですね。ありがとうございました。


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